Movidiusは9月30日、携帯端末向けのビデオプラットフォーム「Myriad 3D」に対応したチップセット「MA1133」を発表し、製品開発者向けのサンプル出荷を開始した。
MA1133は半導体とソフトウェアがセットになっており、メーカーがスマートフォンをはじめとする携帯端末に採用することで、ユーザーは撮影した静止画や動画を3Dに変換できる。720×1280ピクセルのHD動画の3D変換にも対応しており、高品質な3D動画を手軽に作成できる。チップのサイズは8×8ミリ、価格はドルベースで1桁になる予定。同社はスマートフォンのほかに、タブレット端末、デジタルフォトフレーム、ポータブルマルチメディアプレーヤー、ノートPCなどへの搭載を見込んでいる。
なお、Myriad 3Dはソフトウェアで3D変換する技術なので、裸眼で3Dコンテンツを閲覧可能にするには、メーカーは専用の「オートステレオスコピック・ディスプレイ」を搭載する必要がある。同ディスプレイを使わず、3D眼鏡で対応することも技術的には可能だが、ユーザーの利便性を考えると現実的ではないだろう。
同社最高経営責任者(CEO)のショーン・ミッチェル(Sean Mitchel)氏は「テレビの分野では3Dが定着しつつある。カメラでは3D対応のカムコーダも登場し、ポータブルゲームの分野でも3D対応製品(ニンテンドー3DS)が発表されており、3D効果が市場に浸透しつつある」と話し、携帯端末にも3D化の波が来ていると考えている。
ミッチェル氏が考える携帯端末にMyriad 3Dを採用する最大のメリットは、「撮影した静止画や動画の3D化」で、さらに豊かなユーザー体験をもたらすと同氏は期待する。ケータイに備えた2つのカメラで撮影した画像や映像をリアルタイムかつ自動で3Dに変換できるほか、既存コンテンツの3D化にも対応。さらに、HDMI接続をすることで、変換した3Dコンテンツのテレビ出力もできる。
Myriad 3Dで3Dコンテンツをスムーズに生成できる技術は、Movidiusが開発した高品質なアルゴリズムが基盤になっている。3Dコンテンツを長時間見ていると、目が疲れたり気分が悪くなったりといった“3D酔い”が起きやすい。この問題は、Myriad 3Dの「収斂(れん)アルゴリズム」を用いることで解消できる。また、高品質な3D素材を作成するには、左右のカメラレンズの整合性を取る必要があるが、Myriad 3Dの「修整アルゴリズム」により、美しい3Dコンテンツを作成できる。このほか、変換した3D素材のホワイトバランス、明度、色調の自動調整にも対応している。
3Dコンテンツというと、ディスプレイから画像や映像が飛び出して目の前に迫ってくるというイメージが強いが、Myriad 3Dでは被写体が後方に下がって見える“奥行き感”も表現できる。カメラ撮影時にズームをする感覚で、「+」を押すと前方へ、「−」を押すと後方へ被写体が下がって見える。奥行き感を出せるようにしたのは「前方へ飛び出る3D映像よりも目が疲れず、長時間の視聴に適しているから」とミッチェル氏は説明する。
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