NTTドコモの接続料改定にMVNOが顔面蒼白 ━━データ通信料値下げ合戦に終止符が打たれるか石川温のスマホ業界新聞

» 2015年04月03日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 MVNOに衝撃が走っている。3月24日、IIJは通期業績予想を下方修正した。NTTドコモに支払う接続料の見込みが甘かったというのが原因のようだ。

 ここ数年、接続料は毎年、下がってきており、2013年度は2012年度に比べて56.6%減だった。日経BP「テレコムインサイド」によれば、2014年度のレイヤー2接続による低減率は23.5%とされ、IIJの予想を裏切る結果となったようだ。これにより、IIJは2014年度通期の営業利益を65億円と予想していたが、14億5000万円減の50億5000万円に下方修正することとなった。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年3月28日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


 MVNOのデータ通信料と言えば、昨年春の格安スマホが登場して以降、一気に値下げが行われたばかりだ。昨年春までは900円で1GBが一般的であったが、IIJでは昨年10月に月額基本料金を据え置きのまま、1GBを2GBに倍増。

 今回のNTTドコモによる接続料の改定は2014年度に適用されるものである。実際、NTTドコモによる接続料の低減率が低かったにもかかわらず、2GBという容量を増やしたことで、結果として、ネットワークサービス原価の負担が増したということだろう。しかも、IIJでは他社に先駆けて、この4月から2GBを3GBに増大する料金改定を行っている(4GBは5GB、7GBは10GBに改定)。

 IIJ関係者にデータ量増大を発表した後に聞いたところ「接続料の値下げを先取りして改定した」と話していたことから、同社ではさらに接続料が低減されると予想して、大胆にデータ容量の改定に踏み切ったと思われる。実際、今回の改定は「社内でも反対意見があったが、ファミリー層を獲得するためにも、データ容量増大に踏み切った」(IIJ関係者)といい、苦渋の決断だったことがうかがえる。

 しかし、2014年度、さらに2015年度も低減率が低くなるようだと、今回のデータ容量増大は裏目に出る可能性が高い。将来的に接続料の負担を減らすには、限られた帯域にユーザーを詰め込むということもあり得るだろう。IIJは高品質を売りにしているMVNOだけに、今後の動向が気になるところだ。

 もちろん、IIJのデータ容量増大に追随したMVNOもいくつかあった。彼らも接続料負担が重荷になることは明らかなわけで、MVNO全体で、ネットワーク品質の低下が起こらないか、不安要素として持ち上がってきそうだ。今回の接続料改定について、フリーテルを手がけるプラスワン・マーケティングの増田薫社長は「我々は様々な想定をしており、特に影響はない。むしろ、この夏から秋にかけて投入するサービスに期待して欲しい」と語った。

 MVNO各社の「NTTドコモの接続料改定をどう読むか」によって、この1年、ネットワーク品質の変化や、料金の改定など、業界全体が動くことが予想される。

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