「arrows M02」が「想定以上」に売れた理由は?――富士通に聞く、SIMフリー市場への意気込み:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/2 ページ)

» 2016年02月08日 19時38分 公開
[石野純也,ITmedia]
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 海外メーカーが先行していたSIMロックフリースマートフォン市場だが、MVNOの拡大を受け、日本メーカーも続々と参入を果たしている。日本市場で培ったおサイフケータイや防水などの機能を売りに、いわゆる“格安スマホ”と差別化を図っているのが現状だ。arrowsシリーズを展開する富士通も、その1社だ。

 同社は、シニア層でも使いやすいUI(ユーザーインタフェース)を搭載した「ARROWS M01」を、2014年12月に「イオンスマホ」として投入。「楽天モバイル」や「NifMo」など、M01を取り扱うMVNOも徐々に増やしていった。想定するユーザーの層を絞ったM01に対し、第2弾として、SIMロックフリースマホ市場の“ど真ん中”を狙った端末も開発した。それが、今回インタビューで語ってもらった「arrows M02」となる。

arrows M02arrows M02 「arrows M02」(写真=左)。端末単体で販売しているホワイトとブラック(写真=右)

 arrows M02は、米国国防総省の調達規格であるMIL規格に対応した耐衝撃性を備え、本体には傷がつきづらい「ウルトラタフガード」を採用。日本市場で培ったノウハウを生かし、おサイフケータイも搭載している。12月には、待望の「モバイルSuica」も利用できるようになった。

 ネットワーク面でも、日本市場での経験が生かされている。arrows M02は、ドコモとauの両ネットワークに対応しており、しかもVoLTEまで利用できる。ここまで多機能ながら、スペックはミドルレンジに抑えており、価格はSIMロックフリースマートフォンの売れ筋である3万円台を実現した。arrows M02は、富士通が本気でSIMロックフリースマートフォン市場に取り組むことを示した、象徴的な1台ともいえるだろう。

 この端末の企画意図、開発経緯や、SIMロックフリー市場への取り組みを、富士通コネクテッドテクノロジーズ マーケティング 営業本部 マーケティング統括部 第一商品企画部 部長の水本徹氏と、富士通コネクテッドテクノロジーズ マーケティング 営業本部 マーケティング統括部 第二商品企画部 マネージャーの影長宣賢氏に聞いた。

3万円台まで安くできた理由

arrows M02 影長氏

―― まずは、arrows M02を企画した経緯を教えてください。

影長氏 arrows M02は、メーカーブランドとして第2弾のスマートフォンです。背景には、格安スマホという呼び名で始まった、MVNOのブームが盛り上がりを見せていることがあります。弊社としては、富士通のブランドを生かし、安心、安全でしかもお値ごろ感のあるスマートフォンを出そうということで、企画を進めてきました。

―― お値ごろ感とは、どの程度を想定していたのですか。

影長氏 ターゲット価格として3万円前後に収まる中での、ちゃんとしたスマートフォンというものを考えました。長く使える、きちんとしたスマートフォンを出しましょうというところが、大きなポイントです。

 「きちんとしたもの」というのには、1つに、道具としてちゃんと動くことがあります。再起動したり、熱くなったりせず、電波がしっかりつながって、GPSも文字入力も問題なくできるというものです。

 2番目にあるのが、バッテリーの持ちがいいことです。モバイルで使うので、かっこよくするためだけに薄くすると、そのぶん電池が減ってしまいます。スマートフォンはお客さまが外で使うものなので、バッテリーを常に心配するというはよくないですからね。

 3番目が丈夫であることです。スマートフォンは成熟期に入り、買い替えサイクルも長くなっています。2月1日からは端末の料金も変わり、だんだんと高くなっています。特にMVNOを所望するお客さまは、普通のお客さまより長く使うと想定して、開発をしています。長く使っても壊れず、できるだけキレイなままでいる丈夫さをキープしているのがポイントです。

―― ちゃんと動くのはある意味ミドルレンジでも当たり前かもしれませんが、頑丈さにもこだわったということですね。ただ、そう考えると、なぜこんなに安くできているのかという疑問もわいてきます。

影長氏 価格については、企画の最初の段階からずっと意識していました。それは、使う部品や製造技術を含めてです。例えば、技術やお金をつぎ込めば、コンマ何ミリを薄くするということもできました。ただ、これ(現状のサイズの端末)を実際に手にするお客さまが感じる価値と、(薄くして)数百円のコストアップとどちらがいいのか。こういうことを、1つ1つ、しっかり考えていきました。

 仕様もそうで、5型だとフルHDが全盛の中、あえてHDにしています。これによって駆動するCPUの負荷が減り、ミドルクラスのものを使えるようになります。当然電池の減りも少なくなるので、小さい電池でよくなります。仕様、部品、製造のあらゆる面から吟味を重ねてきました。

 とはいえ、狭額縁のところには、ハイエンドで培った先端の技術を使っています。ただ安くするだけではなく、メリハリをつける。そこの製造技術は、多少高くなってもやっています。これは、国内の製造会社と距離が近いところだからできることですね。

VoLTEやおサイフにも対応、売れ行きは「想定以上」

―― ちなみに、冬春モデルとして、ドコモから「arrows Fit」が出ています。このモデルとの関係を教えてください。

影長氏 ベースモデルが弊社の中にあり、それをドコモさん向けにカスタマイズして、仕様を満たしたのがarrows Fit、弊社企画でMVNOに合うようにしたのがarrows M02ということですね。

―― どちらかが先にあったというわけではないんですね。

影長氏 ちょうどドコモさんが価格的に抑えたモデルを募集されていたタイミングと、MVNO向けに弊社が企画したタイミングがピッタリ合い、今回はこういった形で出ることになりました。

―― そういった意味で、キャリアモデルを長く作られてきたことは、VoLTEにも生きているのでしょうか。

影長氏 VoLTEには前から対応してきていたので、技術の蓄積があります。電話メーカーとしては、フィーチャーフォン時代からずっとやってきていて、らくらくホンも含め、キレイな音質にはこだわりがありました。スマートフォンは情報機器だからとそれをないがしろにするのではなく、電話は電話として、きっちり仕上げたつもりです。

 VoLTEがあれば一段上の音質を出せますし、ネットワークさえ整っていれば、電池の効率もいい。こういうメリットもあるので、弊社の蓄積された技術で対応しました。

―― こういう部分はコストに跳ね返らないのでしょうか。

影長氏 VoLTEに対応しただけでは、いい音質にはならないですからね。レシーバーなど、全ての部品もセットになり、開発の工数や評価はもちろん増えますが、それ以上のメリットがあります。

―― おサイフケータイに関してはいかがでしょうか。モバイルSuicaに対応できたのも、arrows M02の売りになると思いました。

影長氏 おサイフケータイに関しては、ある仕組みができたことで、MVNOへの負担が減り、メーカーブランドの端末にも搭載ができるようになりました。であれば日本仕様でもあるし、これは搭載すべきとなりました。Suicaに関してはJR東日本さんのサービスですが、われわれとしても、やらせていただきたいという気持ちがありました。

―― 価格以上に機能が充実している印象ですが、売れ行きはいかがでしたか。

影長氏 当初われわれが想定した以上に売れていて、増産、増産と前倒して作っている状況です。

―― 初回分は既に売り切ったということですね。

影長氏 幅広く、いろいろな事業者や量販店に入れさせていただくことができましたからね。初回分に関しては、すっとなくなって、追加注文が入った形になります。

―― mineoにはピンク、楽天モバイルにはゴールド、J:COM MOBILEにはロイヤルブルーと、MVNOごとに限定カラーを出しているのも、面白いと思いました。MVNOにとっても、差別化の材料になるのではないでしょうか。

arrows M02 左から、楽天モバイル向け「ゴールド」、mineo向け「ピンク」、J:COM MOBILE向け「ロイヤルブルー」

水本氏 狙うユーザーがこうで、こういう色を出したいという要望があり、その条件とわれわれの提案が合ったときに、専用色の開発を進めています。われわれもキャリア向けにコンシューマー端末をやってきているので、どういうユーザーにどういうカラーを展開すればいいのかということを、バックグラウンドとして持っています。そういった対応ができおるのも、日本メーカーの強みではないでしょうか。お客様と話をしながら、ベストな解を取ることができます。

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