MVNOが提供する格安SIMは、2通りの買い方がある。1つはドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルなどのいわゆるMNOと同じように、端末と回線をセットで買う方法だ。MVNOの場合はタブレットが主流で、Googleの「Nexus 7」のような端末が回線とセット販売されているケースが多い。珍しいのはBIGLOBEの「ほぼスマホ」で、同社はスマートフォンを同時に購入できる仕組みを提供している。
この場合、端末の選択肢は限られる。商戦期ごとに最新モデルを出すMNO(通信キャリア)とは異なり、MVNOでは販売していても多くて数機種というのが一般的だ。一方で、MNOより積極的に行っているのが、SIMカードの単体販売になる。この方法でSIMカードを買った場合、端末は別途自分で入手しなければならない。
日本では、端末と回線のセット販売が主流となっている。一部の例外はあるが、キャリアが販売する端末には「SIMロック」がかけられており、販売元のキャリア以外のSIMカードで通信ができない。そのため、格安SIMを利用するには、原則としてSIMロックがかかっていない端末、いわゆる「SIMフリー端末」が必要になる(MNOのキャリアの端末はSIMロックがかかっていても使えることがある。これについては次回以降で解説する)。ただ、上記のような事情もあり、端末を単体で買おうとすると、こちらも選択肢が限られてしまう。PCのように、家電量販店で端末だけを気軽に買える状況にはなっていないのだ。
とはいえ、2013年あたりから、こうした状況は少しずつ変わり始めている。Googleが「Nexus 5」を、Appleが「iPhone 5s」「iPhone 5c」をSIMフリーで単体販売するようになり、格安SIMを利用する際の有力な選択肢になった。そこで今回は、格安SIMで使える、単体購入が可能な主なスマートフォンを見ていきたい。
2013年に世界と同時に発売され、話題を集めたのがGoogleの「Nexus 5」だ。Nexusシリーズは、Googleのリードデバイスと呼ばれる機種で、Android端末のお手本的な存在。Androidを採用するメーカーブランドの端末は、多かれ少なかれメーカーのカスタマイズが加えられている。OSをそのまま入れたモデルは非常に少ない。一方のNexusシリーズは、Googleブランドで販売する端末となる。製造はLGエレクトロニクスが行っているが、ソフトウェアは“素”のAndroidで、バージョンも最新だ。アップデートがいち早く適用されるのも、Nexusシリーズとなる。
Nexus 5のスペックは、キャリアが販売する最新のハイエンドモデルと比べてもそん色ない。ディスプレイは5インチのフルHD、CPUにはQualcommのSnapdragon 800が採用され、カメラは光学手ブレ補正に対応している。
前回紹介したように、Nexus 5では格安SIMの設定も簡単に行える。APNの設定項目があらかじめ書き込まれているので、一部キャリアの場合、ボタンをタップするだけで通信が可能になる。こうした点からも、格安SIMと相性のいい端末といえるだろう。SIMフリー端末ではまだ珍しい、LTEに対応しているのもポイントだ。16Gバイト版が3万9800円(5%の税込、以下同)、32Gバイト版が4万4800円で、Google Playから通販で購入できる。ちなみに、イー・アクセスも同名の端末を取り扱っており、こちらもSIMフリーだが、端末単体での購入はできない。
Nexus 5の1つ前のモデルである、Nexus 4もSIMフリーで販売されている。こちらは、4.7インチのディスプレイを搭載しており、CPUは1.5GHzのSnapdragon S4となる。LTEには対応しない。カメラは800万画素で、Nexus 5の光学手ブレ補正は搭載されていない。一方で、Nexus 5とは流通の仕組みが異なり、Nexus 4は一部の家電量販店などでも購入ができる。価格には差があるが、おおむね4万円前後だ。
もう1つの有力な選択肢が、iPhone 5sとiPhone 5cだ。どちらもAppleが直接販売しており、路面店やオンラインショップのApple Storeでの購入が可能だ。どちらもドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルが取り扱っているモデルと型番までまったく同じで、機能に差分はない。
iPhone 5sは指紋認証や64ビット化CPUが、iPhone 5cはポップなカラーバリエーションが特徴で、キャリアモデルとの違いはSIMロックの有無だけになる。Nexus 5と同様、LTEに対応しているのも、SIMフリーモデルとしては珍しい。価格はiPhone 5sの16Gバイト版が7万1800円(5%の税込、以下同)、32Gバイト版が8万1800円、64Gバイト版が9万1800円。iPhone 5cは16Gバイト版が6万800円、32Gバイト版が7万1800円となる。
機能はほぼ同じと述べたが、MVNOのSIMカードでは少しだけ制約もある。例えば、前回紹介したように、ネットに接続するためには、プロファイルを使ってAPNの設定をしなければならない。これに伴い、MVNOのSIMカードではテザリングができない点にも注意したい。
比較的早い時期からSIMフリー端末を手掛けているのが、ASUSだ。同社は通話可能な端末として、現在、6インチの「Fonepad Note 6」や7インチの「Fonepad 7」を販売している。6インチはいわゆるファブレット、7インチはタブレットだが、電話に対応しているため、スマートフォンとして利用できる。どちらもIntelのチップセットを搭載しているのがほかの機種との大きな違いで、Fonepad Note 6は付属のスタイラスでペン入力も行える。直販ストアではFonepad Note 6が3万9800円(5%の税込、以下同)、Fonepad 7が3万4800円。家電量販店などでも購入できる。ASUSは、Nexus 7の製造も手掛けており、これらの販売も行っている。自社ブランドのタブレットにもSIMフリーモデルが多いため、注目しておきたいメーカーの1社だ。
格安SIMが流行になりつつある中、GoogleやLG、Apple、ASUSのような大手企業ではないメーカーも、SIMフリー端末の販売に参入している。これらの端末は、メジャーブランドにはない一風変わった機能を搭載しており、価格も安いのが特徴。“初めてのSIMフリー端末”として、気軽に購入できる。
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