格安SIMと呼ばれる低価格なSIMカードを販売するMVNOは、一部の例外はあるものの、ドコモから回線を借りていることがほとんどだ。借りているのは回線だけではない。日本では、SIMカードそのものもドコモから貸与されている。端末側からは、ドコモなのかMVNOなのかの見分けがつかない。連載の第4回で紹介したように、端末に挿すと「docomo」と表示されるのも、そのためだ。
第5回ではSIMフリー端末を紹介したが、正規販売にこだわらなければ、ドコモ端末の利用も可能になる。一部のMVNOでは、ドコモ端末に挿した際の検証結果も公表している。今回は、ドコモ端末の買い方と注意事項を紹介する。
MVNOのSIMカードは、多くがドコモから借りており、SIMカードのデザインもそのままで、ドコモのロゴが入っている。端末側からは、ドコモのSIMカードと認識される。つまり、MVNOのSIMカードを使うにあたっては、SIMフリーの端末を手に入れる必要は必ずしもないということだ。もし、MVNOを使う前にドコモと契約していて、端末を持っているなら、そのままMVNOのSIMカードを挿せばよい。3G契約のSIMカードがLTE端末で使えないという例外はあるが、おおむね、ほとんどの端末でMVNOのSIMカードを使える。
手元にドコモの端末がないというときは、何らかの方法で購入すればよい。ただし、日本ではキャリアが販売する端末は、原則として回線の契約とひもづいている。逆に言えば、端末を単体で購入することはできない。MVNOのSIMカードを使いたいのにも関わらず、端末のためにもう1回線契約するのは本末転倒だ。では、ドコモの端末はどのように買えばいいのだろうか。
新古品や中古品を購入するというのが、方法の1つだ。スマートフォンの台頭に伴い、ユーザーから買い取った端末を販売する中古業者が急増した。秋葉原のような電気街にはたくさんの店舗があるのはもちろん、ネットを検索すれば通販事業者が多数見つかる。大手家電量販店の中にも、こうした取り組みを行っているところがある。以前と比べ、端末単体での買いやすさは格段に上がっているといえるだろう。「ヤフオク」をはじめとする、ネットオークションでもこうした新古・中古端末が流通している。
中古というと、他人のお古で傷などが入った端末のようにも聞こえるが、ほぼ新品同様という場合もある。新古品が流通する事情はさまざまなので一概には言えないが、買ってすぐに端末に飽きてしまったり、そもそも換金目的で端末を買ったりといった場合があるようだ。MNPでキャッシュバックをもらい、端末を売って二重に利益を得る人もいる。もちろん、使い終わった端末を売って新しい端末の足しにするということもあり、端末が流通している事情は千差万別だ。
こうした店舗で買っても、基本的には有償、無償の補償を受けることができるので安心だ。「ケータイ補償 お届けサービス」のような契約を伴う補償サービスには加入できないので修理代金は上がってしまうが、ドコモショップに持ち込んで依頼すること自体は問題なく行える。ただし注意したいのが、いわゆる「赤ロム」と呼ばれる存在。赤ロムとは、「ネットワーク利用制限」がかけられた状態の端末のことを呼ぶ俗語で、アンテナピクトが赤く表示されたことからこう呼ばれるようになった。元の持ち主が割賦の代金を踏み倒した端末だったり、盗難された端末だったりする場合が、制限の対象になる。
このネットワーク利用制限は、ドコモのサイトで事前に確認できる。携帯電話の端末にはそれぞれ、「IMEI」と呼ばれる識別番号が振られており、端末を販売するキャリアがすべて管理している。この番号をサイトに入力することで、端末が安全かどうかを判別できる。親切な中古店では、この確認結果を端末ごとに掲載していることもある。オークションでも同様で、説明欄にIMEIを書いている出品者がいるのはそのためだ。逆に、買おうとしている端末の確認結果が分からなかったり、オークションでIMEIを教えてくれなかったりしたら、リスクを踏まえたうえで購入するかどうかを決める必要がある。
試しに筆者が2013年10月に一括払いで購入した「Xperia Z1 SO-01F」のIMEIを入力してみたところ、結果には「○」と表示された。ただし、買ったばかりの端末や、割賦が終わっていない端末には「△」と表示されるので、判断が非常に悩ましい。利用制限がかかった場合の保障をしてくれる中古店もあるので、そういった店舗を利用した方が安心といえるだろう。
ドコモ端末は、バリエーションという点でSIMフリー端末やMVNOの販売する端末より、豊富で選びがいがある。MVNOがドコモのSIMカードが多く採用しているという現状の裏をかいた方法だが、ユーザーとして利用しない手はないだろう。また、通信方式が同じで、一部モデルのSIMロック解除を行っているソフトバンク端末を入手する方法もある。対応機種は4機種と少ないが、選択肢の1つとして念頭に置いておきたい。ただし、キャリアモデルには一部機能の制限もある。ここについては、次回以降解説していきたい。
ちなみに、こうした店舗やネットで販売されている、海外からの輸入モデルには注意が必要だ。海外モデルといえども、通信方式は日本とほぼ同じで、周波数さえあれば利用できてしまうことが多い。キャリアが国際ローミングの受け入れを行っている以上、接続できないというケースは少ないだろう。
ただし、これらのモデルは、「iPhone 5」や「Nexus 4」などの一部例外を除き、日本での利用に必要となる「技術基準適合証明」、通称「技適」を取得していないことが多い。電波は限られた資源という観点に基づき、世界各国でルールが定められている。簡単に言うと、日本ではこの技適がない無線機が電波を飛ばすことは違法となり、違反すると罰金や懲役刑が課せられる。中古店の中にはこうした端末を販売するところもあるが、「使える」のと「使っていい」のはまったくの別物ということはユーザーの側でもしっかり認識しておきたい。
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