インタビュー
» 2017年03月27日 06時00分 UPDATE

MVNOに聞く:本格展開を開始した「LINEモバイル」 嘉戸社長が語る“ユーザー目線”の戦略 (2/4)

[石野純也,ITmedia]

LINEフリーからコミュニケーションフリーへの移行が速かった

―― サービスインから今まで、何か気づいたことはありますか。想定していなかったことなど、何かあれば教えてください。

嘉戸氏 うーん、なかなか難しい質問で、あまり思い浮かばなかったのですが、想定外だったのはLINEフリーからコミュニケーションフリーへの遷移が速かったことですね。あとは、シンプルにこだわるのはこんなに難しいんだというのはありました。1つのことをやるにも、毎回いろいろなオプションを並べて、最終的にお客さんに見せるものはこれだと決めています。Webページを作ったときの言葉の表現も、お客さんがどういうふうに手に取るかを総合的に考えて入れていますが、作りが難しい。

LINEモバイル LINE、Twitter、Facebook、Instagramの通信量がカウントされない「コミュニケーションフリープラン」

 例えば、MUSIC+を出すときに、LINE MUSICのチケットをバンドルで売るべきという社内の意見も多かったんです。ですが、(MUSIC+のカウントフリーは)将来的に、外部に出すものという意識がありました。そこでチケットが込みだと、他はチケットがなく、(ユーザーから見た際の最終的な)価格が違ってしまう。将来の拡張性を考えると、LINE MUSICのチケットを外すべきとして、無料チケットがもらえる仕組みは入れていますが、Google Playで決済するようにしました。シンプルにどこまでこだわるのかは難しいので、毎回挑戦ですね。

 他には、端末保証もただ出したのではなく、目にしたときにどういうふうな印象を抱いていただけるかが一番大事だと思い、名前1つもすごく考えてもらいました。(LINEモバイルでは、企画を)考えるメンバーは企画者だけでなく、マーケティングチームのメンバーに加わってもらっていて、最終的にどう打ち出すのかまで決めています。

LINEモバイル 現在、MUSIC+プランのカウントフリー対象は同社の兄弟会社が提供する「LINE MUSIC」のみだが、2017年初夏をめどにグループ外の他社が提供する音楽配信サービスも対象に加える予定

―― シンプルにこだわっていますが、今よりプランを減らすということもあるのでしょうか。

嘉戸氏 それはないです。既存のお客さんがいるので、総合的に考えると難しいです。今入っているお客さんはLINEモバイルがよちよち歩きのころからのファンなので、その方々を裏切るようなことはできません。

 ですから、キャンペーンの設計も慎重になっています。新規ユーザー向けのキャンペーンは、どうしても既存ユーザーの損になってしまいます。毎回やるにしても、谷間に落ちるユーザー(キャンペーンとキャンペーンの間に契約してしまったユーザー)がなるべく少なくなるようにはしています。

―― それでいうと、自分もLINEモバイルを契約していますが、キャンペーン情報が公式アカウントに送られてきます。あれは正直……。

嘉戸氏 (筆者の質問にかぶせつつ)それは、変えようとしています! 開発はそれなりに入れないといけないので、少し時間はかかりますが。ただ、追加でお買い上げいただく方と、契約しているからもういらないという方がいて、振り分けが難しいんです。ここは本当に悩ましい。どのくらい開発を入れるかにもよりますが、アンケートを取るかどうか。

 LINEのアカウントはお客さんとのつながりでもあるので、新規向けとどう分けるかは考えていきたいと思います。いっぱい送られてきて、ウザいと思われたらブロックされちゃいますからね。そうすると、大事な情報が来なくなってしまいますし。請求情報とか(笑)。先ほどの質問の答えにもなりますが、気付きというところだが、そういう細かなチューニングをやらなければというのがあります。

店舗展開でユーザーが急増しても通信速度は大丈夫?

―― LINEモバイルは、速度の速さに対するユーザーの満足度が高いと思いますし、それは調査結果でも出ていました。一方で、これからリアル店舗でユーザーが一気に増えると、想定外に増えてユーザー数と帯域のバランスが崩れてしまうということはないのでしょうか。

嘉戸氏 それは大丈夫です。1店舗あたり、何人処理できるかの最大値が決まっているからです。ですから、逆にリアル店舗は読みやすいんです。店員さんがいて、店舗のクルーを処理できる1日の量も決まっています。どんなにやっても「こんなもの」というレンジには収まりますし、実際初日の動向も、予測のレンジ内にありました。Webの方が制限のないこともあって、読みづらいですね。もちろん、例えば(ビックカメラのある)有楽町店はサラリーマンの聖地でもあるので、昼は全然いないのに、夜たくさん来てしまったりということはありますが。

―― なるほど。では、必要な帯域は読みやすいと。

嘉戸氏 ただ、人の数は読めても、その人がどのプランにするかの中身までは読めません。実際、コミュニケーションフリーに行き過ぎてしまったこともあります。これについては、ちゃんとやらなければいけないなと思っています。いかに予測を精緻にするか。チャネルによっては、上位プランを選んでも、実際には使わない人もいて難しいのですが……。こればかりは、やってみないとというところです。

 よく「慎重ですね」といわれますが、それはこういうところにもあるんだと思います。あくまで予測の範囲内に収めておく。そうでなく、あまりにも予想が外れるとわれわれも死んでしまいます。カスタマーサポートも受けられなくなってしまいますし。(サービス開始当初)キャップを決めた(2万契約限定とした)のも、どちらかといえばプレミアム感を出すためではなく、品質をどう保つかのためでした。ユーザーが来なかったら来なかったで悲しいんですけどね(笑)。

―― 確かに、量販店だと場所によっても傾向にバラつきがありそうですね。

嘉戸氏 足元で見ると、音声プランの割合が完全に上ですし、MNPの比率も高い。2日の様子を見ていてもそうですね。

―― 帯域は、どの程度用意しているのでしょうか。予測値の最大で用意していくのも、なかなか大変だと思います。

嘉戸氏 帯域については水物ですね。お客さんからも、「有楽町線が使えない」と連絡があったりしますが、よくよく見ていくとドコモさんの問題だったりもしますから……。

―― 確かに、都内の地下鉄の駅間は、通信量が多すぎるのか、そもそも無線部分の帯域が足りないのか、MNOでも通信できなくなることは多々あります。その意味では、切り分けが難しいですね。

嘉戸氏 特にうちは、MVNEもいるので。今おっしゃったように、基地局側で詰まってしまうと、うちがどれだけ帯域を用意しても難しいですからね。

―― 増強スケジュールなどは決まっているのでしょうか。逐一プレスリリースを出すMVNOもありますが、どの程度増やしたのかが分からないとあまり意味がないような気もしています。

嘉戸氏 うちも月3回はやってますからね。でも、これは当たり前で、やらないといけないことなんです。本当はユーザーに、増強したなんて感じさせない方がいい。そうはいっても気にされる方はいるので、ちゃんとコミュニケーションを取るようにはしていますが。そういうお客さんは必ず混んでいる昼間にスピードテストをやるので、正直やめてほしいのですが(笑)。

―― 確かにスピードテスト、帯域を取りますしね(笑)。

嘉戸氏 mineoのようにオープンにしていこうとしているところもあって、お客さんが求めるところへの情報発信としては、いい取り組みだと思います。

 最終的には、ちゃんといい回線を提供してほしいというのが、ユーザーの願いではないでしょうか。一喜一憂させるようなことをしてはいけないと思っています。

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