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» 2016年08月06日 06時00分 公開

石野純也のMobile Eye(7月25日〜8月5日):業績好調の3キャリア――MVNOやY!mobileの台頭、公取委の指導で市場変化の可能性も (1/3)

ドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ3社とも第1四半期の業績は好調だった。一方で、MVNOやY!mobileの台頭が少なからず影響を与えている。端末販売に関する公正取引委員会の指導もあり、市場環境が変化する恐れもある。

[石野純也,ITmedia]

 ドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ3社の第1四半期決算が出そろった。3社とも業績は好調。ドコモは、売上高1兆1087億円、営業利益2993億円で増収増益。「年間計画達成に向け、順調な滑り出しになった」(ドコモ 代表取締役社長 吉澤和弘氏)と、一時の苦境は完全に脱したようだ。KDDIも傾向は同じで、売上高1兆466億円、営業利益2310億円と増収増益を達成した。

Mobile Eye
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Mobile Eye 3キャリアが第1四半期の決算を発表した。写真は上からドコモの吉澤社長、KDDIの田中社長、ソフトバンクグループの孫社長

 ソフトバンクグループは孫正義社長が「円高の影響。ドルで見ると(Sprintは)去年(2015年)と今年(2016年)で、売上が減っていないことが分かる」と述べているように、為替の影響で、円立てでの増収は小幅にとどまった。ただし、同社も増収増益は達成。売上高2兆1265億円、営業利益3192億円となり、業績を伸ばしている。KDDIやソフトバンクは、モバイル専業というわけではないため、ドコモと直接的な比較はできないが、それでも3社とも、第1四半期は好調だったとはいえるだろう。

Mobile Eye
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Mobile Eye 上からドコモ、KDDI、ソフトバンクの業績。3社とも増収増益となった

データ利用増や光回線の増加が業績を押し上げる

 3社が順調に業績を伸ばしている要因は、どこにあるのか。モバイル分野に関していえば、3社とも傾向は近い。1契約あたりの収入であるARPUが伸び、光回線とのセット販売が本格化してきたことや、総務省のガイドラインによって定められた「実質0円禁止」が始まった結果、解約率も低下している。その上で、通信料収入以外が増えているのも、3社共通だ。

 スマートフォンの移行が進むと、データ利用が増え、収入が増加する。また、各社ともタブレットなどの2台持ちを推進。ドコモは「今年(2016年)の第1四半期も、変わらない伸びを示している。2台目需要は非常に強いと思う」(吉澤氏)といい、KDDIも「マルチデバイスの推進によってARPA(1ユーザーからの収入)の成長をけん引している」(KDDI 田中孝司社長)。タブレットやWi-Fiルーターなどの2台持ちは、単純な2回線の合計よりもキャリアが得られる収入は低くなるものの、ユーザー1人あたりに換算すれば、収益が増加するというわけだ。

Mobile Eye ドコモのスマートフォン、タブレット利用者は13%増。2台持ちの需要が強いという
Mobile Eye KDDIは、1人当たりの端末数が1.42に増加した

 固定回線とのセット販売では、「auスマートバリュー」でリードしていたKDDIだが、ドコモやソフトバンクも、NTT東西の光コラボレーションモデルを活用し、追随する。その効果は第1四半期の決算にも表れており、ドコモはARPUを130円教え上げる効果があった。「1年目はどちらかというと、フレッツからの転用が伸びていたが、転用はある程度のところで数に限りがある。第1四半期は、新規の割合が増えている」のが、市場を拡大できている要因だ。これまでとの違いは、「(ひかり電話などの)オプションサービスへの加入が増えている」(吉澤氏)ところにもある。

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Mobile Eye ドコモ光のARPUへの貢献も大きくなってきた。オプションサービスによって、契約者当たりの収入も増えている
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Mobile Eye ソフトバンク光も伸び率が高い。伸び悩んでいたソフトバンクの固定ブロードバンド回線も、プラスに転じた

 ソフトバンクは、「解約率が史上最低レベル」(孫氏)という形で効果が表れている。ソフトバンク光の累計契約者数も224万人に上り、「急増している」と孫氏は自信をのぞかせた。ソフトバンクはYahoo!BBなど、他の固定通信事業もあり、単体で見るとユーザー数は減少しているが、ソフトバンク光の押し上げ効果もあったため「累計でも急激に回線が伸びており、モバイルも安定している」(同)状況になった。

Mobile Eye 固定とのセット割やガイドラインの影響もあり、ソフトバンクの解約率は大きく低下した

 一方で、通信収入の伸びには限界もある。各社が付加価値領域に注力しているのも、そのためだ。第1四半期では、ドコモが「スマートライフ領域では、25.7%増の289億円」(吉澤氏)の営業利益があり、dマーケットのユーザー数は6月末で1448万契約となった。「2月、3月は積極的な販売促進をした反動もあり、昨年(2015年度)第4四半期の数字(契約者数)より減少しているが、7月27日時点では1511万と回復の方向に向かっている」(同)と、契約者数も増加傾向にある。パートナーとのコラボレーションを促進する「+d」については、「6月末で66件まで増加した」(同)。

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Mobile Eye スマートライフ領域が伸びているドコモ。+dの取り組みも、成果を発揮し始めた

 KDDIも付加価値領域を広げており、「au経済圏」を拡大する方針だ。「au WALLET Market」や「auでんき」、各種保険サービスなどを立て続けに始めているのはそのためで、「損害保険と住宅ローンは、計画に比べてかなり伸びている」(田中氏)という。au WALLET Marketについては、「au STARとの連携で、秋からもう少し上がってくる」(同)見込みだ。

Mobile Eye
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Mobile Eye KDDIは「ライフデザイン戦略」を掲げ、ショッピングや金融商品など、非通信分野を拡大している

 対するソフトバンクは、投資を強化。海外事業ではSprintを買収し、再建の最中にある。ポストペイドでは17万の純増を記録、フリーキャッシュフローも四半期ではプラスに転じ、「反転のめどが見えてきている」(孫氏)という。アリババ株やSupercellの売却で手に入れた現金を使いながら、CPUの設計を手掛ける英ARMを買収したのも記憶に新しい。ドコモやKDDIとはやや異なるアプローチだが、ソフトバンクも、モバイルの“次”を模索している様子がうかがえる。

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Mobile Eye 売上高ではソフトバンクとSprintの割合が高いが、投資事業も順調。英ARMを買収し、「ソフトバンクの本業はARM」(孫氏)と発言するなど、事業形態を大きく変えようとしている
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