インタビュー
» 2010年01月01日 10時00分 公開

新春インタビュー:2010年以降、スマートフォンとケータイは近づいていく──NTTドコモ 辻村氏に聞く(前編) (2/2)

[神尾寿,ITmedia]
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モバイルビジネスの裾野を拡大する「iコンシェル」

ITmedia 2009年はスマートフォンが注目を浴びたとともに、従来型の携帯電話の世界でも、「おサイフケータイ利用の広がり」や、行動支援型サービス「iコンシェル」の普及など、新たな時代を感じさせるトピックスも多数ありました。

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辻村氏 おっしゃるとおりです。おサイフケータイとiコンシェルは広く普及し、ドコモにとっても戦略的なセグメントになっています。

 まずiコンシェルですが、こちらはオートGPSを搭載し、位置情報と行動支援を組み合わせたサービスになりました。私はiコンシェルは、iモードのような(重要なプラットフォームとしての)発展をしていくと考えています。

ITmedia iコンシェルのコンテンツも増加し、実際に利用していても「便利だ」と実感するシーンが増えました。

辻村氏 サービスの普及やコンテンツの増加を見ていても、(iコンシェルは)iチャネル以上のペースです。しかし、iコンシェルはまだ完全ではありません。現在のコンテンツはどちらかというと全国向けのサービスが多いのですが、iコンシェルが真価を発揮するのは(ローカル性の高い)「地域密着型のコンテンツ」です。まだまだ(iコンシェル上のビジネスが)発展していく余地は多くあるのです。

 iコンシェルは今のところテキスト情報が中心ですが、今後は画像や動画の活用といったマルチメディア化も考えています。そうするとパーソナル性とローカル性を兼ね備えた新たなメディアとして発展する可能性が高い。

ITmedia そうなればARPU向上にも貢献しそうですね。

辻村氏 ええ、データARPU向上ではBeeTVなど動画配信のアプローチがあり、これらも成功していますが、私は(iコンシェルの)生活支援型サービスでも定額制加入率向上と上限額までの利用促進ができると考えています。ユーザー1人1人が便利だと感じていただける、こうした生活密着型サービスを充実させる。その結果として(ドコモの)データARPUも向上するというのが重要です。

ITmedia その方向性で考えますと、私が最近のドコモで戦略的に重要だと考えているのが、(デジタル地図サービス会社の)ゼンリンデータコムへの出資です。行動支援や生活密着を考える上で、地図とナビゲーションは最もベーシックな機能になります。ドコモが“デジタル地図を取り込み”、その上でiコンシェルのサービスを強化させているのは、将来に向けての重要な取り組みだと見ています。

辻村氏 そのとおりです。地図・行動支援・位置情報の3つを我々は戦略的にサービスに取り込んでいますが、それはドコモが(次のフェーズで)重視する生活支援に結びついているからです。

 むろん、エンターテインメントのコンテンツも20〜30代を中心としたお客様向けには重要なのですが、今後はもっと幅広く、多くのお客様にモバイルインターネットのサービスを使っていただきたい。そう考えますと、生活支援のコンテンツやサービスが使いやすく提供されることが大切なのです。その1つの答えであり取り組みが、iコンシェルなのです。

リアル連携で実現する新たなビジネス

ITmedia おサイフケータイはいかがでしょうか。

辻村氏 これまでおサイフケータイというと、電子マネーや交通ICというイメージだったのですが、2009年から「リアルとの連携」で幅広く使われるようになってきました。さまざまなサービスやビジネスで、リアルとの接点が作れる。いわば、橋の役割をするのがモバイルFeliCaチップなのです。

 このリアルとの連携は、生活支援型サービスにおいてとても重要です。iコンシェルでもトルカの活用をしていますが、おサイフケータイとiコンシェルは対になっていると言えます。

ITmedia iコンシェルが登場したことで、おサイフケータイの活用領域が広がったのは確かですね。特にトルカ更新はCRMの在り方を変えてしまうポテンシャルがある。

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辻村氏 ええ、そしてこういった「リアルとの連携」はPCではできません。ネットブックなどモバイルノートPCでもできないでしょう。行動支援サービスのiコンシェルと、おサイフケータイを対で持っているケータイだからこそできるものなのです。

ITmedia 特におサイフケータイは、今のところiPhoneでもまねできていない領域ですね。そして、ほぼ確実にスマートフォンも、(非接触ICを用いた)リアル連携の世界観を取り入れることになる。

辻村氏 それがNFCなのかどうかは情勢を見守らないとわかりませんが、スマートフォンも非接触ICを取り入れていかないと、リアル連携のサービスに進めません。この方向性は(世界のトレンドとしても)確かだと思います。スマートフォンも、リアルと結びついていかなければダメなのです。なぜなら、リアルと連携できることが、(PCインターネットに対する)モバイルインターネットの大きな可能性ですから。

ITmedia GoogleがAndroidでモバイルに進出してきたのも、彼らが「リアルとの連携」を重視してきたからです。そう考えると、非接触ICはGPSに並んで、リアル連携の重要な要素技術と言えます。

辻村氏 私はよく講演などで「鳥の眼、蟻の眼」という話をするのですが、Googleがこれまでやってきたのは“鳥の眼”の世界なんです。膨大な情報を俯瞰し、目的の情報を見つけるという意味で。一方の“蟻の目”は、ケータイの世界ですね。非常に低い位置にあるのですが、ミクロで(利用者にとって)重要な情報を提供するのです。

 この“鳥の眼”と“蟻の目”はどちらが優れているというものではなく、今後は連携し、対になっていくものです。

(後編に続く)

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