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» 2014年03月28日 23時33分 公開

新キャリア「Y!mobile」の狙い/Android Wearの可能性/ドコモのパケット接続料値下げの影響石野純也のMobile Eye(3月17日〜28日)(3/3 ページ)

[石野純也,ITmedia]
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ドコモが接続料を大幅に値下げ、MVNOへの影響は?

 ドコモは24日、MVNO向けのパケット接続料を改定し、2013年度から50%を超える大幅な値下げを行うと発表した。2013年度の料金は2013年4月1日にさかのぼって適用される。改定後の金額は、10Mbpsのレイヤー3接続が179万5815円、レイヤー2接続が123万4911円。12年度と比べ、レイヤー3接続が51.4%、レイヤー2接続が56.6%と大幅な値下げを実現した。

 パケット接続料とは、MVNOがドコモに接続する際に必要となる料金のこと。セッションの管理などまでMVNOが自由に行えるのがレイヤー2接続で、サービスの設計がしやすくなる半面、パケット交換機などの設備が必要なる。一方のレイヤー3接続は、MNO側がセッション管理などを行う。MVNOに柔軟な料金プランが増えているのは、前者のレイヤー2接続が増えているためだ。

 ドコモなどの電気通信事業者で定められた第2種指定通信事業者は、規制としてこの接続が義務付けられている。料金の公開も必須となり、接続料は適正な原価に適正な利潤を足したものと決められている。2013年度の値下げは、総務省の出したガイドラインに従ったもので、ここにはMVNOの料金を下げ、市場を活性化したいという狙いがある。

 このパケット接続料の値下げは、MVNOの料金プランや収益性に直結する。実際、BIGLOBEやIIJといった、ドコモ網を利用するMVNO各社が相次いで料金の値下げや、利用可能なデータ量の増加を打ち出しているが、これもパケット接続料の下落を見越したもの。その意味で、パケット接続料は「格安SIM」のベースとなる料金ともいえるだろう。2008年度は約1267万円で、6年間でおよそ10分の1に価格が下がっている。

photo ドコモのパケット接続料は前年度対比で50%以上の値下げになった。2008年度と比べると、10分の1程度だ

 格安SIMの料金が下がり、ユーザーにとってもメリットがあるが、ドコモはこの「接続義務」の見直しを求めていく方針だ。ドコモの企画調整室長 脇本祐史氏によると、今の料金設定は「カツカツ」というのが現状だという。その上で、相互接続の申し出を断ることができないとなると、数千万単位の巨大な事業者がドコモのネットワークを使う事態まで想定できてしまう。

 「OTT(オーバー・ザ・トップ、上位レイヤーの事業者)からある日突然、1000万回線貸してくれと言われても、断ることができない。それをやられたらあっという間に利益が吹っ飛んでしまう。パケット接続料はいわゆる原価ベースで出していて、そこでは収益も利益も出ていない。OTTの方が1000万回線借りると、弊社のユーザーがそこに移行する可能性もあり、食い合うことになってしまう」

 1000万回線というと非現実的に聞こえるかもしれないが、AppleやGoogleといった事業者が、ドコモのネットワークを借り、垂直統合的なサービスを立ち上げる可能性はゼロではない。仮にそうなったとき、ドコモはそれを拒めないというのが見直しを求める理由の1つだ。

photo 接続義務は4社に課されている。これが海外より厳しい規制だというのがドコモの主張だ。禁止行為規制によって、相対取引による独自プランの作成も難しくなっているという

 相互接続の義務によって、MVNOの多様化が進んでいないというのも、ドコモの見方だ。脇本氏は「接続義務があって断れないため、事務処理や条件もすべて画一的になってしまう。逆に、MVNOの要望にもお応えすることができない」といい、諸外国でここまで規制が厳しいのは日本だけだと語る。海外では、接続の義務はなく、すべて事業者同士の交渉で決まるか、電波の割当に対する制限という形で義務が課されるのが一般的だというのが、その理屈だ。ドコモに対しては特定の事業者だけを優遇しない「禁止行為規制」がかけられているため、自らMVNOを作り、サブブランドとしてドコモショップで格安SIMを扱うことも難しいという。

 では、MVNOにとって、ドコモの目指す卸への一本化と、今のように条件がオープンになった相互接続はどちらがいいのか。これについて、前回の連載でも取り上げたIIJの会見で、ネットワークサービス部 モバイルサービス課 担当課長 佐々木太志氏は次のように述べている。

 「相互接続による公平がいいのか、相対取引による各社の差別化がいいのか、単純には言いづらい。相対が可能になることで差別化しやすくなるところはもちろんあるが、相互接続の制度がない中でネットワークの開放がここまで進んできたのかという疑問もある」

 ドコモの脇本氏は「せっかくここまで培ってきたもので、料金設定は残しておいた方がいいと思う。ただ、誰でも受け入れないといけない、というのはなくしていきたい」と述べているが、義務がなくなり、卸に一本化すると、料金がブラックボックスになってしまう心配もある。

 ドコモは、こうしたMVNOの接続義務をはじめとした「禁止行為規制」の撤廃を、総務省の開催する「2020-ICT基盤政策特別部会」で訴えていく方針だ。一方で、各種メディアなどで報道されているように、ここにはNTT東西を含む「セット割」の解禁も含まれているだけに、他社の反発も予想される。今後の動向を注視しておきたい。

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