これに対して、日本通信がb-mobile4Gに対応する最初の通信サービスとして発表した「カメレオンSIM」は、ユーザー自らが、サービスメニューから通信サービスを選び、毎月プランを変更できる点を、もっとも大きな付加価値として訴求している。
カメレオンSIMは、パッケージ販売されるSIMカードで、音声サービスはなく、データ通信専用となっている。開通後21日間、3Gバイトまでのデータ通信容量が「フラット 3W」として提供されており、価格は5800円だ。初期試用期間中は、通信速度の制約はない。
この期間に、自分がどのぐらい通信を利用するのかを確かめ、利用頻度に合わせて“後から”料金プランを選択する。しかも選択したプランは1カ月ごとに見直しが可能だ。途中で気が変わったり、生活スタイルが変化すれば、再契約することなく自由に料金プランを選び直せる。プラン変更はWebブラウザで専用サイトにアクセスして行う。
サービス開始当初のプランは以下の3つ。
・U300定額
おなじみの最大300Kbps、月額2480円のサービス。3G向けのU300とは異なるAPNを用いており、またLTE接続時は遅延が少ない(レイテンシが低い)ため体感速度はかなり速くなるとのこと。
・高速定額
速度制限なしで30日間、もしくは5Gバイトまでを5400円で利用できるプラン。
・Fair 1GB
速度制限なしで120日間、もしくは1Gバイトまで8800円のプラン。IIJmioよりも容量単価は高価だが、より長い期間で使い分けることができる。
料金設定のポイントが異なるため、IIJmioと単純に比較することはできないが、NTTドコモからの仕入れ価格には差はないと考えられる。あとはプラン設定と料金などのバランス(そしてもちろんオペレーションコストの削減)で、異なる特徴を引き出しているわけだ。
もし月ごとの利用にムラが多いなら、Fair 1GBが容量単価という面でも良いだろうし、U300 1Mとフラット 1Mを月ごとに切り替えたい人もいるかもしれない。
日本通信は以前から「通信サービスをBTOで提供したい」と考えており、今回の商品はその第一歩とのことだ。ただし不満な点もある。それは月ごとにしか契約を変更できない点、それにFairのメニューが1つしかない点(期間と容量を選べればベストだろう)の2つ。失効期限が短くても容量単価が下がる方がいいという人や、3日間だけ高速定額で使いたいという利用者に対応できれば、“通信のBTO”はより魅力的になる。
日本通信COOの福田尚久氏は「システムの設計としては1日単位でも切り替えが可能。しかし、課金方法の問題がある。基本契約はU300定額だが、オプションの購入で1日高速になるといったメニューは将来、提供したい」と話していた。
また、料金プランも上記の3種類以外に、ニーズや利用者の使い方を見ながら、随時追加していくとのことだ。契約し直さなくとも、ベースとなる料金プランを随時選び直せるため、将来、新たなサービスが開始した時にも初期投資をしなおす必要がない。
このように単価としての安い、高いよりも、自分の使い方に合ったプランを選べるのが、MVNOを利用する最大の利点だ。ドコモのXi端末にはSIMロックがなく、音声サービスが使えないことを除けば、IIJmioでもb-mobile4GでもSIMカードを挿入すればデータ通信部分は利用できる。
ところが、ドコモのほとんどのXi端末には現在、APNロックがかかっている(全機種を調査したわけではない)。これはXi端末だけでなく、FOMA端末でも同じだ。APNロックとは、特定のAPN(データ通信時のアクセスポイント)に接続する時をのぞいて、機能を制限すること。具体的にはドコモ以外のSIMを挿入すると、テザリング機能がメニューからなくなってしまう。
特定のAPNとは、ドコモ自身が提供しているmoperaのみなので、IIJmioやb-mobile4GのLTE対応SIMカードを装着した時にはテザリングができない。いくらSIMロックはかけていないといっても、APNで機能制限をかけるのでは意味がない。総務省とドコモ、それに日本通信で、APNロック解除に向けた話し合いがされているとのことだが、現時点で結論は出ていないという。
今はまだ音声サービスが利用できるLTE対応サービスがMVNOから販売されていないため、大きな問題にはなっていない。しかし、音声サービスのメニューも追加されるようになれば、手持ちのXi端末をMVNOのサービスで使う人も出てくるだろう。MVNOのSIMカードに入れ替えたら、それまで使えた機能が使えなくなる、なんてことがあると、(どちらに有利・不利という話は別にして)消費者にとって不利益だ。
通信サービスのあらゆるニーズに、今回紹介した二社のサービスが完璧に対応できるわけではない。MVNOの選択肢が拡がるには、APNロック問題は解決していかねばならないだろう(そもそもAPNロックで機能を自由に制限できるなら、MVNOの受け入れ義務を定めている意味がない)。
もっとも、APNロックの問題はドコモのスマートフォンだけに限ったものではない。ケースバイケースで、テザリング用APNを設定しているのに、APN名が保存できなくなっているものもあるという。このようなことでは、本来SIMロックをなくす目的だった“通信サービスと端末の分離”にはならない。
ところでコラムの趣旨とは離れるが、カメレオンSIMと同時発表された「b-mobile4G WiFi2」にも触れておきたい。
この製品、LTEと3Gに対応したモバイルWi-Fiルーターだが、とにかく薄くてコンパクト。本体の半分ぐらいはバッテリーだ。容積は55ccしかなく、97グラムと軽量。Wi-Fiのスリープ機能を使えば、連続待受時間は約150時間で、連続通信時間はLTEで5時間、3Gで6時間となっている。当然、SIMロックはかかっていないので、LTE対応のモバイルWi-Fiルーターとして、他社のSIMカードも利用できる。前述のIIJmioでも利用できるはずだ。
ただし、Wi-Fiスリープ機能の実装方法が気になったので、要望がてらここに記しておきたい(なおこれは発表会で貸し出された機材で検証したものなので、製品版では修正されている可能性もある)。
それはスリープからの復帰についてだ。b-mobile4G WiFi2では、Wi-Fiスリープ機能をオンにしていると、指定時間を超えて通信が行われない場合、Wi-Fiがオフになって待受時間を延長する。最近のモバイルWi-Fiルーターにはよくある機能だ。復帰させるには手動での操作が必要になる。
スリープからの復帰は、鞄に手を入れて、サクッとすぐに実行できればいいのだが、本機の場合、WPSボタンを3秒以上押し続けなければWi-Fiスリープから復帰しない。誤動作を防止するための措置なのだろうが、WPSボタンや電源ボタンを問わず、ボタンを押せばスリープから復帰、あるいはせめて1秒以内の長押しで復帰してほしい。
さらにUSBポートから電源が供給されている場合でも、Wi-Fiスリープが働いてしまう問題もある。外部から電源が供給されているときは、Wi-Fiスリープが働かないよう改善してほしい。また外部から電源が供給されたら、その時点で自動的にスリープを解除するような親切もほしいところだ。
とはいえ、これらはファームウェアで比較的簡単に対処できるはず。今後のアップデートに期待しよう。
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