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» 2013年07月22日 16時30分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:“カワイイ着せ替え”が世界で人気 「CocoPPa」はなぜ海外でヒットしたのか

日本だけでなく海外でのヒットが話題となっているユナイテッドの着せ替えアプリ「CocoPPa」。手軽に自分のスマホをカスタマイズできるだけでなく、素材を使ったコミュニケーションが楽しめるのも人気の秘密だ。

[佐野正弘,ITmedia]

 海外でも高く評価されているスマートフォンアプリとして、現在注目を集めている日本発のアプリ「CocoPPa」。2012年7月にiPhone向けの提供を開始し、今年の5月にAndroid向けアプリの提供も始まった。

 その魅力は自分で用意した画像や別のユーザーが提供した素材を使い、スマートフォンのアイコンや壁紙を可愛く“着せ替え”できる点にある。CocoPPaは特に米国の10代女性を中心に高い人気を得ており、6月22日には1000万ダウンロードを記録するなど、世界的な人気が高まっている。その要因は一体どこにあるのだろうか。

ニーズはあるが競合がいなかったiPhoneの“着せ替え”

photo アイコンや壁紙を可愛く着せ替えできる「CocoPPa」。作成した素材を公開したり、他の人が公開している素材を利用できるなどソーシャル要素も備える

 CocoPPaは、スマートフォンのホーム画面にあるアイコンや壁紙などを、自分好みのデザインに可愛くカスタマイズできる“着せ替えツール”だ。単に手元の画像を使ってアイコンや壁紙の着せ替えができるだけでなく、自身が作成した素材を公開して、他のユーザーに使ってもらえるなど、コミュニケーションサービスとしての要素もある。

 それゆえ、自身で素材を用意せずとも欲しい素材を探して着せ替えに利用できるし、お気に入りの素材を提供しているユーザーに応援メッセージを送ったりすることで、素材提供者の励みにもつながる。こうした仕組みはケータイ小説などのCGMサービスなどに近いともいえる。

 CocoPPaは一体どのような経緯で誕生したのだろうか。CocoPPaを提供しているユナイテッドの取締役兼執行役員 メディアカンパニー カンパニー長である手嶋浩己氏に話を聞いた。

photo ユナイテッドの手嶋氏

 同社の前身の1つであるスパイアが、スマートフォンアプリの市場に参入したのは2011年のこと。当時はダウンロード課金型のアプリをいくつか作っていたが、一時的にランキング上位となる有料アプリを作っても、継続的な事業にはなりにくいと判断したという。

 そこで、メディアやプラットフォームとして機能するアプリを提供し、トラフィックの誘導により収益を上げる方向に舵を切り、2011年12月に提供を開始したのが、歌詞を自動表示する音楽アプリ「Discodeer」だった。Discodeerはその後ディー・エヌ・エーとの協業に結び付き、現在は共同で音楽配信サービス「Groovy」を展開するに至っている。

photophoto 先行して提供された「Discodeer」はディー・エヌ・エーに譲渡され、共同で音楽配信サービス「Groovy」を展開するなど一定の成果を得た

 Discodeerの成功を受け、もう1つアプリのチームを立ち上げた時に生まれたのがCocoPPaになる。ちなみにCocoPPaが生まれた背景には、3つの要素があるという。1つ目は、当初から女性中心でチームを構成し、若い女性に向けたサービスを提供するべく企画を考えたこと。

 2つ目は、着せ替えという分野が確実にニーズがあったこと。当初は位置情報やソーシャル性を活用するなど、スマートフォンらしさを意識したアプリなども企画してみたが、提供する側の発想とユーザーのニーズにかい離があった。だがホーム画面を可愛く着せ替えるアプリであれば、フィーチャーフォン時代から市場が存在することから、確実にニーズがあると判断したのだそうだ。

 そして3つ目は、競合がいなかったことだ。iPhoneは制約が多く、アプリアイコンのデザインをユーザーが変えることはできない。だがショートカットを用いれば、アイコンに好きな画像を使ってカスタマイズできる。ショートカット自体を作成するアプリは多くあるが、それを着せ替えに活用しようというものは当時存在しなかった。そこで、ショートカットアイコンを着せ替えに生かすという、CocoPPaの企画が動き出した。

写真系SNSによる口コミ効果で海外ユーザーが急増

 CocoPPaはiPhoneを可愛くカスタマイズしたいというニーズが高い、10代を中心とした若い女性の心をつかみ、全世界で1000万ダウンロードを獲得するなど大きな注目を集めるようになった。ついこの間まで多機能なフィーチャーフォンを使っていた日本のユーザーにとって、待受画面の“着せ替え”はよく知られているカスタマイズの手段だ。

 しかし海外では事情が異なる。日本ほど細かい部分まで着せ替えに対応したフィーチャーフォンは少なく、その機能は一般的ではない。それでもCocoPPaの利用者が広がったのには、何が大きく影響しているのだろうか。

 手嶋氏はその要因として、「Instagram」や「Pinterest」などの影響が大きいと見ている。米国などでは現在、これら写真を活用したソーシャルメディアが、10代を中心とした若い世代に人気だ。そうしたコミュニティに、CocoPPaを使って自身のページを可愛くカスタマイズしたホーム画面をアップロードし、友達などに見せる人が増えたことで、バイラル効果が働き利用が広がったとみられる。

 CocoPPaは現在でこそ米国でのダウンロード数が全体の45%を記録するようになったが、最初から米国でヒットした訳ではなかったようだ。公開当初は、日本的な可愛さが受け入れられやすい台湾やタイなどで人気となったものの、それ以降はダウンロード数も落ち着いていたという。

photo Instagramを「#cocoppa」のハッシュタグで検索すると、ユーザーがCocoPPaで着せ替えしたホーム画面が多く公開されているのが分かる

 だが2013年に入って、マレーシアで突如ダウンロード数が急上昇すると、再びアジアでダウンロード数が上昇。今度はそれにとどまらず、人気が欧州へと広がり、3月ごろには米国へと人気が拡散。これにより、米国でのダウンロード数が日本を超えるという現在の状況に至ったのだそうだ。

 この間、2012年末にスパイアがモーションビートと合併し、現在のユナイテッドが誕生したことで、社内の人的リソースが増加。リリース後手薄になっていたCocoPPaの運営に、力を注げる体制ができたとのこと。また海外での人気の広まりで、外国での利用者が増えたことからアプリ内の文章の翻訳を改善するなどの施策を施してきたという。サービス改善に向けた取り組みは進めたものの、積極的なプロモーションなどはしていないとのことから、やはり口コミ効果の大きさが、世界的なダウンロードの増加につながったといえるだろう。

スマートフォンで発揮される“カワイイ”クリエイティビティ

 CocoPPaでは現在、「アイコン」「壁紙」、そしてLINEなどのコミュニケーションサービスで利用する画像の「スタンプ」と、3種類の素材を作成・ダウンロードできる。手嶋氏によると、やはりカスタマイズできる珍しさと、制作のしやすさから、アイコンに対するニーズが圧倒的に高いという。

 どのようなアプリのアイコンが多いのかを確認してみると、やはり「Facebook」「LI NE」など、世界的に人気となったコミュニケーションアプリのものが多い。しかしながら「デコメーラー」「プリ画像」などの10代女性に人気のアプリが多く入ってくるほか、「Snapchat」「Kik Messenger」など、日本ではあまり普及していないアプリが多いのも、特徴的な傾向だろう。

 投稿されている素材のクリエイティビティにも、CocoPPaのユーザー層が大きく反映されている。例えば日本のユーザーが作成したものは、10代ならでは手書き風のものが多い印象。一方、海外のユーザーが作成したアイコンは、ロゴやアイコンのデザインはそのままに、背景や色などをカラフルな模様で飾ったものが多い。可愛く飾りたいという目的は共通しているが、国によってテイストにはやや違いがあるようだ。

photophoto 公開されているアイコンの一覧。可愛らしさを重視した、10代ならではの独特のデザインや色使いが特徴的だ(写真=左)。アイコンとして設定するアプリの種類。定番アプリだけでなく、10代女性に人気のものや、海外で多く利用されているものも多い(写真=右)

 人気の素材を提供するユーザーは、現在のところ日本のユーザーが多くを占めている。だがアイコンなど素材別の人気ランキングを見ると、海外ユーザーのものが上位に多くランクインしてきているようで、今後海外ユーザーが上位を占める可能性も大いに考えられる。素材の作成手段も、多くはスマートフォン上でなされていると考えられており、「4月にPC向けのWebサイトも作ったが、想定していたよりは伸びていない」(手嶋氏)とのこと。スマートフォン専用のサービスだけあって、スマートフォン上で全て完結する利用が主なようだ。

photophoto 人気ユーザーランキングでは日本人が多いが、カテゴリ別ランキングでは海外ユーザーのものも多くランクインするなど、人気傾向の変化も

 ここで1つ気になるのが、ユーザーが著作権や肖像権を侵害した素材をアップロードしてしまう可能性があること。特に知識の少ない10代が多いCocoPPaの場合、ユーザーが意図しないままカジュアルに権利侵害素材をアップロードしてしまう可能性も高い。

 この点について手嶋氏は、写真の利用を無条件でNGとするほか、投稿された素材も全て事前審査を実施するなどの厳しい姿勢で対応しているという。さらに、ユーザーが最初に素材を投稿する際は、1個しか提供できないよう制限をかけ、最初の投稿が問題ないかどうかを判断した上で複数の素材提供を許可しているとのことだ。

 現在のネットサービスは気軽に画像を公開できるものが多いだけに、CocoPPaの事前審査はユーザーに不便なようにも見えるが、手嶋氏は、「最初から“そういうもの”とユーザーに意識を持ってもらうことで、円滑な運営につなげている」と説明する。

コンテンツよりも“場”に重点を置いたビジネス展開

 ユーザー同士の活発な活動で盛り上がりを見せるCocoPPaだが、手嶋氏は「どのような素材が受けているのかはあまり考えていない」と、ユーザーの活動とはやや距離を置く姿勢を見せている。その理由としては、CocoPPaがユーザー主体で利用する“場”であり、ユナイテッド自身がコンテンツを提供する立場ではないためだという。

 世界中のさまざまな国で、さまざまな立場のユーザーが利用するサービスであることから、「(CocoPPaで提供される素材の傾向に関して)言語化はしない方がいいと思っている。あくまで現実に受けたものが正しいという見方。クリエイティビティを意識しなかったのが、結果として世界的に受け入れられた要因となっているのではないか」と、手嶋氏は話している。

photophoto Android版のCocoPPa。インタフェースをAndroid向けにしているのと、Google+との連携ができるのがiPhone版と大きな違いだ

 一方で重視しているのが、ユーザーの滞留を高める取り組みだという。ユーザーの増加は継続していることから、今後はいかにユーザーに多く利用してもらい、アクティビティを向上させるかに力を入れていくとしている。サービスを一層活性化させた上で、はじめて収益化に向けたビジネス展開をすることを考えているようだ。

 ただビジネスをする上で気になるのが、ユーザー構成である。CocoPPaの利用者は10代が多いが、10代は可処分所得が少ないため、ネットビジネスをする上であまり好まれない傾向にある。この点について手嶋氏は、「広告や課金などで、薄く広く収益を上げていく形を目指す」と話しており、現在のスタイルを維持しつつも、少額で多くのユーザーから売上を上げる形を作ることで、最終的に大きな売上に結び付けたい考えのようだ。

 現在のCocoPPaはiPhoneアプリとして開発され、Android版はそのバリエーションという性質が強い。そこでユナイテッドでは、2013年の後半にプラットフォームを選ばず快適に利用できるよう、アプリ自体を大幅に改善するという。また同時に、課金など収益化に向けた取り組みも進めた新バージョンを提供するとのこと。

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 「ターゲットを絞っているのでLINEのようにはならないが、来年の3月までには3000万ダウンロードを目指したい」と手嶋氏は話しており、今後どのような形でCocoPPaを拡大していくかに注目が集まるところだ。

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