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» 2015年11月11日 10時00分 UPDATE

普段からの備えをより強固に――NTTドコモグループ総合防災訓練

ドコモが首都直下型地震を想定した防災訓練を実施した。訓練の説明会では、基地局において新たな災害対策を行うことも発表した。

[井上翔,ITmedia]

 NTTドコモは11月10日、東京臨海広域防災公園(東京都江東区)で「平成27年度NTTドコモグループ総合防災訓練」を実施した。ドコモグループでは、毎年総合防災訓練を実施しており、今年は2回に分けて実施する。今回(1回目)は、マグニチュード7クラスの首都直下型地震が発生したことを想定して「局所的なエリア救済」と「災害時の避難所支援」の訓練を行った。

実践的な訓練

 雨が降ったりやんだりを繰り返す不安定な天候の中、以下のような訓練を実施した。

民間ヘリコプターを使った災害対策器材の輸送

 陸路・海路が使えない状態でも通信の応急的な復旧を迅速に行うため、民間ヘリコプターを利用して器材の運搬を行うことがある。今回は、衛星エントランス基地局を朝日航洋のヘリコプターで運搬し、それを現地で待機する保守人員が受け取った。

着陸するヘリコプター器材を降ろす現地の保守人員 ヘリコプターで運搬された衛星エントランス基地局をリヤカーに積んで展開場所まで運ぶ

可搬型衛星エントランス基地局の展開

 災害で光ファイバーや銅線による伝送路(エントランス)が寸断された場合、衛星エントランスを利用する可搬型基地局を展開することがある。今回は、ヘリコプター(先述)と陸路で運搬した2種類の可搬型基地局を組み立てた。

スカパーJSATをエントランスとする基地局のパラボラアンテナほぼ完成したスカパーJSAT利用基地局 ヘリ輸送された「スカパーJSAT」の衛星をエントランスとする基地局。パラボラアンテナが分解できることが特徴だ
IPSTARをエントランスとする基地局の組み立て完成したIPSTAR利用基地局 ドコモでは「IPSTAR」の衛星をエントランスとする基地局も災害時に利用している

可搬ブースターの展開

 常設の基地局は使えないが、隣接する基地局なら使える。しかし、電波が届かない――そのような場合、電波を中継し増幅する可搬ブースターを使うことでエリア救済できる場合がある。今回は、中国支社から車載型可搬ブースターが派遣し、中国支社の保守要員が組み立てた。

組み立て中の可搬ブースター完成した可搬ブースター 車載型可搬ブースターは中国支社から派遣された

衛星エントランス搭載移動基地局車の展開

 花火大会などの大規模イベント時によく見かける移動基地局車。イベント時は通信容量を確保するために派遣されるが、災害で常設の基地局が使えなくなった場合にも派遣されることがある。今回は、長野支店、東北支社、東海支社、関西支社に配備されている4台の衛星エントランス搭載移動基地局車を派遣し、それぞれの支店・支社の保守要員が設営した。なお、ドコモの移動基地局車は2015年度中にLTE対応を完了するとのことだ。

関西支社の移動基地局車東海支社の移動基地局車 4つの支社・支店から衛星エントランス搭載移動基地局車が派遣され、それぞれの支社・支店の保守要員が設営を行った

災害時の避難所支援

 災害時には、家族との安否確認のために携帯電話を使うことが多い。しかし、災害で携帯電話を紛失・破損したり、持っていてもバッテリー切れで使えなかったりすることもある。

 そこで、ドコモでは無料充電サービスや必要に応じた携帯電話やACアダプターの貸し出しを避難所で行ったり、避難所のエリア改善を実施したりしている。また、スマホ・タブレットやPCでも通信できるように「docomo Wi-Fi」のアクセスポイントを臨時設置することもある。

 さらに、紛失・破損した携帯電話の買い換えや修理を受け付けるための可搬型の顧客情報端末(ALADIN【アラジン】)を全国に150台配備している。この端末は、ドコモショップに設置されているものとほぼ同等の機能を持っており、新規契約・機種変更・故障受付や付属品の販売を行えるという。クレジットカードによる代金支払いもできる。

 今回は、避難所で展開されるこれらのサービスを行う機材を実際に設営した。

充電ボックス可搬型顧客情報端末 避難所に設置される充電ボックスは、キャリアを問わずに使える(写真=左)。可搬型顧客情報端末は、ドコモショップにある端末とほぼ同じ機能を持つ(写真=右)

普段からの備えをより強固に

ドコモの池田氏 NTTドコモ 災害対策室 室長の池田正氏

 訓練に先立ち、ドコモは会場に隣接する防災体験学習施設「そなエリア」で防災への取り組みと、今回の訓練に関する詳細な説明会を開催した。説明は、ドコモの災害対策室 室長の池田正氏が行った。

 ドコモでは、広域災害時に人口密集地の通信を確保する「大ゾーン基地局」の整備、基地局の予備電源の強化、アンテナ角度の遠隔操作によるエリア補完対応など、災害に備えた対策を積極的に進めてきた。また、被災がある程度予想できる台風の発生時には「空振りを恐れずに」(池田氏)、島しょ部への保守人員・物品の先行配置も行い、通信の復旧を迅速化する取り組みも行っている。

 また、無料充電サービスの実施、携帯電話やACアダプターの貸し出し、レピーターによる屋内の通信改善など、避難所におけるサポートにも力を入れている。

 予備電源は、基地局の周辺環境に合わせて種類(鉛蓄電池、リチウムイオンバッテリー、燃料電池、ディーゼルエンジン)と容量を柔軟に設定し、どの基地局も最低6時間、最長で24時間(1日)以上電源を喪失しても使えるようにしているという。しかし、電源の回復が遅れると、大容量の予備電源でも枯渇してしまうことがある。そこで、近隣エリアの発電機などを集約して対応するケースもあったという。

台風15号時の災害対応 8月25日に九州を襲った台風15号では、島しょ部への保守人員・物品の先行配置や九州の近隣エリアにある発電機の集約対応を行った
関東・東北豪雨の際の避難所対応 平成27年9月関東・東北豪雨では、避難所での無料充電サービス、携帯電話・ACアダプターの貸出サービス、レピーターによる避難所のエリア改善などを実施した。避難所の巡回は、遅くとも2日に1回のペースで行っていたという

 しかし、昨今の自然災害の増加、被害の多様化と、通信環境の変化により、従来の対策だけでは不十分な面が出てきた。そこで、新たに「中ゾーン基地局の全国展開」と「大ゾーン基地局のLTE対応」を行うことを発表した。

中ゾーン基地局の全国展開

 「中ゾーン基地局」は、通常の基地局に以下の設備強化を施し、災害時により広いエリアをカバーできるようにしたものである。

  • 電源喪失時に24時間以上運用できる補助電源の整備
  • 通信伝送路の二重化(マイクロ波装置などを活用)
  • アンテナ角度の遠隔調整対応

 整備対象は、地震・津波・噴火による災害が予想される場所や、災害発生時に保守人員の到着に時間がかかることが予想される場所で、2017年度末までに全国に1200局以上展開する計画だ。

中ゾーン基地局 中ゾーン基地局は、普段は「普通の基地局」として運用し、災害時にアンテナ角度を変えることで広範囲のエリアカバーを行う。伝送路の二重化と予備電源の強化も屋内、通信途絶を防ぐ
中ゾーン基地局の先行整備事例と今後の整備事例 説明会では、先行整備事例として和歌山県沿岸部、今後の展開例として鹿児島県の桜島と中国地方の中山間地域が紹介された。和歌山県の沿岸部では、大ゾーン基地局と合わせて被災エリアのほぼ全域をカバーできるという

大ゾーン基地局のLTE対応

 大ゾーン基地局は、全国の都道府県庁付近など、全国106カ所に設置された非常時専用の基地局だ。エリアは概ね半径7キロ、360度をカバーできる。

 従来、大ゾーン基地局はW-CDMA(FOMA)のみ対応していたが、通信容量増大への対策として、2016年度末までに全ての大ゾーン基地局をLTE(Xi)通信にも対応させる。なお、整備するのは1.5GHz帯(Band 21)と1.7GHz帯(Band 3、東名阪エリアのみ)となる。

大ゾーン基地局のLTE対応 2016年度末までに大ゾーン基地局をLTE対応にする。ただし、対応周波数帯は限られる

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