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» 2014年03月28日 23時33分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(3月17日〜28日):新キャリア「Y!mobile」の狙い/Android Wearの可能性/ドコモのパケット接続料値下げの影響 (1/3)

この2週間の中では、3月27日にヤフーがイー・アクセスを買収して新キャリア「Y!mobile」を発表したことが大きなトピックだった。Android WearやWearable Tech EXPOなどでウェアラブル端末も脚光を浴びた。ドコモがMVNOに対してパケット接続料値下げしたことにも触れたい。

[石野純也,ITmedia]

 3月27日、ヤフーはイー・アクセスを買収し、新たに通信事業に参入することを発表した。新名称は「Y!mobile」の予定。「日本初のインターネットキャリア」をうたい、Yahoo!Japanとのシナジー効果を高めていくという。

 連載の対象である3月17日から28日にかけての2週間は、「ウェアラブル」も大きな話題となった。Googleは、18日にスマートウォッチ用のプラットフォーム「Android Wear」を発表した。日本国内に目を向けると、朝日新聞などが主催した「Wearable Tech EXPO in TOKYO 2014」が開催された。ここでは、国内外のプレイヤーが一堂に介し、ウェアラブルの将来が語られている一方で、現状の課題も浮き彫りになった。

 ドコモが21日に発表したMVNO向けのパケット接続料も、業界に大きな影響を与えそうなニュースといえるだろう。前年比で56.6%と大幅な値下げになり、これを先取りしたMVNO各社はプランの値下げに踏み切っている。そこで、今回の連載では、Yahoo!Japanの「Y!mobile」、Googleの「Android Wear」、ドコモの接続料の3つに焦点を絞り、その背景や狙いを解説していきたい。

Yahoo!Japanがイー・アクセスを買収、新キャリアの「Y!mobile」誕生

 ヤフーは、ソフトバンク傘下のイー・アクセスを買収、子会社化すると発表した。イー・アクセスは6月1日にウィルコムと合併することが予定されており、ウィルコムを吸収した後のイー・アクセスがY!mobile(ワイモバイル)に生まれ変わる予定だ。買収額は3240億円となり、イー・アクセス株式全体の99.68%、議決権比率で33.29%をヤフーが取得する。

photophoto ソフトバンク傘下のイー・アクセスを買収する形で、6月から「Y!mobile」がスタートする

 ヤフーが目指しているのが、「日本初のインターネットキャリア」だ。新会社の社長に就任するヤフーの代表取締役社長 宮坂学氏が説明した企業理念は次のようなものだ。

 「家庭に届いたインターネットのパワーは手元に届いているのか。手のひらの上に来ているのかが次の時代では重要になる。日本全体ではモバイル革命が進んでいるが、すべての人の手元にインターネットデバイスが届くのかが重要。大多数の人はインターネットを手のひらで享受していない。スマートフォンをまだ使っていない方は半分以上、タブレットに至っては9割の方が手元で使えていない。ワイモバイルはインターネットの生み出す楽しさ、便利さをみんなに届けたい。(中略)音声中心のサービスではなく、インターネットをすべての人に届けることにフォーカスしたキャリアになりたい」

photophoto スマートフォンやタブレットが浸透しきっていない中、インターネットに重きを置いたキャリアとして事業を立ち上げる

 それを実現するために、イー・アクセスの買収は「こちらから話を持ちかけた」という宮坂氏。傘下にキャリアを持つことで想定している狙いは3つあるという。1つ目が通信事業者としての成長だ。今後、スマートフォンに留まらず、あらゆる機器がインターネットに接続し、「1人1台ではなく、1人で6台以上がインターネットを持つことになる」(同)。こうした中、「達成時期は未定」(同)としながらも、ユーザー数は2000万という目標を掲げた。そのためには、自らが通信事業者になる必要があったという。

 「参入パターンはいくつか検討したが、やはりMVNOを見ると1000万単位に行くのか(という疑問があった)。登りたい山の高さは1000万以上。端末、サービス、販売チャネルなど、決定権を持った形でやらないと届かない」

photophoto インターネットに接続するデバイスが今後増えていく中、通信事業自体にチャンスがあると見ているようだ

 2つ目の狙いが、Yahoo!Japanとのシナジー効果だ。宮坂氏は「獲得した利用者に、よりYahoo!Japanのサービスを使っていただく。それによってヤフーの収益が上がっていく」と話す。会見では、リアルな店舗を持つことによるプレミアム会員の伸びが強調されていた。

 「あらゆる街中に『Y』というロゴやブランドがあふれる。このチャネルを使って、ヤフーのビジネスをしていきたい。ワイモバイルの会員に、プレミアム会員をおすすめしたい。プレミアム会員はネットだけで750万ぐらいまで行ったが、ここから先はネットだけだと難しい。ソフトバンクモバイルのオフラインのチャネルで200万近く会員を獲得できたが、ワイモバイルのチャネルでプレミアム会員をぜひご紹介したい」

 これに加えて、端末にアプリやサービスをプリインストールして、Yahoo!Japanの利用者を増やしていくという。

photophoto キャリアの店舗を活用することによって、Yahoo!Japan側へのプラス効果も見込める

 3つ目の狙いは、間接的な形になるが、モバイルインターネットの利用者が増えることで、結果としてYahoo!Japanへの広告が増えるというものだ。宮坂氏によると、同様のエコシステムの拡大は、2001年にYahoo!BBを立ち上げ、その後の競争によってブロードバンドが普及したときにも起きたという。

photo モバイルインターネットが拡大することで、間接的にヤフーもその恩恵にあずかれる

 もちろん、こうした変化が一気に起こるわけではない。宮坂氏も、ワイモバイルは“3階建て”の事業になると述べている。ウィルコムで人気の音声定額や、イー・アクセスのルーターなどを突然止め、既存のユーザーをすべてスマートフォンに変えていくというわけではないようだ。

 「分かりやすくスマートフォン中心とは言ったが、事業としてはウィルコムやイー・モバイルのお客様の上に、スマートフォンを立ち上げていくイメージ。今いるお客様を無理やりスマートフォンにするのではなく、今あるお客様の上で伸ばしていきたい。既存のお客様にもきちんと安心して使ってもらえるようにしたい」

 テレコムキャリアではなく、インターネットキャリアだと自負する宮坂氏だが、一方でソフトバンクも「インターネットカンパニー」をうたっている。そのソフトバンクとの差別化はどうしていくのか。宮坂氏によると、「Yahoo!Japanいう大きなサービスを持っていること」が大きな違いになる。また、事業の主体がどちらにあるのかという点も、2社の違いを生み出せるという。

 「サービスが一番違う。1つは今のところiPhoneを扱わない。販売店も違う。料金をどうするかはこれから考えていく。また、プリインストールに関しては、Yahoo!Japanからすると(ソフトバンクにも)どんどんやってほしいが、ソフトバンクモバイルとは別会社。我々も上場会社で、ソフトバンクにはソフトバンクの事情があり、すべてをコントロールできなかった」

photo 既存ユーザーの扱いや、ソフトバンクとのすみ分けについての質問に答える宮坂氏

 では、ソフトバンクはなぜヤフーにイー・アクセスを売却したのか。ソフトバンクモバイル広報部によると「ヤフーもグループ会社の1つ。そういう意味からすると事業のシナジーを最大化できることになる。グループ全体としてみればいいという判断をした」という。ソフトバンクの傘下でLCCとして低価格な端末や料金を提供するより、Yahoo!Japanのブランドの元でシナジー効果を発揮した方が、グループ全体にとってもプラスになる。ソフトバンク側にはこのような判断が働いたことがうかがえる。

 とは言え、具体的な端末やサービス、料金は「まだこれから詰めていく」(宮坂氏)。詳細は6月のサービスイン前に発表されるとみられる。ただ、中でも端末は“仕込み”の期間が1年〜1年半と長く、数カ月で準備できることは限られてしまう。ヤフーの思い描くキャリア像を打ち出すにはもう少し時間がかかりそうだ。

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