インタビュー
» 2014年08月13日 10時00分 UPDATE

MVNOに聞く:MVNOでシェア1位の秘密とは?――「OCN モバイル ONE」の戦略をNTTコムに聞く (1/2)

2013年4月からMVNOとして「OCN モバイル ONE」を提供しているNTTコミュニケーションズが、13年度末にはMVNOでシェア1位を獲得した。NTTドコモと同じNTTグループに属するNTTコムがMVNOに参入した理由とは? 同社の戦略をネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長の新村道哉氏に聞いた。

[石野純也,ITmedia]
photo 2013年度末における独自型のSIMサービスのシェアは、OCN モバイル ONEが1位となっている

 MM総研が6月に発表したデータによると、独立系のMVNOは現在4強といえる状態になっている。NTTコミュニケーションズ(OCN)、インターネットイニシアティブ(IIJ)、日本通信、ビッグローブがその4社だ。中でも、OCNはシェア23.7%とほかのMVNOを大きくリードしている。このOCNの「OCN モバイル ONE」は、ほかのMVNOと比べると異色な点が多い。

 1つ目はサービスが他社と異なるところ。OCN モバイル ONEは、1日あたり50Mバイトか80Mバイトというサービスを提供している。他社が月単位でデータ量を集計しているのに対し、1日単位と区切りを細かくして差別化を図っているというわけだ。仮にある1日にデータを使い切ってしまったとしても、翌日には復活しているというのはユーザーにとっての大きなメリットといえるだろう。最近では、IIJに続いて、高速通信のオン/オフを制御できる「ターボ機能」の提供も開始した。

 また、テレビCMなどのプロモーションに積極的なのも、OCNならではだ。最近では、タレントのマツコ・デラックスさんを起用し、一般ユーザーにMVNOの通信サービスを訴求している。MVNOの中では、大々的に宣伝を仕掛けている1社といえるだろう。

 そもそも、NTTコミュニケーションズという母体が大きな会社が提供しているMVNOというのも、OCN モバイル ONEが異色な点だ。NTTブランドはユーザーに対して安心感を与える可能性は高いが、一方、NTTグループ同士でサービスがバッティングする恐れもある。現在のMVNOはほとんどがNTTドコモから回線を借り受け、サービスを提供している。言うまでもなく、NTTコミュニケーションズは、ドコモと同じNTTグループの企業。グループの戦略として、2つのサービスを併存させる意味がどこにあるのかは気になるところだ。

 こうしたOCN モバイル ONEの特徴や戦略を、NTTコミュニケーションズでサービス企画、プロモーションなどを担当するネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長の新村道哉氏に聞いた。

一番の売れ筋は1日50Mバイトのコース

photo NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長 新村道哉氏

―― そもそも、固定では通信事業者であるNTTコミュニケーションズが、なぜMVNOを始めたのでしょうか。MVNOを開始した理由から改めて教えてください。

新村氏 OCN モバイル ONEには、明確なターゲットがあります。これはあくまでOCNのラインアップの1つです。今までは、固定しか出せていませんでしたが、最近では外でもインターネットを使いたいというニーズがあります。スマートフォンとタブレットの境目もなくなってきました。いつでもどこでもインターネットを使っていただきたい。そう思って始めたのがMVNOです。

―― とはいえ、最近の流れを見ていると、OCN モバイル ONEはOCN会員以外に広がっている印象を受けます。

新村氏 OCNの会員の方にMVNOの仕組みを使ってほしいというわけではなく、OCNというISPをより多くの人にご利用いただきたいということで、そのきっかけがモバイルという方は当然います。その先にある思惑としては、家庭でも光回線を使うときにOCNにしていただきたいということもあります。

 ですから、モバイルと光回線を一緒にご利用いただければ200円引くということはやっています。KDDIさんの「auスマートバリュー」ほど割引はできませんが、一番安いプランなら月700円です。トリガーはどちらでもよく、もし光回線がOCNでなければ、そちらもOCNにしていだければいいという考え方です。

―― NTTグループ内には、携帯電話サービスを提供するドコモがあります。そもそもOCN モバイル ONEもドコモから回線を借りているわけですが、MNOとのすみ分けはどのように意識しているのでしょうか。

新村氏 そもそもスタートが違いますからね。ドコモさんに限らず、大手キャリアからMVNOにユーザーが大量に流れている事象があるわけではありません。当初、MVNOが出てくると、そういう流れになるのではという声もあったのは事実ですが、実際にはそうなっていません。

 今はモバイル端末が多様化し、選択肢がどんどん増えています。その流れの中で、人によってはスマートフォンを2台持っていたり、スマートフォンとは別にモバイルルーターをカバンの中に入れていたりします。その便利さがもっと伝われば、今利用されていない方にも市場が広がっていくと思います。

―― つまり、2台目、3台目のニーズとしてMVNOが選ばれているということですね。ところで、OCN モバイル ONEはデータ量の区切りが1日単位になっている部分が特徴的です。やはり、このプランが一番の人気なのでしょうか。

新村氏 1日何Mバイトという形で出したのが、2013年の4月になります。MVNOは前からやっていましたが、「格安」と呼べるレベルになったのが、この時ですね。他社は1Gバイト、2Gバイトでいくらとやっていますが、同じメニューを出しても仕方がないですから。お客様の使い方を考えても、月の途中でデータを使い切ってしまうと、あとが大変です。

 また、実はネットワークの設計的にも1日で区切るのは効率的です。提供当時は1日30Mバイトで1カ月にすると900Mバイトですが、今の1日50Mバイトを丸々使い切っている人はほとんどいません。そうなると、1人あたりのトラフィックはそれほど高くならないことになります。ニーズとネットワークの効率化の両方を考えると、こういうメニューもありだという結論になりました。

 当時はものすごく売れると計算していたわけではありませんが、結果的にはお客様にも受け入れられました。今も販売数は圧倒的に「50メガバイト/日コース」が多いです。私たちもそれが900円だと、分かりやすく訴求をしています。もちろん、実際に利用していただき、例えば「土日に外出したときだけまとまった量を使うので、月あたりでもっと大きな容量の方がいい」という方もいると思います。「違うな」と思ったら、プランを変更していただければというのが、私たちの考え方です。

―― やはり50Mバイトのコースが一番の売れ筋なんですね。

新村氏 うまくWi-Fiをご活用いただければ、1カ月の総トラフィックが2Gバイト行くか行かないかという方は多いですからね。もちろん、中には1日の終わりごろに頭打ちになってしまう方はいますが、動画などを見なければ1日50Mバイトで十分足ります。また、最近ではアプリも出させていただきました。IIJさんが先行していたところですが、俗に言う「ターボ機能」です。リテラシーの高い方は、それで(使うデータ量を)調整していただければと思います。

―― やはり自分で調整したいという声は多かったのでしょうか。

新村氏 はい。そういうご意見は多かったですね。主婦に限らず、男性でもデータ量を上手に使い切れると、節約上手のようでうれしくなることもありますし。アプリは6月末から始めて、事実1カ月ちょっとで2万ほどダウンロードされています。1人で2回以上ダウンロードしている方ももちろんいますが、出だしとしては好調です。

photophoto 「OCN モバイル ONE」のサービス概要とラインアップ

端末のセット販売はユーザーの選択肢を広げるため

―― 8月には、LGエレクトロニクス製の「G2 mini」をセットで販売することになりました。他のMVNOでも、端末と回線を一緒に提供する動きが活発になっていますが、やはりMVNOにとっても端末は必要でしょうか。

新村氏 そういうニーズがあるということは、まったく否定しません。そのニーズに応えるものとして、私たちも端末を出しています。まとまったお金で買うのではなく、分割払いの形態でお出ししたのもそのためです。

 ただ、どこかの端末メーカーと組んでガッツリ取りに行くというより、ご利用いただける選択肢を広く持ちたかったというのが本音です。NTTコミュニケーションズはこういう売り方で行くと、あえて絞りたくはありません。今回はG2 miniを出しますが、これだけをひたすら売るわけではないということです。

 一方で、パートナーの販社さんが端末を販売する中で、SIMカードをOCN モバイル ONEにしていただける動きもあります。例えば、エディオンさんは独自に端末を用意して、その中でOCN モバイル ONEをオススメしてくださっています。

photo 8月5日から、月額2780円で「OCN モバイル ONE」と「LG G2 mini」「電話サポート」を提供している

―― そういえば、OCN モバイル ONEはドコモの新古・中古端末を扱うショップにも置かれていて驚いたことがありました。

新村氏 ドスパラさんには、タッチ&トライや先着何人だといくらで売りますという施策をやっていただきました。販社さんに自主的に担いでいただけるのはうれしいですね。こういう形で売りたいと言っていただき、ある程度の販売数が出ているところには、ご協力もさせていただいています。POPの提供だったり、販売ツールだったりの形で。ただし、あくまでも弊社がお願いするのが基本です。同じような販売形態ばかりがぞろぞろあっても困るので、集中させないように、新しいところがあればお話をさせていただいています。

訪日外国人向けのプリペイドSIMの販売も強化

―― OCN モバイル ONEにはプリペイド型もありますね。

新村氏 これはどちらかというと、ラインアップの中で整えていった部分が大きいですね。日本を訪れた外国の方が使えるSIMカードはすごく売れそうというのはありました。海外だとそういう文化は普通にありますから。ただ、訪日用だけの事業者として手を挙げると、設備投資にお金がかかりすぎてペイできません。おかげさまで、MVNOとしてうまく行き、より多くの方にご利用いただけるようになりました。そこで、訪日の方だけではなく、日本でも出していこうということでプリペイドを始めています。

 プリペイドは日本に住んでいる方にとって必要性があるのかという疑問はあるかと思いますが、例えば限定的に、夏期講習の間だけお子さんに携帯電話を持たせたいといったニーズだったり、出張のときに特別にデータ端末が必要というニーズだったりはあります。容量型プリペイドのSIMカードに1Gバイトの有効期間が最大4カ月のものがありますが、人によってはほとんど使わない端末にSIMカードを挿しっぱなしにしておきたい(そして、たまにだけ使いたい)ということもあります。こういう使い方にも、4カ月だけ使えて、そのあとはお金がかからないという点で、プリペイドが向いています。

 まずは接点を持っていただくこと。モバイルを拡大する選択肢の1つとして、ひたすらそこだけを狙っています。ただ、あくまで本当にご利用いただきたいのは月額制の方です。先ほど申し上げたように、家でも外でもOCNというのが狙いですからね。

―― 逆に、海外で販売するということもあるのでしょうか。

新村氏 今、順次改革しているところで、より早い段階で手に取っていただける仕組みを作りたいと思っています。香港、台湾では、現地で買えるようにさせていただきました。また、Webでご注文いただければ、空港の郵便局か都内のホテルにお送りするということもやっています。空港にも、何かしらの形で置ければと準備は進めています。やはり、観光地に行ったあとSIMカードを買うのは厳しいので、なるべく事前に手に取っていただけるようにしていきたいですね。

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