インタビュー
» 2015年01月21日 08時50分 公開

MVNOに聞く:LTEの接続問題、SIMロック解除義務化、無制限プランと価格競争――IIJにMVNOのアレコレを聞く (2/2)

[田中聡,ITmedia]
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SIMロック解除の義務化はバラ色ではない?

堂前氏 キャリアが販売する端末のSIMロック解除の義務化がニュースになっていますけど、我々としては、バラ色になるとは思っていません。基本的に歓迎ではありますが、何もかもがあれで解決するとは思っていないですし、また新しい課題を背負ってしまうという気持ちも実はあります。

 キャリア向けに販売されているものは、キャリア用アプリや設定画面があることもありますし、例えばソフトバンク版は周波数がドコモと違います。そのへんを理解して使うのならいいですけど、例えば今、ソフトバンクのAndroidスマートフォンを使っている方がMVNOに移れるかといえば、(周波数帯が違うので)必ずしもそうではない。それをどうご案内するかは、受け入れる側のMVNOの対応になってくるので、なかなかこれは大変そうだなと。

回線と端末は分けて提供するのが基本スタンス

―― そのSIMロックフリー端末のセット販売は、どこまで積極的に行っていきますか。

堂前氏 ビックカメラの店頭とか、販路によってはセットにすることもありますが、完全にセットにすることはないですね。IIJは回線と端末は分けて、選択肢は残しておこうというのが基本的なスタンスです。

―― IIJオリジナルスマートフォンなどが出ると面白そうです。

佐々木氏 ニーズがどこまであるのかが難しくて、iPhoneで使いたいという方が一定数いらっしゃる中で、「僕らのスマホをセットで買うとお得ですよ」と言うのは正常なことではないかなと。それは僕らに期待されている役割ではないのかなという思いもあります。僕らとしては、できればメーカーさんとは水平分業でやっていきたい。メーカーさんから端末を買って、川の上流から下流に流れるように、SIMをセットして下流に流していくという方が、新しいコラボレーションのやり方かなと。やらないとも思わないですけど、やるとしても、ごく一部じゃないですか。

ボトルネックとなる相互接続を重点的にテスト

―― IIJさんは、どのように通信品質をテストしているのでしょうか。

大内氏 実際の端末を使って通信品質を図っています。スピードテストを定期的に実行しているイメージだと思っていただければと。

―― 「RBB TODAY SPEED TEST」のように、平均値を取るのとも違う?

大内氏 それに近いのですが、それを24時間PCでまわしています。これを運用することで、我々のサービスの品質が分かります。ただ、スピードテストをしてしまうと、大量のデータが流れてしまうので、そこはある程度制限して、あまりスピードを出しすぎずに、一定の品質を保っているかをチェックしています。

―― 調査員が出向いて調べているわけではないのですね。

大内氏 ではなく、弊社のオフィスで計測用の端末を設置して行います。

堂前氏 MVNOだと、ドコモとIIJの相互接続が一番のネックなので、地域を広げて、全国10箇所でやるとかはあまり意味がないんですよ。人間がやるのでなく、自動化して定量的なデータを取れるように考えています。

―― テスト端末はスマートフォンですか?

大内氏 USBモデムで測っています。モバイル端末ですと、何かしらアプリも入れないといけないので、そこを省くためにモデムを使っています。

堂前氏 キャリアさんだと、トータルで電波の部分や有線の部分もありますけど、我々は、相互接続部分がボトルネックになっていることが分かっているので、それ以外のところは条件を固定しています。「こういう結果が出るからIIJはいいんです」というよりも、「こういう考え方で我々は調べている」というのを(IIJmio meeting 6では)ご紹介します。

堂前氏 24時間やっていると、波が見えてくるんですよね。以前のIIJmio meetingで、IIJのルーターからトラフィックの波が見えているとご紹介したことはありますが、それが利用者側の立場になったときに、どう体感が変わってくるのか――。その両方も示せるのはとても面白いのかなと思っています。

―― クーポン(高速通信)をオンにした場合と、オフにした場合の両方を調べているのでしょうか。

大内氏 今は両方調べています。

―― 2014年10月1日に容量を増加しましたが、その前にシミュレーションもされていますよね。

佐々木氏 過去に容量を増やしてきたときの結果があるので、どれぐらい設備を増強しないと、容量増加がまかなえないのか、という計算はしています。いろいろなソースからお客さんのトラフィックがこれぐらい増えると予測して、それをもとに設備増強をしてサービスを拡張しています。

―― 設備増強とは具体的に何をしているのでしょうか。帯域を増やすというのもあると思いますが。

佐々木氏 必ずしも帯域だけではなく、交換機の収容能力を設計することも含まれます。例えば、ある特定の装置が落ちたときに、特定の装置でトラフィックのすべてを迂回(うかい)して運べるようにしています。あるいは、障害から回復したときに、全国のお客様がいっせいに接続しようとしてきたときに、裏側のクーポンを管理する仕組みや、接続を制御する仕組みとか、どれくらいのレートに耐えられるという設計など、多岐に渡ります。お客様に一番お分かりいただけるのは、ボトルネックになっているキャリアさんとの接続点の帯域だと思います。

無制限プランを「やってほしくない」という声も多い

―― 他社が提供している容量無制限プランはどう見ています?

堂前氏 面白いなーとは思いますけどね。

佐々木 IIJは品質が期待されていると思っていますので、「IIJが無制限プランを出しました。でも、500kbpsしか出ません」というのは、お客さんからは許していただけないと思っています。「やってほしい」「やってほしくない」など、いろいろなお声はいただいています。

堂前氏 「やってほしくない」という声が、「やってほしい」という声と同じぐらい挙がっているんですよ。

佐々木氏 無制限にしてどれぐらい設備増強をしないと今の品質を維持できないのか、その品質を維持するためにコストがどれぐらいかかるのかを、内部でシミュレーションして、勝算があればやりますし、なければ僕らが踏み込むべきサービスではないと今は思っています。競合他社さんの状況や、今後のMVNOのお客様のニーズがどう変わっていくのか、そういうことは広く調査をして検討していかないといけないと思っています。

 我々には法人のお客様もいらっしゃいますし、「IIJの品質はいい」「安心してキャリアから乗り換えられるよね」という声もいただいているので、そこを無視したサービス、他社がやったからやるという決断は、今までもしてこなかったですし、これからもないと思います。

―― 「楽天モバイル」の料金プランはIIJをモデルにしているようです。

佐々木氏 光栄ですよね。僕らが業界のベンチマークになっていくというのは大事なことだと思っています。僕らがベンチマークになって皆さんが僕らのサービスを少しでも超えていかれる、目標にされるというのは非常に光栄なことだと思っています。

 そうされても、「やっぱりIIJのサービスがいいよね」と言われたいですね。(データ容量の)繰り越しやクーポンのオンオフ制御とかは、多くのMVNOがまねをしきれていないところだと思っています。トータルで見たときに、小手先で10円安いとか、0.1Gバイト多いとかではなく、「IIJいいよね」「品質もいいよね」と言って選んでいただけることが、僕らの一番のこだわりです。

―― 価格競争をするつもりはないと。

佐々木氏 やはりサービスを改善をするからには、他社よりも(安くする)というよりも、僕らがお客さんにどんなバリューを提示できるかだと思います。10月に2Gバイト、4Gバイト、7Gバイトもに増量したのも、ほかのMVNOさんがこうだからというのではなくて、キャリアと僕らを比較して、このスペックでないと、お客さんに「SIMフリーiPhoneでMVNOどうですか?」とは言えないという思いから踏み切りました。

 最終的には僕らとお客さんの間だと思うんですよ。10円下げることをお客さんは願っていないと思うので。それよりも、IIJらしいこんなサービスを作ってほしいという思いを受け止めて、それに対して回答を出していきたいと思っています。

取材を終えて

 「現時点で無制限プランをやる予定はない」というコメントを聞いて、安心した人も多いのではないだろうか。IIJmioの通信サービスは筆者も使っているが、普段使いでドコモの通信サービスと遜色のない通信品質だと感じる。しかし、無制限プランを導入したことで品質が下がってしまっては元も子もない。まずは品質ありきで、そこをクリアしたうえでユーザーの声に応えていこうという姿勢には好感が持てる。

 データ容量の増加以降は目立ったニュースが少ないIIJmioだが、通信量の繰り越しや高速通信のオン/オフなど、もともと使い勝手の良いサービスだし、プランも3種類と必要十分。やみくもに改定する必要性がないのだろう。「端末とSIMカードは別々で」というスタンスは賛否が分かれるだろうが(端末付きの選択肢を提示してほしい人もいるはず)、今後もユーザー目線でサービスを提供し続けてほしいと思う。

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