富士通は5月18日、2015年夏商戦で発売する携帯電話の発表会を開催した。今回発表されたのは、いずれもNTTドコモ向けの機種で、虹彩認証と非接触通信技術「TransferJet」を世界で初めて搭載した「ARROWS NX F-04G」、Androidを採用したフィーチャーフォン「ARROWSケータイ F-05G」の2つの新機種と、2014年夏モデルとして発売済みの「らくらくスマートフォン3 F-06F」の新色(エアーブルー)の計3機種。
発表会に登壇したのは、富士通の執行役員 モバイルフォン事業本部長 高田克美氏と、東芝の執行役常務 セミコンダクター&ストレージ社 統括技師長 早坂伸夫氏の2名。高田氏は3機種の説明を、早坂氏はF-04Gに搭載されているTransferJetに関する説明をそれぞれ担当した。また、キャンペーンでコラボレーションするアイドルグループ「アップアップガールズ(仮)」によるトークショーも合わせて開催された。
高田氏は「富士通は、これからもお客様に新しい価値、喜びを含めて、良い商品を、力いっぱい(ユーザーに)提供していく」と宣言したうえで、市場状況と、それを受けた富士通の取り組みを説明した。
スマホ市場では、Android端末への需要が一定の規模感をもって推移する一方、フィーチャーフォン市場も2013年度を底に、今後も堅調な需要があるという見通しを示した上で、今後もスマホ・フィーチャーフォン双方に新商品を継続して投入する考えを表明した。
その上で、重要になるのが他社との差別化だ。高田氏は、富士通が持つ「ユニバーサルデザイン技術」「通信・ネットワーク技術」「センシング技術」「セキュリティ技術」の4つの技術で革新(イノベーション)を起こし、それをユーザーにとっての使いやすさにつなげる「ヒューマンセントリックイノベーション」という考え方を示した。より幅広いユーザーに使いやすさを提供することを、富士通端末の差別化の軸に据える。
スマホは短いすきま時間に使うことが多く、「思った瞬間にすぐ(やりたいことが)できることがとても大事」という高田氏。そこで、ARROWS NX F-04Gは“一瞬”の心地よさをコンセプトに開発されたという。とりわけ、スマホで世界初搭載となった虹彩認証「Iris Passport」と、非接触高速通信「TransferJet」には注目したい。
Iris Passportは、約0.6秒で認証を完了できる。1秒もかからないので、感覚的には“一瞬”だ。それでいて、他人受入率(他人の虹彩で認証を通過してしまう確率)が約10万分の1と、個人ユースの認証システムとしては高精度であり、安全性にも配慮している。富士通の部品実装技術とセキュリティ技術が、Iris Passportの“一瞬”を支えている。
TransferJetは、リッチ(大容量)なコンテンツが増えていく中で、「Wi-Fi(無線LAN)では転送に時間がかかる」という要望に応えて搭載したものだ。100Mバイトのデータを約4秒で転送できる。こちらも、Wi-Fiと比べると“一瞬”と言えるスピードだ。
フィーチャーフォンを使っているユーザーは、電池持ち、文字の見やすさ、音声の聞きやすさ、文字入力のしやすさといった、携帯電話としての基本機能を重視している。一方で、最新のコミュニケーションツールはスマホを前提にしていて、フィチャーフォンユーザーが“蚊帳の外”というケースも少なくない。そこで、「(フィーチャーフォンやスマホで)培ってきたノウハウをふんだんに詰め込んで」(高田氏)開発されたのが、ARROWSケータイ F-05Gだ。
F-05Gは、携帯電話としての使いやすさを追求した上で、最新のコミュニケーションツールとして「LINE」を使えるようになっている。LINEは一部操作を方向キー横のファンクションキーで行えるようにしてあったり、サブディスプレイで新着通知を表示できたりと、富士通独自のカスタマイズが施されている。
らくらくスマートフォン3 F-06Fには、8月上旬に青磁(せいじ)をイメージした新色「エアブルー」が追加される。この新色には、VoLTEによる高音質通話・ビデオコール機能とドコモメールが初期搭載されているほか、ワンタッチダイヤル機能の改善で、ダイヤルボタンにアイコンを配置できるようになっている。これらの新機能・改善は、7月下旬予定のソフトウェア更新で、既存の3色にも提供される。
今回の発表会では、「誰にでも使いやすい携帯電話を作りたい」という富士通のメッセージが強く伝わってきた。ここ1、2年の富士通のスマホを使っていると、ソフトウェア更新の少なさを始めとして、端末をとにかく“ていねい”に作ろう、という思いをさまざまな面で感じる。「良い商品を、力いっぱい提供する」というフレーズは、その自信の表れであると同時に、これからも、良いスマホ、良いケータイを作っていく、という意思の表れでもあるはずだ。
今後、その「良さ」をいかに広げられるか。富士通の今後の奮闘に期待したい。
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