新プランで約300億円を還元 6つの領域に注力するドコモの勝算は?石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2017年04月29日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

中期目標を1年前倒しで達成し、増収増益を果たす

 ドコモがこのタイミングでbeyond宣言を出した背景には、2017年度の中期経営目標を、前倒しで達成できたことがある。2014年10月の中期目標では、営業利益8200億円以上の目標が掲げられていたが、2016年度の実績では9447億円とそれを大きく上回った。内訳を見ても、1000億円以上を目指していたスマートライフ領域の利益が、2016年度に1119億円に達しており、業績は回復。次の成長に向けたステップを踏み出す時期が来ていたというわけだ。

ドコモ 2014年10月に発表した計画を、1年前倒しで達成した

 2016年度の決算は、前年対比で増収増益。営業収益は4兆5846億円、営業利益は9447億円で、事業分野別に見ても、通信事業とスマートライフ領域の両方が着実に成長していることが分かる。この数値を支えているのが、スマートフォンやタブレットの伸びで、前年同期比で9%増の3586万に達した。総契約者数も7488万まで伸びている。同時に、解約率も低下し、過去最低水準の0.59%となった。収益面ではドコモ光も貢献。契約数は340万と、前年同期比の2.2倍に増え、1ユーザーあたりの売上を示すARPUにも、250円分上乗せされた。

ドコモ
ドコモ 2016年度は増収増益を達成した。スマートライフ領域も順調に伸びていることが分かる
ドコモ
ドコモ
ドコモ 契約数やスマートフォン、タブレットの台数が伸び、ドコモ光も好調だ

 競争環境が変化したことが、ドコモにとってはプラスに働いているようだ。ドコモは、家族での利用を促進するシェアパックを、2014年に導入。同年、iPhoneもラインアップに加えることで、他社への流出を抑止した。これに加えて、総務省のタスクフォースを経て施行されたガイドラインが、MNP利用を大きく減少させることになる。こうした変化に適応すべく、ドコモは長期利用者優遇を積極的に打ち出してきた。解約率が0.59%にまで下がったのも、そのためだ。新たに導入したシェアパック用のシンプルプランも、狙いはここにあると吉澤氏は語る。

 「ドコモを長くお使いになっている方、ずっとお使いいただいている方で、通話はしないが料金が高くなってしまうというところをフォローし、ドコモにとどまっていただく。そういう事業基盤を確固たるものにすることが、5Gにもつながっていく」

 総務省のガイドラインによって、端末の販売台数が減少することも懸念されていたが、ことドコモに関しては、「ほとんど影響がなかった」(吉澤氏)ことも、追い風になっている。販売台数が微減にとどまったのは、「スマートフォンからスマートフォン、フィーチャーフォンからスマートフォンへの取り換え需要が非常に旺盛だった」(同)ため。解約抑止の戦術が功を奏し、ドコモ内にとどまったユーザーが機種変更し、フィーチャーフォンからの移行も増えてARPUの向上にも貢献する……一連のデータからは、こんな好循環が生まれていることも見て取れる。

 一方で、「MVNOに対しては、競争の一面もあるが、連携、提携していく事業者と思っている」(吉澤氏)といい、契約者獲得の武器になっていることがうかがえる。MVNOの数は、「ドコモに限っていうと、全体の約10%」(同)にまで成長。およそ750万契約ほどのユーザーが、MVNOを介してドコモのネットワークを利用していることになる。MVNOに対しては、「ドコモのサービスを使っていただいたり、MVNO事業者が処理をしやすいよう、顧客システム連携もやらせていただいた」(同)と、協力の姿勢を見せる。

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