米国カリフォルニア州のサンノゼにある“カリフォルニアシアター”。ここは由緒ある劇場であるとともに、Appleが2004年に「iPod」のU2バージョンを発表した思い出深い場所でもある。その地に、世界中から多くの報道関係者、そして通信キャリアをはじめとするパートナー企業の幹部が詰めかけた。今年3月の「新しいiPad」から始まり、15インチのRetinaディスプレイを搭載した「新世代 MacBook Pro」、そして「iPhone 5」と矢継ぎ早に新製品をリリースしてきたAppleが10月23日、さらなる新製品を発表する。その期待と興奮が、カリフォルニアシアターの客席を埋めつくした関係者の間を熱気となってうずまいていたのだ。
筆者はこのカリフォルニアシアターで行われたメディアイベントに参加し、「iPad mini」を始めとする今回の新製品を実際にこの手で触る機会を得た。ポストPC時代を推進し、IT業界のトレンドを牽引するAppleが、どこまで飛躍を果たすのか。現地リポートとともに、それを考えてみたい。
プレスイベント開始早々、壇上に上がったApple CEO(最高経営責任者) ティム・クック氏が、直近のビジネスの好調ぶりを話す。
まず、2012年9月に発売した「iPhone 5」の販売実績は最初の週末で500万台を超え、記録的なスピードで売れているという。また、iPhone 5に合わせてリリースされたiOS 6へのアップグレードは、すでに2億台が行っており、新OSへの移行が順調であることを紹介した。
そして、もう1つ。今年の大きなトピックスとなっていたiOS 6とOS X Mountain Lionによる「シンプルでシームレスな連携」(クック氏)も、成功を収めている。Documents in the Cloudでは1億2500万ものドキュメント連携が行われている。またOS Xでも利用可能となったiMessageは、送信回数が30億件に達するなど利用が順調に伸びているという。iMessageは1秒間あたり2万8000通も処理されており、Apple製品同士のコミュニケーションサービスとして着実に成長している。
クラウドサービスやアプリ関連の現況もアップデートされた。AppleのソーシャルゲームプラットフォームであるGame Centerのアカウントは1億6000万を突破。iCloudの新機能の1つであるシェアードフォトストリームの利用数も早々に700万件に達したという。iOSのアプリ登録数は70万件となり、その中で「27万5000のアプリが、iPadに最適化されたアプリだ」(クック氏)と強調した。
また、ここでiBooksのバージョンアップについても紹介があり、本の内容の一部を引用してTwitterやFacebookで共有するシェア機能などが紹介された。さらに対応言語の追加の中で日本語の縦書き対応についても触れられた。周知のとおり、日本におけるiBookstoreはいまだ始まっていないが、今回のキーノートを見るかぎり、サービス開始はそう遠くない時期に行われそうである。
基調講演の冒頭からビジネスの概況を公表していくのはAppleの十八番であるが、今回の数字を見ていくと、Appleが個々の製品カテゴリーの成功から、OSプラットフォームの連携を高めて“マルチデバイス分野で成功している”ことが分かる。もともと強かったアプリのエコシステムはさらに強固になり、クラウド分野の各種サービスや、ソーシャルサービスの取り込みといった面でも、ライバルを上回るスピードで進化・成功している。たとえ特定の製品カテゴリーのハードウェアスペックでApple製品を上回ることができても、総合力ではApple製品に勝てない。その状況が変わらないばかりか、ライバルをより強く引き離しにかかっていることが、様々な数字から垣間見えてくる。
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