ITmedia Mobileは12月中旬、2015年を代表するスマートフォンを決定する「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2015」の審査会を開催しました。
2015年の選考委員は、ITmedia Mobileで活躍し、1年間を通じて携帯電話業界を取材してきた石川温氏、石野純也氏、太田百合子氏、佐野正弘氏、島徹氏、すずまり氏、房野麻子氏、村元正剛氏、山根康宏氏(五十音順)の9人と、ITmedia Mobile編集部(3人で1人扱い)です。審査会当日は、石川氏と山根氏を除く7人の選考委員と、ITmedia Mobile編集部員が、2015年の携帯電話業界の動向を振り返りつつ、ノミネート候補としてあげた機種について熱く語りました。
2015年は、SIMロックフリースマホのバリエーションがローエンドからハイエンドまで広がりを見せました。特に、従来の日本市場では“穴”と言われていたミッドレンジ(中位)スペックのスマホは一気に層を増した感があります。また、「Windows 10 Mobile」を契機に、国内で再びWindows Phoneが登場しました。一方で、一回り大きなiPhoneである「iPhone 6s Plus」の陰が薄いことも“隠れた話題”の1つです。
そこで、石川氏・山根氏・すずまり氏を除く6人の選考委員の皆さんに、「SIMロックフリースマホの動向」「Windows 10 Mobile」「iPhone 6s Plus」をテーマに、ざっくばらんに討論してもらいました。
―― 皆さん、同じ端末でも評価しているポイントが結構違うことが分かりました。ありがとうございます。さて、今まで出た話を踏まえて、2015年をざっくばらんに振り返りたいと思います。2015年は2014年以上にSIMロックフリー端末が増えた1年だったと思うのですが、ラインアップや動向について、何か思うところはありますか。
石野氏 一言でいうと「箱の1年」だったと思います。スマホの箱がいろいろな意味で注目されたと思います。「VAIO Phone」は最初に箱だけ発表されましたし、ここには挙がっていませんが、「TONE」の新しいモデル(TONE m15)は箱に置くだけで自己修復できる機能がありますし、今回は対象外になりますが「NuAns NEO」も箱が貯金箱になるということが注目されました。思いの外、箱がフィーチャーされたのかな、と。
―― なるほど(笑)。端末自体で一番インパクトがあったのは「ZenFone 2」ですかね。
佐野氏 ただ、ZenFoneシリーズは後からSelfieが出たりLaserが出たりして結局良く分からなくなってきました。
石野氏 手を広げすぎですよね。
佐野氏 出し過ぎ感があるんですよね、正直。
石野氏 バリエーションをもう少し整理してもいいかな、とも思います。ただ、そうすると「個性がない」とも言われちゃうので、難しいところですけど。
島氏 ZenFone 2はミドルハイを狙っているけれど、じゃあ「何に使うの?」という点ではすごく中途半端な立ち位置になってしまっています。Intelのプロセッサを使っているから、というのもありますが、他の(ARMアーキテクチャを使っている)ハイエンドのスマホと比べてカメラ画質はほどほどで、最新の3Dゲームが快適か、というとそうでもない面もあります。後から出たSelfieやLaserの方がキャラ立ちがよくていいと思うのだけれど、ZenFone 2という価格の近い上位モデルがあるせいでどちらも立ち位置がぼやけた感じがあります。
太田氏 SIMロックフリー端末、あるいは格安スマホって、全体的に誰を対象にして出しているのか分かりにくいですよね。価格帯もNexusシリーズのように高めのものも出てきて幅が広がっているのはすごくいいことだと思うのだけれど、「誰向け」っていうのが何となく良く分からないんですよね。
―― メーカーとしては「初心者を取り込みたい」と思っていても……ということですか。
太田氏 そうです。そういう意味では、価格で選ぶという感じになってしまった印象があります。機能やサービスで、ではなく価格で。それが正しいあり方なのかもしれませんけど……。
房野氏 実際、私は価格で選んだんですけど、何を買っても特に問題がなかったので、初心者でも快適に使えるだろうし、「初心者だからハイスペックな方がいいよ」という感じでもなく、まあ、すごいなあと思いました。
太田氏 格安スマホはそれでいいのかもしれないですけど、選考時に悩んだZenFone Selfieのように「これはセルフィ(自撮り)にイイ!」とか、ちょっとエッジの立ったものがもっと出てきても良かったかな、と思います。今ならWindows Phoneは「Windows Phone」という1つのジャンルになっていて、それも含めていろいろなサービスが出てきて、いろいろな端末も出てきて、価格帯も幅が広がったけれど、結果として誰向けなのか分からない、という感じが全体としてしました。
佐野氏 セットで出す場合の出し方もポイントになってきていると思います。例えば、楽天モバイルの「honor6 Plus」なら「カメラです!」という推し方をしていますし、私が推薦した「Wine Smart」なら「折りたたみです!」という推し方をしています。ポイントを絞ってやっていかないと、「端末は安いのがいっぱいあります。さあ、選んでください!」と言われて(ユーザーは)どうなんだ、ということになります。端末メーカーもそうですが、MVNOも出し方の工夫がもう少し必要なのではないかと正直思います。
島氏 エヴァスマホのようなコラボ企画でもいいんですよ。あれを4〜5万円で出せるのであれば。むしろ、どんどんやればいいんです。
太田氏 「誰向け」なのか、というのはこれからすごく重要だと私は思っています。ただ、そのメッセージが中途半端だと伝わりません。auの「ママスマホ」は、そういう意味ではまだ中途半端。
―― SIMロックフリースマホに参入するメーカーが増えたことで、なかなか差別化が難しくなっている面もあります。
石野氏 3万円程度でスマホの差別化はハードルが高いんですよ。プロセッサはQualcommの「Snapdragon 410」あたりになってしまうし、メインメモリは1〜2GBで、ストレージは16〜32GBで……と、組み合わせられるものが決まってしまうところがあるので。その中で先駆けてやって完成度が高くて売れたのが2014年は「ZenFone 5」、2015年は「P8lite」だったかな、と。P8liteは、よく見ると価格なりになっている面もありますが、フラッグシップの「P8」の流れを受け継いで、デザイン性が良くて、格好も良くて売れた、という点もあります。
村元氏 みんな価格で選んでいる中で、唯一、ZenFoneだけがASUSというメーカー名、あるはZenFoneというブランドで買っていますよね。そういう意味で成功したのはZenFoneだけなのではないでしょうか。
HuaweiのP8liteは、デザイン面で薄いというのと、コストパフォーマンスが良くて、店員さんも勧めやすいということで売れたのだと思います。でも、Huaweiには「honor」もあるし、「Ascend」もまだあるし……。1つの「Huwaei」ブランドで本格的にまとめていくのは2016年からですが、着実に頑張っているのはASUSとHuaweiの2ブランドだと思うんですよね。
一同 そう思います。
石野氏 Huaweiは結果が出るのがちょっと遅かったですが、ようやく、ってところですよね。
村元氏 2社の端末は、初めて使った人が困らない程度のアプリをあらかじめ入れてあるんですよね。使っていて後から気付くこともありますが。中身(システムソフト)のアップデートも頻繁に来るので、機能進化の面で意外と安心して使えると思えます。ZenFone 5を最初に買って、その後にZenFone 2などスペックの高い機種に乗り換えたら、純粋に「おぉ」と思えるかもしれません。ロー〜ミッドスペックから(端末投入)を始めたのは正解だったのかな、と思います。
石野氏 ZTEはそういう意味ではいいところを突いていますよね。コストパフォーマンスも良いですし、独自の機能も積んでいます。
SIMロックフリー端末の流通面では、ディストリビューターとなる企業の良しあしも重要だったと思います。これが、端末の売れ行きを左右した面も少なからずあると思います。
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