均一化するドコモ、au、ソフトバンクの冬モデル――差別化のポイントは?石野純也のMobile Eye(9月29日〜10月10日)(1/2 ページ)

» 2014年10月11日 00時35分 公開
[石野純也,ITmedia]

 新製品、新サービスの発表が相次いだ9月29日から10月10日の2週間。トップバッターとなったのがNTTドコモで、同社は冬春モデルとして、スマートフォン7機種、タブレット2機種、フィーチャーフォン4機種、ルーターやスマートウォッチなどのその他製品を3機種発表した。これに対し、ソフトバンクモバイルは翌日の10月1日に同社初のXperiaシリーズとなる「Xperia Z3」を発表。iPhone同様、3社が同じグローバルモデルを取り扱うこととなった。

 また、キャリアとは別の軸で見ると、10月6日にはファーウェイ・ジャパンがSIMフリーのフラッグシップモデル「Ascend Mate7」を発表している。今回の連載では、これらの新製品を取り上げ、冬商戦の動向を掘り下げいきたい。

派生モデルで差別化するドコモ、ウェアラブルの取り組みも

 ドコモの冬商戦は全16機種。「docomo select」として周辺機器扱いで発売されるサムスン電子の「Gear S」まで含めると、計17機種を取り扱う。スマートフォンだけでは7機種なので、一時期より数は減ったものの、バリエーションは豊富だ。全機種に共通する取り組みには、VoLTEやハイレゾオーディオの再生に対応し、ルーターは下り最大225MbpsのLTE Advancedに対応する。

photo 9月30日にドコモは新商品発表会を開催。会場にはCMキャラクターを務める堀北真希さん、渡辺謙さん、石原さとみさんもゲストで登壇した
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photophotophoto スマートフォンは全7機種。左上から「Xperia Z3 SO-01G」「Xperia Z3 Compact SO-02G」「GALAXY Note Edge SC-01G」「GALAXY S5 ACTIVE SC-02G」「ARROWS NX F-02G」「AQUOS ZETA SH-01G」「Disney Mobile on docomo SH-02G」

 7機種というラインアップを展開するドコモだが、スマートフォンはキャリアごとの差別化がしにくく、他社と横並びのモデルが少なくない。冬春モデルでは、Xperia Z3がドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社で取り扱われることになり、iPhone同様、Xperiaもフラッグシップは横並びになった。GALAXY Noteの最新モデルである「GALAXY Note Edge」も、ドコモとKDDIの2社から発売される。形状や機能はキャリアごとに違うが、シャープのフラッグシップモデルという点では、「AQUOS ZETA」もドコモならではとは言いにくい。

photophoto ソフトバンク初となるXperiaの「Xperia Z3」。グローバル版のデザインを尊重したかった担当者の思い入れもあり、背面のNFCマーク(本来はFeliCaマークが入る)までそのままとなった。MNPで実質0円になるなど、価格でも攻めの姿勢を見せている(写真=左)。au版の「GALAXY Note Edge SCL24」(写真=右)

 これに対して、ドコモはグローバルモデルの派生機を用意し、差別化を図る。その1つが、Xperia Z3のコンパクト版ともいえる「Xperia Z3 Compact」。2013年冬モデルの「Xperia Z1 f」とほぼ同じサイズだが、狭いベゼルを採用したことでディスプレイは4.6型に大型化した。カメラやCPUなどのベースとなる機能は、フラッグシップのXperia Z3と同等だ。

 GALAXYについては、MIL規格に準拠したモデルの「GALAXY S5 ACTIVE」を用意。ドコモに欠けていた耐衝撃性能を備えるスマートフォンだが、性能は夏モデルトップクラスの「GALAXY S5」とほぼ同等で、普段使いにも十分な端末に仕上がっている。また、「ARROWS NX」や「Disney Mobile on docomo SH-02G」も他社にないスマートフォンといえるだろう。

 「オススメは全モデル」と述べていたドコモの代表取締役社長 加藤薫氏だが、そのコメントとは裏腹に、端末ごとの価格差は明確につけられている。中でもXperia Z3 Compactは、「新規、機種変更、MNPがすべて実質3万円程度」(ドコモ関係者)と他のモデルより平均すると一段安い金額が設定されている。新規が1万円台半ばのDisney Mobile on docomo SH-02Gを除くと、他のモデルは新規でも4万円後半〜6万円後半。加藤氏は「さらなるキャンペーンが入ると実質0円になる機種もある」と語っていたが、Xperia Z3 Compactに力を入れた販売施策になっていることがうかがえる。

photo 「オススメは全モデル」と語る加藤氏だが、一方ではキャンペーンでの実質0円を視野に入れた機種も存在する

 とはいえ、Xperia Z3 CompactやGALAXY S5 ACTIVEはあくまでメーカー主導で開発したスマートフォン。海外でも、ほぼ同じモデルが販売されている。実際、Xperiaも過去にはドコモが半独占的に取り扱っていたが、その後KDDIも発売を開始。Xperia Z3では、ソフトバンク版も加わり、三つ巴の戦いになっている。日本では苦戦を強いられているGALAXYをソフトバンクが取り扱うかは未知数だが、Sprintとの共同調達を始めている同社にとって、GALAXYは魅力的な端末。2社での販売実績次第では、サムスンもソフトバンクへの供給を開始せざるをえなくなるだろう。グローバルで販売される端末をベースにした調達だけで差別化を図るのには、限界がある。

 KDDIが「isai」や「HTC J butterfly」を、ソフトバンクが「AQUOS CRYSTAL」を共同で開発しているのも、こうした背景があるからだ。逆に言えば、ドコモのスマートフォンには独自色が薄い印象を受けた。もちろん、他社にはXperia Z3 CompactやGALAXY S5 ACTIVEのような端末はないが、KDDIやフトバンクモバイルのように、端末のオリジナリティに対するこだわりはもう少し見せてほしかった。

 端末が均質化する一方で、ドコモとしてはサービスレイヤーで特色を出していきたいという思惑もある。発表会で、NTTと東レが開発した「hitoe」を用いたサービスや、ウェアラブル端末の「ドコッチ」に時間を割いて説明していたのもそのためだ。ドコモは「スマートライフのパートナーへ」をスローガンに掲げており、新領域への投資を積極的に行っている。スマートフォンと連携し、着るだけで心電、心拍数を計測できるhitoeもその1つ。トレーニングをサポートするアプリとして有名な「Runtastic」と共同でアプリを開発し、ウェアは「C3fit IN-pulse」としてスポーツ用品でおなじみのゴールドウィンが販売する。

photophoto NTTと東レが開発したhitoe。シャツから直接心電、心拍を取れる素材で、取ったデータはBluetooth経由でスマートフォンに転送する。サービス化をドコモが担っており、アプリの「Runtastic for docomo」を12月にサービス開始する

 子どもが身に着けることを想定した「ドコッチ」も、新たな領域へのチャレンジとして開発された腕時計型の端末。端末自体はHuaweiが開発しているが、その名称からも分かるようにドコモ肝いりの製品と見てよさそうだ。温度、湿度センサーや加速度センサーを活用して、子どもがどのような状態なのかを検出。親がネット経由でそれを確認でき、場合によってはSMSなどで連絡を取ることもできる。もちろんGPSにも対応していて、「イマドコサーチ」で居場所も検索可能だ。

photophoto 身に着けた子どもの状態を検知する「ドコッチ」。親はスマートフォンなどで、様子を確認できる

 新料金プランとして導入された「デバイスプラス500」を使って既存の回線にひもづければ、サービス使用料と合わせても月780円で利用できる。元々こうしたウェアラブル端末やM2M用として設定されたデバイスプラスというプランを、うまく生かした格好だ。当初は子ども向けとして開発されたドコッチだが、加藤氏が「シニア層への利用拡大も検討していきたい」と語っているように、反響次第では、より広い年齢のユーザーに向けて提供される含みも残されている。

下り最大225MbpsのLTE Advancedを年度内に導入、まずはルーターから

 ネットワークの競争にも、拍車がかかっている。ドコモは2014年度内にLTE-Advancedを導入。具体的には、2GHz帯と1.5GHz帯を15MHz幅ずつキャリアアグリゲーションで足し合わせ、最大225Mbpsの速度を実現する。東名阪では1.7GHz帯(1.8GHz帯)も活用し、800MHz帯の10MHz幅を足すことで合計30MHz幅にして、同様に下り最大225Mbpsを実現する。

photophoto ドコモは4つの周波数帯で合計60MHz幅をLTEに活用している。これらをキャリアアグリゲーションで束ねていく方針

 このほか、発表会では触れられていなかったが、2GHz帯と800MHz帯のキャリアアグリゲーションも実施する予定。こちらの合計帯域幅は25MHz幅となり、下りの最大速度は187.5Mbpsとなる。現時点ではKDDIがキャリアアグリゲーションを導入したことで150Mbps対応のエリアを拡大しており、1.7GHz帯の20MHz幅で150Mbpsを実現しているドコモに差をつけているが、ドコモもキャリアアグリゲーションを導入することで巻き返しを図る。

 また、加藤氏が「さらに高速な受信時262.5Mbpsを体感していただくために、丸の内のドコモラウンジにそのコーナーを設置する」と述べていたように、同エリアにはピンポイントで35MHz幅の帯域を用意するようだ。加藤氏も「速いLTEは私どもが一番最初」と自信をのぞかせる。

 一方で、「いち早くお届けしたい」(加藤氏)という理由から、当初提供されるのはルーターのみとなる。冬春モデルの発表会で披露された「Wi-Fi STATION」の2機種がその対象モデルだ。「Wi-Fi STATION HW-02G」はHuawei製、「Wi-Fi STATION L-01G」はLG製で、前者は卓上ホルダでWi-Fiの電波を増幅する機能が、後者は4880mAhの大容量バッテリーが特徴となる。

photophoto LTE-Advancedは、LGエレクトロニクス製とHuawei製、2つの「Wi-Fi STATION」から利用可能になる

 スマートフォンが非対応となっているのは、「作り込みに時間がかかっているため」(加藤氏)だという。ただし、グローバルモデルを見渡すと、すでにCategory6対応で下り最大300Mbpsまで速度が出るスマートフォンも登場しており、導入が不可能だったわけではなさそうだ。実際、ドコモから端末を発売しているサムスン電子も、海外ではGALAXY Note EdgeのCategory6対応モデルを展開する予定だ。

 もちろん、海外とはLTEの周波数帯が異なり、しかもドコモは異なる3パターンのキャリアアグリゲーションを始める予定。こうしたことから、スマートフォンの導入にはやや慎重になっているのかもしれない。まだ気が早いが、2015年の夏モデルでLTE-Advanced対応機種を一気にそろえ、ドコモとして差別化を図っていく可能性もありそうだ。

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