インタビュー
» 2014年12月22日 12時00分 UPDATE

乱立する格安SIM市場をドコモはどう見ているのか?――接続料から禁止行為規制の緩和までを聞く (1/2)

MVNOが提供するモバイル通信サービスが急増しているが、そのほとんどが、ドコモのネットワークを借りている。MVNOを受け入れる側であるドコモは、「格安SIM」「格安スマホ」をどのように見ているのだろうか?

[石野純也,ITmedia]

 「格安SIM」「格安スマホ」というキーワードとともに、MVNOが急伸しているが、そのほとんどは、ドコモからネットワークを借りている。ドミナント(支配的事業者)ということもあって、どの事業者にも一律の条件で設備の貸し出しが義務付けられていたことが、その理由の1つだ。結果として、接続料が他社よりも安価に抑えられているのも、MVNO各社がドコモを選ぶ理由となっている。

 もちろん、その際に、他社と比べてエリアや通信品質が大きく劣っていれば話は別だが、そこはドコモのネットワーク。さまざまな見方はあるが、少なくとも、他社より大きく劣っていることはないだろう。むしろ、きめ細やかなエリア設計などは、MVNOからの評価も高い。

 こうした中、総務省は、ドコモに課せられた「禁止行為規制」を見直す方向性を打ち出している。禁止行為とは電気通信事業法に定められたドミナントに対する規制で、モバイルの分野ではドコモだけが対象になっている。かねてからドコモは、この規制の見直しを訴えており、一定の成果が出ている格好だ。この禁止行為規制は、ドコモとMVNOの関係を規定する根拠にもなっており、緩和されれば今の形が変わる可能性も秘めている。

 では、MVNOを受け入れる側であるドコモは、「格安SIM」「格安スマホ」をどのように見ているのか。また、ドコモとして、禁止行為規制が見直される動きをどう考えているのか。同社でMVNOとの折衝を行う企画調整室 室長 脇本祐史氏にこれらの疑問をぶつけた。

MVNOが増えることは、ドコモにとってもいいこと

―― 2014年に入ってMVNOが「格安SIM」「格安スマホ」として脚光を浴び、実際にユーザーも増えています。そして、そのほとんどがドコモからネットワークを借りた事業者です。その現状を、ネットワークを貸しているドコモとしてはどのように見ているのかというところからお話ください。

脇本氏 法人向けなどを除いた狭義のMVNO、専業MVNOは弊社のネットワークを母体にしているところが多くなっています。おっしゃるように、2014年は「格安スマホ」という言葉とともに、MVNOが急拡大したと思っています。以前はオンラインで売るという話が多かったのですが、販売チャネルもイオンさんやビックカメラさん、ヨドバシカメラさんのような店舗に広がりました。一部のMVNOさんでは、独自のショップ展開を始めています。音声通話を扱い、独自の安いスマートフォンをセットにして売られる方も増えてきました。Wi-Fiをセットにして販売するところもあります。

 我々のカバーしていない低価格の領域や、低速の領域で市場が広がったこと、プラスするとそこに弊社の回線を使っていただけていますから、これはいいことです。

―― つまり、ドコモとしてはプラスになっているという見方でしょうか。

脇本氏 はい。市場自体が広がり、エントリー層の方が初めて使うようになっています。また、(データ通信の量を)もうちょっと使いたい、「dビデオ」や「dヒッツ」のようなキャリアのサービスを使いたいという方には、我々の回線にアップグレードしていただけます。

―― ドコモの契約者と食い合いは起こっていないのでしょうか。

脇本氏 MVNOの皆さんとお話していても分かりますが、それよりまだスマートフォンを持ったことがない人が持つことが多いようです。あまり使わないのでスマートフォンを持つのはどうかと思っていた方が、安いのであれば持つとなっています。食い合っていることは、あまりないですね。

―― ドコモ自身も値下げをできると思います。

脇本氏 これは音声定額をやったときもそうでしたが、既存のユーザーがいますから、ドコモのメニューとして出すと価格に敏感な方から先に出られて、収支面の影響が大きくなってしまいます。低料金のメニューを出すなら、既存のユーザーがどう移るかも考える必要が出てきます。MNOがやりにくいのは、そういうところですね。逆に、既存のユーザーを考えてもペイするほどのボリュームになるなら、やるということです。

 そうしないとネットワークも高度化しません。キャリアとしては、アプリをどんどんダウンロードして、自分たちのサービスも動かしてもらいたい。高い料金を取ろうという気はありませんが、使えるものが増えたという方が、産業としてはプラスです。

―― なるほど。確かに、そう考えるとMVNOとしてドコモ本体とは分けられていた方がいいのかもしれませんね。ただ、MVNOは7Gバイトでいくらだったり、無制限でいくらだったりのプランも出しています。そういうところと競合はしないですか。

脇本氏 そういうユーザーが増えると、逆に帯域を増やさなければいけなくなってしまうので、MVNOさんも大変だと思います。また、まだMVNOは2台目需要の方が多い状況で、これが定着して本格的に1台目として使われるようになると、当然MVNOさんの設備構成も変わってきます。それに、弊社もシェアパックのような、組み合わせると安くなるプランは出していますし、光のサービスも始めます。総合的なキャリアの提供するサービスとして差別化はできていると思います。

 もし7Gバイトのような大容量プランや、無制限プランを出されているMVNOのユーザーが、速度制限を受けたり、思ったほど速度が出なかったと思ったりすれば、ドコモにアップグレードしてもらうきっかけになります。

―― 確かに、MNOであるドコモの方が、速度は安定していますし、総じてMVNOより高速だと思います。

脇本氏 そこに簡単に負けるようだと、単に高いと思われてしまうだけですからね(笑)。

他社の接続料が、なぜドコモより高いのかは疑問

―― 現状ではMVNO回線はほぼドコモ一択です。その理由の1つが、接続料の安さだと思いますが、なぜここまで他社と差が出ているのでしょうか。

脇本氏 接続料は現在10Mbpsあたり123万円で、5年前に比べて10分の1の価格になっています。ここが安くなって、参入が容易になったことはあると思います。接続料は、適正なコストに適正な利潤を乗せた額として算出しています。自社でサービスをすればその上に付加価値をご提供できますが、その付加価値の部分がないからといって、損をするわけでもありません。MVNOは我々だけでは発掘しきれないユーザーを取ってくれますからね。

 他社さんは、実際にユーザー(MVNO)がいらっしゃらない中で、なぜああいう額を出されているのか。相対でやられるときは、ああいう額ではないと思います。どうして差が出るのか、弊社からすると不思議です。

photo ドコモのパケット接続料の推移

―― ユーザー数が違うため、接続料に差が出るという意見もありますが。

脇本氏 適正な原価に適正な利潤を足したものなので、そこが2倍、3倍違って当たり前なら、どうして(ドコモ以外のネットワークを使った他社が)ユーザーに(ドコモのMVNOと)同じ料金で提供できるのかという疑問があります。よほど販促費をかけていないのであれば(料金が)同じになりますが、実際はそうではないので、なぜなのかと思います。

 ただ、他社もMVNOは取っていきたいように見えます。KDDIさんはKDDIバリューイネイブラーをお作りになられましたし、ソフトバンクさんは戦略としてワイモバイルをMVNOの位置に当てているように見えます。

―― 同じように、ドコモも、戦略的にサブブランドとしてMVNOを活用するということはしないのでしょうか。例えば、ドイツのT-Mobileは傘下のCongstarを使って、同じショップで2つのブランドを売り分けるようなこともやっています。

脇本氏 今のところ、電気通信事業法の30条に「禁止行為規定」があるため、どこかのMVNOと組もうとすると、ほかの人とも同じようにやらなければいけなくなってしまいます。そのため、今はできないというのが答えになりますね。

 ただ、今回、総務省の研究会に、この禁止行為規定が緩和される方向を出していただけました。これができれば、MVNOと組んでというのはやっていきたいですね。

 今おっしゃられたT-Mobileの例もそうですが、日本だと、ソフトバンクさんではディズニーさんがMVNOをやり、ソフトバンクショップで販売を行っています。弊社もディズニーさんとは協業していますが、端末にブランドのライセンスをいただいている形です。それも禁止行為規制があるためで、緩和されればMVNO型もできることになり、選択肢は増えます。また、KDDIさんのように、自社で子会社を作ることも可能になります。既存のMVNOと組んだり、自社でMVNOのサポートしたりといったことも、やっていくべきでしょう。

MVNOからの接続義務を見直してほしい

―― その総務省の会議では、MVNOからの接続の義務を見直してほしいということも主張されていました。そちらについてはいかがでしょうか。

photo 競争政策の見直しに対するドコモの考え

脇本氏 そちらには、まったく踏み込んでいただけませんでした。引き続き言っていかなければいけないのは、冒頭でお話ししたように、MVNOが増えてきて、各社の戦略も異なるということです。今は123万円の料金の上で皆さんがMVNOをやっていて、業種が違おうと、誰に売ろうと、額は同じです。そのため、市場がいわゆるレッドオーシャンになってきています。本来であれば、M2Mのお客様(MVNO)と人を相手にしたお客様(MVNO)でも条件は違いますし、画一的ではなく分けてほしいというご要望も承っています。これが、接続だと1本の料金でやらなければいけなくなってしまいます。

 もちろん、我々は接続を拒否したいわけではありません。すべてを約款で出す類のものにするのではなく、相対の方もいれば、標準料金でやりたい方もいる。バリエーションを出すなら、お互いのビジネスベースにすべきだと思います。

 もう1つの理由としてあるのが、ユーザーに不利益をもたらす可能性があるということです。今のように格安スマホがはやると、もうかると思って参入して、サービスを途中で放り投げたり、十分な連絡体制がなかったり、といったところも出てきます。接続義務があると、これもよほどの調べがつかない限り、断れません。ビジネスベースで大丈夫かという証拠は、最低限出してもらいたいと思っています。

 また、電波や設備は限られているため、1度に1000万回線、2000万回線とおっしゃられると大変なことになります。実際、例えば楽天さんは1000万が目標とおっしゃっていますよね。弊社が全体で6000万回線しかない中で、そのうちの1000万となると、また設備投資をすべきなのかを考えなければなりません。拒否したいというわけではく、順番に話し合いができるようになればと考えています。

―― ただ、MVNOの中には接続義務がなくなると、ドコモに拒否をされたり、いつの間にか値上げをされたりすることを心配している事業者もいます。こうした不安については、どのようにお考えでしょうか。

脇本氏 MVNOを正当な理由なく差別してはいけないという、電気通信事業法の29条があり、そこで(公平性の)担保はできると思います。当然、いきなり2倍、3倍に料金を上げたら、通る話も通りません。そこはMVNOの方々とお話をしていこうと思っています。総務省にも認めていただきたいし、やり方はいろいろあります。たとえば標準料金をお示しして、条件に応じて高くなったり安くなったりという形です。

―― 今の接続料がベースにあれば、そこまで無茶な料金になることはありえないということでしょうか。

脇本氏 そうですね。接続料については、トラフィックが増える中で低廉化の傾向にあります。これが上がりつつあるとやめてくださいとなるかもしれませんが……。

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