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» 2009年11月05日 07時30分 UPDATE

Symbian Exchange&Exposition 2009:ボードメンバーが語るSymbianの“メリット”と“課題”

SymbianがOSをオープンソース化すると発表してから1年4カ月。Symbianの課題や期待をテーマに、新たなSymbian OSの開発を主導するボードメンバー6社のキーパーソンが参加するパネルディスカッションが開催された。

[末岡洋子,ITmedia]

 Symbian Foundationが10月27日から2日間にわたって開催したイベント「Symbian Exchange&Exposition 2009」で、ボードメンバー6社のキーパーソンを招いたパネルディスカッションを実施した。Symbianが同社のOSを非営利団体Symbian Foundationの下でオープンソース化すると発表してから約1年4カ月――。Symbianを採用する携帯電話メーカーや通信キャリアもさまざまな変化を経験しているようだ。

 ディスカッションには、新たにボードメンバーに加わったばかりの富士通で経営執行役員常務を務める佐相秀幸氏、NTTドコモ移動機開発部長常務理事の三木俊雄氏、英Sony EricssonでSymbianソフトウェアトップ・ゼネラルマネージャを務めるベン−アーム・モリン(Bengt-Arme Molin)氏、英Vodafoneでターミナル製品・技術担当ディレクターを務めるマッツ・スバード(Mats Svardh)氏、米Texas Instrumentsベースバンド事業部担当副社長・ゼネラルマネージャのピエール・ガルニエ(Pierre Garnier)氏、Nokia技術マネジメント担当副社長のデビッド・リバス(David Rivas)氏が参加した。

sa_psym01.jpgPhoto NTTドコモ移動機開発部長常務理事の三木俊雄氏(左)と富士通経営執行役員常務の佐相秀幸氏(右)

sa_psym03.jpgPhoto Nokia技術マネジメント担当副社長 デビッド・リバス(David Rivas)氏(左)と英Sony Ericsson Symbianソフトウェアトップ・ゼネラルマネージャ ベン−アーム・モリン(Bengt-Arme Molin)氏(右)

Photo パネルディスカッションにはSymbian Foundationのボードメンバー6社のキーパーソンが参加

オープン化のメリット、デメリットは

 Symbian Foundationは、これまでプロプライエタリだったコードをオープンソースとして少しずつ公開しているところだ。メンバー企業にとって、「オープン」とは何を意味するのか。

 Vodafoneのスバード氏は、「プラットフォームの開発が容易になる」と述べる。消費者のニーズや好みが細かく分かれる携帯電話では、土台部分がオープンになることで柔軟性が増し、ひいてはそれが開発コストの低減にもつながる。通信キャリアという同じ立場の三木氏(NTTドコモ)は、ソフトウェアだけではなく、サービスやコンテンツの面でもメリットがあると見る。「これまで日本の市場は、通信キャリアの主導の下でユニークな成長を遂げてきた。オープン化により世界レベルでの貢献が出てくることに期待している」と述べ、オープン性とエコシステムに期待を寄せた。

 エコシステムは、富士通の佐相氏やTIのガルニエ氏もメリットに挙げている。佐相氏は「きちんと機能しているエコシステムにアクセスできる。これは大切だ」と述べ、メンバー間で補完し合う関係を構築できれば、と期待する。「Linux Foundationなどオープンソースの経験は十分にある。これをSymbian Foundationでも活かしたいと思っている」(佐相氏)

 Nokiaのリバス氏が「誰でも参加でき、活動には透明性がある」点を評価する一方、Sony Ericssonのモリン氏が「どのような機能が加わるのか見通しが立ちにくいというデメリットもある」と本音をのぞかせるなど、課題の一端もかいま見えた。

 オープンプラットフォーム特有の課題としては、プラットフォーム実装のサポート、異なる資産やツールの統合、開発者の支援などが挙がった。

 Symbian端末の「iモード」の今後について問われたNTTドコモの三木氏は、「既存のエコシステムやソフトウェア資産、サービスをSymbian資産ベースのオープンプラットフォームに移す。どうやってシフトするかがとても重要な課題」と述べた。三木氏は「現実的な問題として、現在のiモードサービスを新しいプラットフォームでも維持する必要がある。セキュリティなどの現在の機能がSymbian Foundationのプラットフォームにも継承されることが重要」とし、場合によってはSymbian上でのiモードの提供が難しくなることも示唆した。

 一方、まもなく「360」という新サービスを開始するVodafoneは、開始時にSymbianを含む複数のプラットフォームを採用すると述べた。360は、携帯電話のアドレス帳と「Facebook」を統合するなど、サービスを縦断的に統合することで高い利便性を提供するもので、対応機は既にSamsungが「LiMo」を土台とした端末を発表している。

「分断化は克服すべき課題」とドコモの三木氏

 SymbianにはS60、UIQ、MOAPという3種のインタフェースがあり、分断化が懸念されている。オープンソース化に向け、インタフェース部分はS60をベースに統一されることが決まったが、今後も分断化は起きる可能性がある。

 Nokiaのリバス氏は、地理的な事情などからやむを得ない場合もあるとしながら、「その場合、分断化により(アプリケーションやサービスなどの開発)対象から外れることを認識しておく必要がある。分断化による代償と分断化によるメリットを比較して意思決定する必要がある」と述べる。「端末メーカーはAPIを追加するなど分断化につながる動きを促進すべきではない。オペレーターは差別化の要素となるAPIを追加する場合、よくよく考えるべきだ。差別化という魅力はあるが、端末開発コストやアプリケーションなどの負の要素も大きいはずだ」(リバス氏)

 一方でリバス氏は、端末メーカーが標準に縛られることで、画面サイズや入力手段(ソフトキー/ハードキーなど)など、デザインのバリエーションを狭めるような事態は防ぐべきだという見方も示している。「デザインはイノベーションが生まれる場だ」とリバス氏。ここでは、プラットフォーム側で差別化による違いを吸収する機能を提供できるとして、クロスプラットフォームのUI開発ツール「Qt」への期待を示した。SymbianはQtのライブラリを一部統合する計画としている。

 ドコモの三木氏は、「分断化は克服すべき課題」と強調する。「iモードはドコモが1社で主導したため互換性を確保できたが、Symbian Foundationは世界レベルであり、互換性を保証する高度なシステムが必要」とし、互換性にフォーカスした活動を展開できるコミュニティも助けになるとした。

 リバス氏は最後に、“厳しすぎない適度な統制、互換性のテスト、アーキテクチャレベルでの対応”という3つの対応策を挙げ、「(ベンダーやオペレータは)分断化につながるステップを取る際には、開発者への影響を考えてなるべく自制すべき」と念を押した。

Symbianの強みはエコシステムとソフトウェア資産

 スマートフォン市場でのSymbianのシェアは減少しており、Androidなど別の新たな選択肢が登場している。Android端末を投入しているNTTドコモの三木氏は、プラットフォームで重視するのは、「品質、オープン性、機能、エコシステムのサイズ」と述べ、これを満たすプラットフォームであれば採用の対象となるという。「最終的には消費者の選択だ」。Symbianのユニークさについては、「すでに製品が市場にあり、その上で動く通信キャリア主導のアプリケーションがあり、これにオープンさが加わった。この長所を活用したい」と述べた。

 2002年からSymbian端末を提供する富士通は、かなり明確な形でSymbianへの支持を表明した。「LinuxやWindows Mobileも視野に入れてはいるが、ほぼ独占的にSymbianを選択している」と佐相氏。その理由として、「ファイルシステムやセキュリティがしっかりしていること、ソフトウェアの資産が大きいこと」を挙げ、「最も大きいのは、将来の方向に向かってFoundationのメンバーが透明性を持ってリードをしていることだ」と続けた。

 独占的にSymbianを採用しているNokiaは、約2カ月前に「Maemo」を搭載した新しいスマートフォン「Nokia N900」を発表した。リバス氏はNokiaでS60を担当してきたが、Maemo採用について、「Symbianでは難しかったビジネスモデルを試すことができる。Nokiaに新しいチャンスをもたらす」と説明する。しかし、主要なプラットフォームはこれまで通り、Symbianになるという。「Symbianは将来のモバイルを定義するプラットフォームを構築するという重要なミッションを果たしている。われわれはSymbianに大きな投資をしている」(リバス氏)。今後はミッドレンジを積極的に拡大するとした。

 またリバス氏は「家電業界の傾向として、ソフトウェアの複雑性が増している。Nokiaはソフトウェア開発に大きくフォーカスしている」とし、Nokiaでは今後、自社ソフトウェアにおけるオープンソースの比率を増やしていくという。

 Symbianがスタートした開発者向け支援サービス「Symbian Horizon」については、参加したボードメンバーの全員が期待を寄せている。Sony Ericssonのモリン氏は、開発者がSymbianアプリケーションをリリースするための単一のソースがあることは、端末メーカーやエンドユーザーにとってもメリットがあるといい、同様の意見はVodafoneやNokiaからも聞かれた。Sony EricssonはHorizonに対応する自社のアプリケーションストア「Play Now arena」でSymbianアプリを提供する計画だ。

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