スマホのSHARPが作るロボット電話「RoBoHon」――発熱の課題を乗り越え、新しい世界を切り拓けるか石川温のスマホ業界新聞

» 2015年10月16日 08時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 今年のCEATEC、ソニーや東芝、NTTドコモなどが出展を取りやめ、盛り上がりに欠けるかと思いきや、シャープのモバイル型ロボット電話「RoBoHon」の登場に度肝を抜かれてしまった。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年10月10日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。


 6日のプレスデーでシャープが新しい通信機器分野に参入する記者会見を開くと案内があったのだが、場所はもちろん幕張であり、午後にminoeが記者会見を開催するとあって、正直、シャープの会見に行くかどうかかなり迷っていた。しかし、前の週に広報さんから「石川さん、絶対に来てください!」という熱いラブコールを受けたので、何とか時間をやりくりして幕張に行ってみた。そうしたら、予想を遙かに超えるRoBoHonの登場で胸が熱くなってしまった。

 ここ最近、シャープといえば、リストラや液晶部門を売却する、しないといった暗い話ばかりが続いていた。実際、シャープでお世話になった複数の人から、シャープを辞めるというメールをもらったばかりだったりもした。

 しかし、RoBoHonを見て、「他が作らないものを作る」というシャープの魂を見た気がして、嬉しくなってしまった。RoBoHonを作れるのはスマホをやっているシャープだからこそである。

 本来ならば、アイボをやり、Xperiaも手がけるソニーがやるべき製品ジャンルのような気もするが、他社に先駆けてシャープが発表した意義は大きいだろう。

 ただ、CEATECで発表するのには相当、シャープ社内でも苦労したようだ。

 実際、発表の2週間前まで、まともに歩くことができず、ロボットとして機能していなかったようだ。通信機器に関してはシャープとしてノウハウはあるものの、まさかロボットの二足歩行の技術までは持ち合わせていない。

 だが、シャープはかつてMDプレイヤーなどを手がけており、モーターを制御する技術などは持っていた。そうした音楽プレイヤーの技術を生かし、さらに制御部分をイチから設計し直すことでなんとかまともに歩くことに成功したようだ。

 商品企画をしている人たちを見ると、かつてスマホを担当していた人ばかりであり、当然のことながら「スマホの人たちが作っているロボット」という製品に仕上がりそうだ。そのため、コミュニケーション部分に関しては、期待しても良さそうな雰囲気がある。

 これまで電話は「タッチパネル」というユーザーインターフェースであったが、RoBoHonにより「会話」という操作体系でコミュニケーションをとる時代がやってくるかも知れない。

 発売は2016年前半を目指すという。シャープの長谷川祥典コンシューマーエレクトロニクスカンパニー社長が「RoboHonを開発したのは技術誇示ではなく、お客様に提供するため」と言い切ったのは、本当に嬉しかった。

 ここからは予想となるが、発売するにあたっては、キャリア向けというよりも、MVNOのSIMカードを使えるようにするのではないか。価格も、シャープとしてはユーザーからの意見を聞いている段階ではあるが、現実的な路線を考えると、10万円台前半あたり、14万8000円といった値付けが妥当なのではないだろうか。

 心配な点としては熱対策だ。人間らしい動きをするにはサーボモーターを一生懸命に動かす必要がある。さらに通信をするためにクアルコムのチップを採用している。また頭部にはプロジェクターを内蔵するなど、熱の発生する部材が盛りだくさんなのだ。

 可愛い動きをしつつ、熱をいかにコントロールするかが、RoboHon成功のカギを握りそうだ。

© DWANGO Co., Ltd.

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