「遅いWi-Fi」に対して1GBを追加する初心者ユーザーを発見――キャリアのオフロード戦略は誤解を生むきっかけなのではないか石川温のスマホ業界新聞

» 2016年04月29日 10時00分 公開
[ITmedia]
「石川温のスマホ業界新聞」

 「追加で1GBを購入しても、全然、速くならないんです」

 先日、17年近くNTTドコモを使っているという、32歳女性からこんな相談を受けた。速度がちっとも改善しないため「NTTドコモからソフトバンクに乗り換えようかと思っている」という。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年4月23日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。


 ただ、仮に容量を使いすぎて速度が遅くなっているから言って、1GBの容量を購入しても、速くならないというのは理解できない。そこで、いろいろと聞き取り調査をすることにした。

 すると「職場でWi-Fiを使っているが、遅いので追加で1GBを購入したが速くならない。職場を出ると速くなるのでなんとかしたい」とのことだった。

 ここで思わずアゴが外れそうになった。

 スマホやネットワークの知識が全くない人からすると、Wi-FiもLTEも違いが全く理解されていないということだ。彼女は「とにかくスマホが遅い」ということで、速度制限がかかっていると思って追加で1GBを購入しているのだが、実は、そもそも遅いWi-Fiにつないでいるとのことだった。

 恐る恐るWi-Fiの接続先を見てみると、「e-mobile」の文字を発見。どうやら、職場にはe-mobile時代のモバイルWi-Fiルーターが置いてあり、そこと接続しているようだった。彼女は、職場が設置した激遅なe-mobileのモバイルWi-Fiルーターにスマホを接続し、「遅いから不満」といって、ドコモのスマホで1GBを購入。しかし、一向に改善しないことから、17年契約し続けてきたNTTドコモを解約し、ソフトバンクに移行しようとしていたのだった。

 これほどまで、一般的なユーザーが誤解をしながら使っていること自体に驚きを隠せなかったし、キャリアとしてはもっとユーザーに通信に関する知識を教えてあげるだけでも、状況を改善できるのではないかと思った次第だ。

 実際、スマホ初心者から「Wi-FiとLTEの違い」について問い合わせを受けることも多い。そもそも、Wi-Fiに対しての知識がないために、無駄な支払いをしていることも多く

、「遅くて追加料金を支払わされている」という誤解をまねいているのかも知れない。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、街中には今後もフリーWi-Fiスポットが増えてくると思われる。キャリアが提供するWi-Fiスポットもあり、スマホを持ち歩いていると勝手にWi-Fiにつないでいることも多い。とはいえ、Wi-Fiスポットが必ずしも速いとは限らず、LTEのほうが高速で快適と言うことが多かったりもする。

 キャリアとしてはWi-Fiスポットにつながっても快適で高速な環境にしておかないと、彼女のような初心者によって「この携帯電話会社は遅くて使い物にならない」と誤解によるレッテルを貼られてしまうこともあり得そうだ。

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