多様化するMVNOのサービス――料金や販売形態の最新トレンドをチェックはじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第15回

» 2014年08月08日 19時24分 公開
[石野純也,ITmedia]

 MVNOの料金プランは、こまめに改定されている。本連載第2回で取り上げた代表的な料金プランも、今では金額やデータ量が異なっており、半年もたてばデータが古くなってしまうのが現状だ。また、相互接続の形で提供するMVNOは、当初はドコモだけだったが、連載を続けているうちにKDDIの回線を用いた「mineo」も登場した。音声通話に対応したSIMカードやスマートフォンがセットになった販売形態も、徐々に一般的になりつつある。最終回となる今回は、ここ半年で大きく変化したMVNOの最新トレンドをチェックしていこう。

徐々に変わりつつある“1Gバイトあたり”の相場

 連載開始当初の1月は、ビッグローブが2013年12月に1Gバイト、933円の「エントリープラン」を打ち出したばかり。他社もその価格に追随を始めており、税込で1Gバイトが約1000円という“相場”が形成されていた。ところが、そのビッグローブは半年もたたずに料金を改定。消費増税に合わせる形で、1Gバイトの料金を33円値下げし、4月1日から900円とした。3月には、ドコモがMVNOに回線を貸し出す際の基準となる接続料を発表しており、これが大幅にダウンしていたこともMVNO各社の値下げを後押しした。

「BIGLOBE LTE・3G」のデータ通信用料金プラン
料金 データ量 4月1日の改定
エントリープラン 900円 1Gバイト 33円の値下げ
ライトSプラン 1505円 2Gバイト 変更なし
ライトMプラン 2838円 3Gバイト 変更なし
スタンダードプラン 3790円 7Gバイト 変更なし

 わずかな違いではあるが、「税込で1Gバイト、1000円」から、「税別で1Gバイト、900円」に値下ったわけだ。同時期に大手MVNOも、こうした動きに歩調を合わせ、容量を上げたり、料金を下げたりといった施策を打ち出している。例えば、MVNO最大手のNTTコミュニケーションズ(OCN)は、「モバイルONE」の「30Mバイト/日コース」を「50Mバイト/日コース」に改めた上で、料金を934円(税別、以下同)から900円に値下げした。これが4月1日のこと。「60Mバイト/日コース」も「80Mバイト/日コース」になり、1410円から1380円になっている。そのほか、NTTコミュニケーションズは、「1Gバイト/月コース」「2Gバイト/月コース」「500Kbpsコース」も、それぞれ4月1日から値下げに踏み切っている。

「OCN モバイルONE」の料金プラン
料金 データ量 4月1日の改定
50Mバイト/日コース 900円 1日、50Mバイト 34円値下げ+20Mバイト増量
80Mバイト/日コース 1380円 1日、80Mバイト 30円値下げ+20Mバイト増量
1Gバイト/月コース 1110円 1カ月、1Gバイト 100円の値下げ(容量据え置き)
2Gバイト/月コース 1450円 1カ月、2Gバイト 55円の値下げ(容量据え置き)
500Kbpsコース 1800円 無制限 86円の値下げ(速度据え置き)

 IIJも、4月1日にバンドルクーポンの容量を改定した。バンドルクーポンとは、オンにしたときだけ最高速度が出る仕組みのこと。高速通信が必要なときだけデータ量を消費できるため、ここぞというときだけオンにすれば節約につながる。もともとは「ミニマムスタートプラン」が500Mバイト、「ファミリーシェアプラン」が2Gバイトだったところを、それぞれ1Gバイト、3Gバイトに増量。2Gバイトのバンドルクーポンが付く「ライトスタートプラン」は据え置き、料金も増税に合わせた変更はなかったが、バンドルクーポン容量によって、他社にひけを取らないようになった。

「IIJmio高速モバイル/Dサービス」のデータ通信用料金プラン
料金 データ量 4月1日の改定
ミニマムスタートプラン 900円 1Gバイト(クーポン制) バンドルクーポンを500Mバイト増量
ライトスタートプラン 1520円 2Gバイト(クーポン制) 変更なし
ファミリーシェアプラン 1110円 3Gバイト バンドルクーポンを1Gバイト増量

 NTTコミュニケーションズ、IIJ、ビッグローブというMVNO大手3社の料金プランをコピーした「b-mobile X SIM」を展開中の日本通信も、これら改定に合わせ、料金を値下げしたり、データ量を増やしたりしている。4月25日から、月額900円の「プランI」のデータ通信量を600Mバイトから1.01Gバイトに増量。これは、IIJのミニマムスタープランに合わせたものだ。OCNのプランをコピーした「プランN」については、1日のデータ量を40Mバイトから51Mバイトに上げ、料金を934円から900円に変更した。ただし、ビッグローブ風の「プランB」については、もともとがなぜか2Gバイトの「ライトSプラン」に追随していたため、料金やデータ量に変更はなかった。

日本通信「b-mobile X SIM」のデータ通信用料金プラン
料金 データ量 4月25日の改定
プランI 900円 1カ月、1Gバイト 401Mバイトの増量
プランN 900円 1日、51Mバイト 34円の値下げと11Mバイトの増量
プランB 1505円 1カ月、2Gバイト 変更なし

 このように、ここ半年でMVNOの料金やデータ量が細かく見直されてきている。また、システム的には、IIJのクーポン制にOCNがキャッチアップしており、「ターボ機能」と呼ばれるものを6月25日にリリースしている。同社のプランは1日単位でデータ量が決められているため、データ量の少ないプランだとすぐに使い切ってしまうことがあったが、このシステムがあれば最高速度が出る状態を細かく制御できる。

photophoto IIJの売りだったクーポンシステム。使いたいときだけオンにして、データ量を消費できるのが特徴だ。これと同じ仕組みをOCNも取り入れ、使い勝手が上がった

 約半年のトレンドという点では、音声通話への対応も挙げられる。携帯電話では当たり前の音声通話も、MVNOでは一般的ではなかった。どちらかと言えば、今でもデータ通信専用のSIMカードが主流だ。とはいえ、それだとメインで使う電話番号を移せず、IP電話だけでは緊急通話もできない。こうした状況を受け、もともと音声通話を提供していた日本通信やSo-netに加え、IIJとビッグローブが音声通話サービスを開始した。

photo IIJやビッグローブが、続々と音声通話サービスを始めている。ただし、現在は設備を丸ごとキャリアから借りる形となっており、通話料に柔軟性がないのが難点。各社とも30秒21円なのはそのためだ

KDDIの回線を使い、人気を集めるmineo

 MVNOには大きく2つの種類がある。1つは、回線を貸し出すキャリアに自らの設備をつなぎ、料金もルールに基づいてMバイトps単位で決められている「接続」だ。もう1つが「卸」で、こちらの料金は貸し手と借り手の交渉によって決まり、貸し出すキャリアの端末もそのままの再販に近いケースも多々あった。こうした種類の違いは第1回の連載で解説したとおりだが、前者については、ほぼすべてのMVNOがドコモから回線を借りているという状況。これは、今も変わっていない。

 一方で、初めてKDDIから回線を借りるMVNOも登場した。それが、関西に拠点を持つ電力系通信事業者のケイ・オプティコムだ。同社の「mineo」は、au回線を借りたサービスで、KDDIが800MHz帯で構築した広いLTEエリアを売りにしている。その上で、料金もデータ通信のみなら1Gバイト、980円(音声通話つきは1Gバイト、1590円)とドコモ系MVNOと大きな差はない。KDDIとの違いは、データ通信はLTEのみで、3Gは音声通話にしか使わないという点だ。

photo au回線を接続の形で借りた初めてのMVNOである「mineo」。8月には、データ通信のプランを多様化した

 当初は月1Gバイトの料金プランだけで始まったmineoだが、8月には2Gバイトで1580円、3Gバイトで2330円という料金プランも追加された。音声通話つきの場合は、それぞれ2190円、2940円となる。データ量を使い切った場合は、100Mバイトあたり150円で追加することもできたが、最初から2Gバイト、3Gバイト使うことが分かっているときは、最初からその容量のプランを契約した方が安くつく。プランの幅が広がったことで、これまでデータ量が少ないという理由で敬遠していたユーザーにも対応でき、普及に弾みがつきそうだ。

mineoのデータ通信用料金プラン
料金 データ量 8月5日の変更点
1ギガバイトプラン 980円 1Gバイト 変更なし
2ギガバイトプラン 1580円 2Gバイト 新設
3ギガバイトプラン 2330円 3Gバイト 新設

 mineoはSIMカード単体で契約することもできるが、それと同時に端末とのセットプランも用意している。現時点ではmineoブランドで販売される機種は2つで、1つが「DIGNO M」、もう1つが「AQUOS SERIE」となる。後者はキャリアアグリゲーションやWiMAX 2+に対応するなど、高いスペックが特徴だ。KDDIは第3世代の通信方式に、他社とは異なるCDMA2000 1xを採用している。そのため、ドコモ系のMVNOより端末は概して手に入りにくい。SIMフリーの端末も多くがドコモやソフトバンクの採用するW-CDMAである。そのため、mineoで端末も一緒に買えるのは安心感がある。

photophoto 第1弾は京セラ製の「DIGNO M」。新たに追加したのが、シャープ製の「AQUOS SERIE」だ。現時点ではauと同じ端末に、mineoのロゴやアプリを入れている状態だが、より価格の安い独自端末の調達も行っていくという

格安なSIMフリー端末とのセット販売も増加、割賦販売も

 mineoと同様、端末をセットで提供するMVNOも徐々に増えている。やはり端末と回線を別々に買い、自分でセットアップして使うというのはハードルが少々高いからだ。MVNOのパイが狭く、こうした知識をしっかり持ったユーザーばかりだったころならいいが、最近では「格安SIM」「格安スマホ」というキーワードが広がり、以前よりもユーザー層に広がりが出てきている。MVNO各社も主婦や高齢者など、必ずしもITに詳しくないユーザーに対してアプローチをしている。回線と端末のセット販売が増えているのには、こうした背景がある。

photo イオンスマホのように、流通が端末とSIMカードをセットにして販売する事例も増えており、ユーザー層に広がりを見せている

 提供形態は複数あるが、ケイ・オプティコムやビッグローブのように事業者が直接端末を販売するケースもあれば、家電量販店などの販売店が端末とSIMカードをセットにしているケースもある。MVNOのSIMカードとセットになっている場合は、割賦払いが可能なことも多く、1回にまとまった金額を支払う必要がないため気軽に買いやすい。ドコモ、KDDI、ソフトバンクのように、端末の購入に伴う通信費に対する割引は出ないが、同じように毎月の料金と一緒に端末代を払うことはできるというわけだ。

photo 端末を割賦にして通信費と一緒に支払う方式が、MVNOの間にも徐々に定着してきた

 個々の端末については前回紹介したため割愛するが、LTEに対応していながら3万円前後という価格のミッドレンジモデルが徐々に増えている。こうした端末は24回払いだと1カ月1000円〜1500円程度になるため、毎月の負担感もそれほどなく購入でき、MVNOのSIMカードと一緒に買うスマートフォンのボリュームゾーンになるかもしれない。

photophoto LGエレクトロニクスやHuaweiといった大手メーカーの端末も、SIMフリーで発売されるようになった

 端末のトレンドとしては、HuaweiやLGエレクトロニクスといった、いわゆる大手メーカーがSIMフリー市場に参入し始めたのもポイントといえるだろう。こうしたメーカーが、以前より値ごろ感のあるミッドレンジの端末を用意しており、ユーザーの選択肢は以前より確実に広がっている。

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