その競争力を強化するため、先に述べたようにソフトバンクモバイルは、ワイモバイルやソフトバンクテレコム、ソフトバンクBBを合併して4月から新体制に生まれ変わる。合併の効果を、孫氏は次のように語る。
「今まで、ネットワークはあえてバラバラになっていた。早く1社にネットワークは統合していく。会計だとかそういうところも統合して、無駄なコストを削減し、ネットワークの効率をよくする。しかし、営業においては、ワイモバイルというブランドは継続する。ワイモバイルというブランドで料金もサービスも別のものとする」
ネットワークはソフトバンクモバイルに一本化するといい、ワイモバイルはサブブランドとして、MVNOに近い形で運営していくことになる。それによって、従来よりコストを削減するというのが孫氏の目論見だ。とはいえ、それはコストの削減という“防戦”で、積極的に攻めるソフトバンクの姿勢があまり見えてこない。
新サービスとして、ソフトバンクはNTT東西の光コラボレーションモデルを活用し、「SoftBank光」やセット割を開始するが、こちらについても「結果は様子を見てみないと分からない」と冷静だ。孫氏の話からは、KDDIの「auスマートバリュー」にキャッチアップするためのサービスというニュアンスすら伝わってくる。
「今まではKDDIさんが固定の無線のセット割を積極的にやれる立場にあった。それに対して、ドコモさんと我々も固定のセット割が始まる。我々が1社だけiPhoneを持っていたときは、差別化になっていたが、今は3社に(iPhoneが)ある。固定と無線のセット割も、今まではKDDIさんが差別化の要因として持っていたが、今度は3社にセット割があるというのが置かれた状況」
孫氏はやや引いた視点でSoftBank光やセット割の状況を語っており、そこからも差別化の難しさが伝わってくる。2020年に向けての取り組みを問われた際も、「鉄塔を建てるなど大きな設備投資の山は越えたが、新規技術には積極的に取り組んでいく。技術のソフトバンクといわれるように、しっかり頑張っていきたい」と述べるにとどまり、具体像は語られなかった。
決算会見では、インターネット事業の投資成果も強調されていたが、むしろそちらの方が生き生きしていたほどだ。挑戦について問われた孫氏は、次のように熱を込めて語っている。
「今はインドやインドネシア、周辺国が急激に、初めて本格的なインターネットの普及を迎えつつある。PCを買うには高すぎる、固定回線でのBBにはネットワークが弱い。それらの国々はインターネットの進化から少し取り残されていた。しかしモバイルが進化しスマホが安価に、しかも高性能で手に入る時代がきたため、突然インド、インドネシアの国々にインターネット改革が訪れている。挑戦すべきところに挑戦するのがソフトバンクの流儀」
通信事業は手堅く守りを固めつつ、上位レイヤーで新たな市場を取っていくというのが、今のソフトバンクの方針といえるのかもしれない。
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