横綱・ワイモバイルの背中を追うUQモバイル――家族1480円プランの投入でシェア3割を狙う石川温のスマホ業界新聞

» 2017年06月09日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 6月1日、UQモバイルが夏商戦向け発表会を行った。終了後、野坂章雄社長が囲みに応じた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年6月3日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


―― この発表会が始まる前に、ワイモバイルは家族向けに1回線あたり5000円を還元するキャンペーンを発表したが、対抗する予定はあるか。

野坂社長 「先ほども言いましたが、関脇大関なので、ぜひ前頭にはお手柔らかにお願いします。5000円というのはいままで無料にされていたものが、有料になって、それから引くとか、そのような関係かと直感的に思った。

 今日発表したもので頑張ってみて、それでも厳しければやってみますけど、今日言ったように家族丸ごととか1480円もかなり安いと思っていて、ルーターと一緒に売るというのは家電量販店でも大変だと思っていて、単純に5000円下げて頑張っていくかというと、今の商品をきちんと伝えていきたい」

(★ さすが野坂社長。ワイモバイルの5000円還元は、事務手数料の3000円が無料になるキャンペーンがなくなっての5000円還元ということらしい。なので実質は2000円とのこと)

―― 総務省の資料にサブブランドなどがMVNOの競争阻害の要因にならないか注視するとあったが、総務省の姿勢についてどう思うか。

野坂社長 「我々は総務省傘下でやっている。決められたルールをきちんと守ってやっていく。仮にルールが変わっていくのであれば、従っていく。それがまず一般論で、基本、市場検証は報道ではもしかすると厳しめに書かれているかもしれないが、私が読んだ限りでは非常に公平でイーブンになっている。問題があれば、それは正すという論調だったように思う。あれ自体を読んで変わるとかサプライズとかなかった。きちんと僕らもやっていきたい」

(★ 先日行われた総務省の市場検証会議は中間報告であって、今後、議論がどうなっていくかがポイントになりそう)

―― 料金について※印が多く、複雑になりすぎてはいないか。

野坂社長 「あの※印はあとで読んでいただくと、NTTドコモの例だから、ドコモwithが入っていませんとか、シンプルプランですとか書いているのが多い。UQモバイルは1980円と1480円かける3だから、7420円とか実はUQモバイル側はシンプルだと思っている。他社比較にあるとISP料金があるよねとか、データシェアパックがありますよとかになる。そういうことだと僕は思っていまして、店頭で訴求したときにもシンプルでいきたいと。ルーターが4380円、スマホが1980円、家族は1480円。That’s itという感じがしていて。

 シンプルさが我々のポイントだと思っていて、ドコモさんと戦っていく上で、あちらはいろいろ知恵を出されて、長く使えば安くなるとか、家族で使うと安くなるとか、いろんな意味で、総務省が推奨されている競争促進としてもあるのかなと思う」

(★ プレゼン資料でドコモを例に出して比較すると、同じ条件に揃えるために※印が増えるってことね)

―― ワイモバイルと戦っていく上で、auショップを借りるといったことはしないのか。

野坂社長 「それは考えていません。社員にはもっと知恵を出せと言っていてね、ケータイショップを1000店舗作らないとやれない時代なのかどうか。これだけSNSとか流行っている時代なのに。確かに1県に1店舗欲しいというのは事実だが、100店から1000店にするのは絶対にないと思っている。従って、ここは分かれ道で、我々も汗かきながら、皆さんの評判を聞いて、口コミで広げられないかなというのを考えていて、まさにこれから我々の真価が問われるところ」

(★ 確かに店舗を大量に構えたところで足かせにしかならない。都心部に効率よく出店するのが無難だろうな。MVNOのなかには出店を増やしているところも多いけど、店員の教育なども大きな負担になるだけに長続きするかは微妙かも)

―― CMで知名度があがったが、どこで買えばいいのかということにはならないのか。

野坂社長 「その声は聞こえます。主婦の方は量販店にあまり行きたくないという声も聞こえたりする。そうすると次に出てくるのがショップだったりする。UQモバイルの直販はウェブと電話でやっている。これも結構、イケている。電話番号、ウェブサイトにどうやって行き着くかと思ったときに、コマーシャルがなぜ重要かというと、認識しなきゃアクセスもしない。認知、理解、行動と言ったときに認知をあげたのは最も重要なこと。でも、それは必要条件であって充分ではない。発表会などをすることで理解してもらえる。

 最後は動くと言うことだが、そこにはもうちょっとパッションがないと、わざわざ行って買わない。そこを推すことを考えている」

(★ 主婦がウェブサイトでスマホを契約するというのはハードルが高いしなぁ)

―― iPhoneとAndroidの販売比率はどうなっているのか。

野坂社長 「国内メーカーのAQUOSやDIGNO、iPhoneや中華系といったときには、4とか5で割ったパーセンテージがきれいに分布している。4機種、5機種で100を割ると、20ずつになるといったイメージ。多少、出っ張りはあるけども、それから考えると、iPhoneとAndroidの比率がわかるのかな。それはちょっとラフな言い方ですが」

(★ ワイモバイルに比べると、iPhoneの比率が小さいような。でも、売る側としてはそれでもいいのかも)

―― あるサブブランドはiPhoneが4割でAndroidが6割と言っていたが。

野坂社長 「我々がサブブランドと僕自身は認めたことはないが、神学論争で毛嫌いするつもりもないが、UQモバイルとWiMAXの会社だと思っています」

(★ ワイモバイルはiPhoneで注目を浴びつつ、ちゃんとAndroid Oneを売っているのが賢いところ)

―― ワイモバイルはテレビ通販を使っているが、UQモバイルでも新しい販路を開拓したりしないのか。

野坂社長 「リアル店舗、ネット、もう一個、なんかあったりするかもしれませんね。ああいう通販の世界は、先方がお強い世界なので、なかなか我々が簡単に入り込むわけにもいかない。ただ、仰るとおりで第三の道を探せと言うことだと思います。なにかいいアイデアをいただければと思います」

(★ auも一時期、テレビ通販を使っていたはずだけど、いまはやっていないのかな)

―― 直営店での獲得が進んでいると言うが、全体ではどれくらいの割合になるのか。

野坂社長 「さきほど申し上げたとおりで、60、70店舗作ってきたので、確実に伸びています。ただ、100かけるNだから、そんなにシェア(量)は獲れていなくて、やっぱり量販店が相当なところを占めています。

 それプラス、ウェブとか電話とかの直販、それから一部併売店でソフトバンクもauもUQもあるよといったところ。量的には量販店がかなり多い。第2、第3の道を見つけないといけない」

(★ ケーブルテレビのJ:COMは訪問販売に強かったりする。MVNOとしても、独自の販路を確保するというのが重要なテーマになってきそう)

―― 消費者庁で格安スマホへの相談が増えているとあったが、UQモバイルでの苦情はどういったものが多いのか。

野坂社長 「UQモバイルにはあまり苦情はないと思っていて、フリーテルさんがああいうことがあったじゃないですか。まさに我々だけでなく、業界全体として、格安だからダメなんだとか、言われないようにしないといけない。UQモバイルが品質を考えているのはまさにそこなんですよね。カスタマーサポートも含めて、クレームが来ないようにすると言っているつもりですし、何かあればすぐに改めていく。

 いまのところ、私のところに聞こえてこないと言うことは、そんなに悪い評判はないのではないか」

(★ ルーターでの実績もあるし、そのあたりの対応は問題なさそう)

―― auからのMNPの条件が緩和されたと思うが、その影響はあったのか。

野坂社長 「答えは言えませんということになるのだけど、あまり変化はないかという気はしている。(比率も)それはさすがに(いえません)」

(★ 何か裏がありそうな答え方だな)

―― 最初の1年は安いが、それ以降は値上げというのは今後も変わらないのか。

野坂社長 「体力というテーマもあって、ドコモさんはずっと割引というのがあるじゃないですか。一方、UQモバイルは今のようなものが基本。それが2年目になって、競争条件によって違ってくることもあるかもしれないが、やっぱりUQモバイルというのはそういう立場」

(★ ドコモも、他のMNVNOも「サブブランドの2年目が狙い目」といっているだけに、将来的にここが弱点になってきそう)

―― データ容量も恒常的に2倍にしていかないのか。

野坂社長 「いま、キャンペーンの位置づけにさせてもらって、2GBとか6GBとかが定着する可能性もあって、そのあたりはmineoさんじゃないけど、データ容量でサービスしていくという選択肢はあると思う。いまはキャンペーンのままで行こうと思っている」

(★ とはいえ、キャンペーンを辞めて容量を戻すという選択肢もないだろうに)

―― ワイモバイルがサービス面を強化しているが、UQモバイルとしてそのあたりをてこ入れする可能性はあるか。

野坂社長 「いずれそういうことはあると思うが、いまのUQモバイルの位置づけは半年前からやって、前頭何枚目からちょこちょこ上がっている段階。まずはID数を増やすとか、リアルタッチ以外のチャネルを増やすとか、そういうフェーズだと思っている。

 そこで2段階、3段階先のEコマース的なところまでは、いまのUQモバイルの実力的にはまだ早いようにも思う」

(★ 確かにそのあたりはUQモバイルには求められていないと思う)

―― 家族割を展開して囲い込むとKDDIのほうから待ったがかかったりしないのか。

野坂社長 「調整とかは一切していなくて。結構、インパクトありますかね。UQモバイルは獲りに行く側ですから、それは親だろうが、アレだろうが、やっぱり獲っていくということはあると思います。あまり変なことを言うと怒られそうなので」

―― 親はIDのカウント数にMVNOを含めてきたが。

野坂社長 

「みなさんが指摘することもあって、最近、距離的にはそういったことはない」

(★ とにかく、ドコモユーザーをワイモバイルに行かせるのではなく、いかに奪うかがUQモバイルのミッションかと)

―― KDDIの付加価値サービスを載せていくということはないのか。

野坂社長 「いまのところはないですね」

■取材を終えて

 毎回、指摘しているし、今回は質疑応答でも突っ込まれていたが、UQモバイルの戦略は、かなり「ワイモバイルの後追い」という印象が強い。今回の家族割引も結局はワイモバイルをまねしているだけに過ぎない。

 UQモバイルは、表向きはMVNOという立場であり、サブブランドではないのだから、もっと個性を出して勝負すればいいと思う。

 野坂社長はワイモバイルのことを「横綱」に例えるが、横綱と相撲で勝負しようとするから最初から勝ち目がなくなってしまう。

 横綱に将棋で戦いを挑むくらいの奇策が必要なのではないか。

© DWANGO Co., Ltd.

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