これ1つでかなりイける──WiMAX対応無線LANルータ「AtermWM3300R」使いこなしガイド“WiMAX Speed Wi-Fi”レビュー(5/5 ページ)

» 2010年07月22日 11時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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アップデートで接続性も大幅改善、無線LAN/USB接続ともに安定した高速通信

photo ファームウェアアップデートは自動チェック後に実行できる。また本体インジケータによる通知も行われ、本体のボタン操作だけでファームウェアアップデートも可能。同種の他製品にはなかなかない機能だ

 WM3300Rは2009年11月の発売から半年以上が経過した機器だ。

 発売初期のファームウェアは、高速移動時のハンドオーバーに時間を要してしまう若干の課題があった。送受信能力に問題があるわけではなく、移動して一度接続が途切れると、電波が届いているにも関わらずインターネットへの再接続に時間がかかるという症状だ。これは、ファームウェアアップデートの度に少しずつ、そして2010年3月に提供された「ファームウェア2.0.0」でほぼ問題ないほど改善された。

 WiMAX基地局密度の向上やネットワーク側の改良も進んだ相乗効果と思うが、発売ほやほやだが不安定な機器と違い、メーカーやユーザーのフィードバックで改善された「安定」「安心」の項目を備えているのもポイントだ。

 では、過去(発売直後)に検証したことのある場所を含め、改めて移動中の接続性を確かめよう。

 検証はFTPで常時受信してデータの流れを確認しつつ、WM3300Rの状態表示インジケータでWAN側の接続状態を視認しながら行った。区間は首都圏・JR京浜東北線の大森駅−赤羽駅間とJR埼京線の赤羽駅−大崎駅間だ。

 結果は、JR京浜東北線区間は浜松町−新橋駅間で1度データ受信が途切れたものの、きちんとハンドオーバーに成功してデータ受信もほどなく再開。日暮里駅−西日暮里駅間と東十条駅−赤羽駅間でも切断があったが、それぞれ30秒ほどできちんと再接続された。JR埼京線区間も、赤羽駅−十条駅駅間で1度切断、原宿駅−渋谷駅間でも1度データ受信が途切れたが、それぞれハンドオーバーに成功してデータ受信は継続できた。この区間における列車内での利用は、“ほぼ大丈夫になった”と評価したい。

 切断されたのは複数の路線が並走したり複雑に交差する場所で、切断時は本機のアンテナ本数表示は「なし」になった。電波が届いているのにハンドオーバーできなかったわけでなく、基地局密度が充分でなかった場所といえる。

 過去の検証時は、データ受信が途切れなかったのは都心エリアの新橋駅−神田駅間程度で、切断が発生すると1〜2駅区間まるまる再接続ができないことも珍しくなかった。2010年7月現在、WiMAX基地局の密度が大幅に向上して“つながる”ようになった事実とともに、本機のハンドオーバー能力が確実に向上したことを実感した。

 では通信速度はどうか。WM3300Rのアンテナ表示が3段階で2本となる東京23区西部の某場所で、窓から2メートルの机上で使用すると、無線LAN接続、USB接続ともに余裕で下り10Mbps、上り2Mbpsを超えた(USB接続の方が受信速度で1割ほど高速だったが)。さらに窓際に置くと、下り13Mbps、上りも4Mbpsほどまで速度が向上した。こちらは比較的電波状態の良好な場所における一例ではあるが、モバイルWiMAXの速さや快適さがいかんなく発揮された結果といえる。無線LANを経由することによるロスも、大きく気になるレベルにはない。

 同じく、WM3300Rへ2台のPCをIEEE802.11gで接続してFTPでファイル転送を行ってみた。こちらはコンスタントに1Mバイト/秒を記録した。つまり、1クライアントあたり8Mbpsほどの通信速度が確保され、無線LAN区間スループットは最低でも16Mbpsほどの実力があることになる。IEEE802.11gは(無線LANチップ固有の高速化機能を用いない限り)スループットの上限は1台のクライアントが占有した場合で20Mbpsほどとされている。後継機種にはより高速なIEEE802.11n接続がサポートされるのを期待するが、無線LAN間の通信速度も充分実用レベルにあると評価できる。

屋内でモバイルWiMAXを徹底活用する人向けの新機種「AtermWM3400RN」も登場

photo AtermWM3400RN

 屋内(AC電源がある場所)でモバイルWiMAXをガッツリ使いたい人向けとなる新モデル「AtermWM3400RN」も2010年7月下旬に登場する。

 WM3400RNは、WM3300Rの小型ボディはほぼそのまま(厚さのみ34ミリと、少し厚めになった程度)に、無線LANがより高速なIEEE802.11nに対応し、有線LANポート(100BASE-TX対応)も1つ搭載する。固定ブロードバンド環境がない家庭(引っ越し直後で固定回線を引いていない場合なども含む)や、あっても速度が遅いユーザー、あるいは無線LAN機器がないデバイス(デスクトップPCやネットワーク対応AV機器など)を接続したい場合にお勧めだ。


無線LANルーター部の安定感も魅力の「WiMAX対応小型無線LANルータ」

photo

 2010年7月現在、バッテリーで動作するWiMAX対応モバイル無線LANルータはすでに4製品が登場している。これらと比較した場合を含めて本機の大きな魅力を上げるとすると、ここまでに上げた無線LANルーター部分の機能充実に加え、Atermシリーズならではの安定感が挙げられる。「らくらく無線スタート」に対応する家庭用ゲーム機などでまったく問題なく接続できることはもちろん、WPA/WPA2-PSKでの接続で機器によって相性問題が生じることもあるとされるiPhone/iPod touch、iPadもまったく問題なく利用できた。これら以外にも10台ほどのスマートフォンとのなんらトラブルのない無線LAN接続を確認している。

 本機は発売からすでに半年以上が経過していることもあり、サイズ、バッテリー動作時間などでは後発製品に若干見劣りする部分は確かにある。ボディサイズに関しては少し厚みがあることから薄着のシーズンに衣服のポケットに入れて運用するのは少し無理がある。もっともこちらは、バッグやポーチに収容しておくなら困らないわけだが。

 バッテリー動作時間に関しても、純正の予備バッテリーが比較的入手しやすく、自己責任で使うならモバイルバッテリーとの併用でかなり便利になる。さらに細かいが、電源スイッチがスライド式なので、ポケットやバッグに入れたまままでも手探りで容易かつ確実に操作ができるのが、使ってみると分かっていただける部分だと思う。

 このほか、3段階のWiMAXアンテナ表示機能もポイントが高い。モバイルWiMAXの電波状況に不安のある場所で利用する場合、例えば喫茶店に入る前に「WiMAX OKか否か」を判断するWiMAXチェッカーとしてかなり役立ってくれる。

 モバイルWiMAXのスピードと快適性、コストパフォーマンスやシンプルな契約・料金体系のメリットとともに、PCはもちろん、携帯ゲーム機やiPhone/iPadなどでも使える利便性、そして安定・安心感を兼ね備えた本機は、無線LAN対応のモバイルデバイスユーザーにとって「1つ持っておくと、確実に便利」な完成度の高いポータブル無線LANルータである。



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