―― J:COMは、auスマートバリューのセット対象でもあります。そこを崩して、J:COM MOBILEに誘導していくという考えはないのでしょうか。
中馬氏 それはありません。J:COMはauの販売もしていて、その過半数がiPhoneを契約しています。auスマートバリューを使えばお得になるというのは今もやっていて、稼働シェアも高くなっています。そこは、十分浸透しています。一方で、同じアプローチが通用しない人が、どの層にどのくらい残っているのかも把握しています。
ですから、J:COM MOBILEはセグメントを明確に切って、スマホに行かなかった人たちをターゲットにしています。逆に言えば、auに変えない人の不満を、全部解消しているのがJ:COM MOBILEなのです。
―― auに変えない人の不満とは、どのようなものでしょうか。
中馬氏 例えば、わざわざauショップに行きたくないというものがあります。僕らは契約も工事も、すべてご自宅まで伺ってやっています。では、なぜ携帯電話だけ契約するときにショップに行かなければならないのか。初期設定もそうで、僕らは全部自分たちでやってお渡しします。そういうところがネックになっているというのは、痛烈に感じているところで、おそらく携帯電話のショップでは、そこまでのことはできません。そこに、僕らの役割がもう少しあるのだと思います。
―― 同様に、ドコモ回線の「ケーブルスマホ」も提供しますが、やはりメインはau回線と考えてよろしいですか。
中馬氏 ケーブルスマホがいい悪いの話はできませんが、J:COMクオリティでのサービスができないことは気になるところです。(au回線の方は)コールセンターやリモートサポート、訪問サポートまでフルでやることが前提になっている一方で、ドコモ回線の方はお客様が端末を持ち込まなければいけない。そのサポートをすべてやるのは不可能ですし、僕らが全端末を評価できるかといえば、そうではありません。
もちろん、そこにもニーズがあるので提供はします。必ずしも100%のフルサポートを求めていない方もいますからね。ただ、(J:COM契約者の中でまだスマホにしていない)大多数は、ある程度のサポートがないとスマホに行けない方々だというのは見えています。
―― 最後に、ネットワークの中立性について伺います。特定のサービスだけ、データ通信をカウントしないというのは、そこに反するという見方もあります。この点については、どうお考えでしょうか。
中馬氏 そこは、ドコモやau(のようなMNO)とは違うところだと考えています。確かに僕らが周波数を持って、そこでさらに自社のサービスだけをパケ代フリーにするとなれば、ちょっと引っかかるものがあります。一方で、海外ではサービス連携でやる事業者もいて、コマースなどでデータ通信が無料になるものもあり、そういったことをやるためにMVNOという仕組みもあると理解しています。選択肢を増やすという点では、料金的なものはすでに広がっているので、サービスも含めて選択肢が出てくるのが重要なのではないでしょうか。
ネットワークだけでなく、端末、サービスまでが三位一体となり、ケーブルテレビのユーザーをターゲットにしたのが、J:COM MOBILEだ。まだスマートフォンに変えていないフィーチャーフォンユーザーが対象で、ほかのMNOはもちろん、ほかのMVNOとも明確な違いを打ち出せている。フィーチャーフォンのユーザーが、料金そのままでスマートフォンを使いたいとMVNOに移るケースも出てきているが、このニーズをきっちり満たせる可能性は高い。
一方で、少々残念なのが、エリア外のユーザーが契約できないところ。サポートが提供できないという理由は確かに納得できる部分だが、ほかのケーブルテレビにMVNEとしてサービスを提供するなど、何らかの方策はありそうだ。とはいえ、ここまでユーザー層を明確にしたMVNOも、まだ珍しい。J:COM MOBILEがどのように受け入られるのかは、MVNOの今後のあり方を占う材料になると言っても過言ではないだろう。
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