「安くても大手キャリアに負けない」――大攻勢をかける「楽天モバイル」の現在地:MVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2016年07月20日 21時22分 公開
[石野純也,ITmedia]

 2014年10月にMVNO事業を本格化させた楽天だが、丸2年を迎える前に、その勢いを加速させている。6月に発表されたMM総研の調査では、独自SIM型のMVNOとしてついに第3位につけ、老舗のIIJやNTTコミュニケーションズに次ぐシェアとなった。6月29日は、端末と通信料が一体となった「コミコミプラン」を発表。富士通の「arrows M03」や、ZTEの「Blade E01」、Huaweiの「P9」「P9 lite」など、夏モデルも充実させた。

楽天モバイル 通信料とスマートフォンをセットにした「コミコミプラン」を新たに提供している

 楽天モバイルは、当初から大手キャリア型のビジネスを志向していたMVNOでもあった。端末のラインアップをきちんとそろえ、リアルな店舗も徐々に増やしてきた。また、傘下にフュージョン・コミュニケーションズ(現・楽天コミュニケーションズ)を抱えていたこともあり、「楽天でんわ」のような電話網で工夫を凝らしたサービスもいち早く展開。こうしたサービスの基礎を築いた上で、携帯電話の販売代理店と協力し、リアルな楽天モバイルブランドのショップをさらに増やそうとしている。年内の目標は100店舗だ。

 飛ぶ鳥を落とす勢いの楽天モバイルだが、参入当初、三木谷浩史会長兼社長は、その目標数を「1000万」と掲げていた。楽天から契約者数は公開されていないが、MM総研のシェアを見る限り、現状ではまだ数十万といったところだろう。目標と現実には、まだギャップもある。この溝を、楽天モバイルはどのように埋めていくつもりなのか。これまでの軌跡と、今後の展開を、楽天でMVNO事業を率いる執行役員 楽天モバイル事業長の大尾嘉宏人氏と、チーフプロダクトオフィサーの黒住吉郎氏に、お話を聞いた。

端末ラインアップを増強したことで躍進

楽天モバイル 楽天の大尾嘉氏

――(聞き手:石野純也) 先日発表されたMM総研のシェアでは、第3位になり、躍進している印象があります。その理由を教えてください。

大尾嘉氏 今年(2016年)1月に発表した内容が、ある意味象徴的ですね。そのときには、確か通話SIMとデータSIMの比率が62%と38%で、端末バンドル率が72%という数字を出していました。安価な価格でお客さまにサービスを提供するには、どうやるのが一番いいのか。そのためにはMNOのサービスで、受けているところはちゃんとやっていく。逆に、過剰だったり、そのためにプライスに跳ね返ったりしているところは、僕らなりに工夫をしてきました。その結果として、MNOに行かれるようなお客さまと、同じような行動の仕方をしていただけたということです。

 この点に関しては、本当にお客さまに対峙し、愚直にやってきただけですが、振り返ってみると、それが通話SIMの比率やバンドル率の高さ、公表はしていませんがMNPの数の多さに反映されています。一言で言えば、安いが大手キャリアに負けないサービスを提供しているということですね。

―― 端末やサービスなど、他のMVNOにはない楽天モバイルならではの施策も多いと思いますが、中でも一番効いているのはどこだと思いますか。

大尾嘉氏 昨年(2015年)1年間を振り返ると、やはり端末のラインアップが豊富だったことです。月額料金は安くても、お客さまがちゃんと選べるラインアップがあった。「honor6 Plus」もそうですし、ZenFoneやAQUOS、Xperiaまであった。どのお客さまが来ても、そこに合ったセレクションができるというのが昨年の話です。

 今年(2016年)に入ってからは、5分間かけ放題になるオプションを出したことで、データメインだったお客さまでも安心して通話が使えるようになりました。ここで、さらにお客さまに魅力を感じていただくことができたと思います。

―― 通話が多いためにMNOから離れられないという人もいますからね。

大尾嘉氏 あれをいち早く出せたのも、お客さまのニーズを見ながらやってきたからです。そうはいっても、まだ情報リテラシーが高い方が多く、スマホと料金プランを選んで、自身で「こういう使い方をする」と決めることができました。どんどん格安スマホというキーワードが広がる中で、もっと分かりやすくしてほしいという声もありました。今回、「コミコミプラン」を出した理由は、そこにあります。層の広がりに合わせて、値段は安いが大手キャリアに近い形のサービスが提供できるようになってきました。オプションサービスや店舗は、今後もどんどん拡充していきます。

販路をネットに限定すると全てのユーザーにリーチできない

photo 楽天の黒住氏

黒住氏 ユーザーの方は、組み合わせることを楽しむ方もいます。これとこれを組み合わせると、どれだけ安くなるのかとういのを楽しむような……。

―― パズルを攻略している感じ、“攻略感”とでも言ったらいいのでしょうか。

黒住氏 そう、それです。攻略している感じのようなもの。それと分かりやすさの2つがあるのだと思います。格安スマホは当初からありましたが、やはり攻略感を楽しむ方だけがお客さまではありません。「これだよ」と説明してほしい。1880円、2480円の中に、必要なものが入っている方がいいという方もやはりいます。ここを1つにしてしまってはいけないと思いますし、われわれが今やっているのもそういったことです。

大尾嘉氏 スマホとプランを自由に選べる仕組みは残しつつも、やはり店舗を見ると、「オススメは何?」と聞く方が多い。そういう意味では、お店からの声が多かったことを受けてというのはありますね。

―― 確かに、端末1つ1つの特徴や、料金プランを説明していると、それだけ時間もかかりそうです。店舗を拡充してきたのも、そういったところを丁寧に説明するためでしょうか。

大尾嘉氏 ケータイに関しては、もともとネットをまったくしない人もいます。ガラケーは見ても、PCは使わないという方ですね。そのため、(販路を)ネットに限定してしまうと、本当に意味でのスマホを使いたいユーザーにリーチできません。

―― オンラインショッピングを開拓してきた楽天さんがそれを言うのも、面白いですね。

大尾嘉氏 私自身もオフラインの重要性は説いていましたし、グループ全体として、オフラインの利便性を上げていこうということはやっていました。ポイントカードの加盟店を増やしているのも、その一環ですね。

黒住氏 事業の早い段階でリアルなタッチポイントを持っていたことは、やはり強い。われわれがやっていることをメッセージとして出せるのも強いですし、ユーザーさんがどのようなことに悩まれているのかを学習することもできます。われわれが自信を持ってやっていても、お客さまは不満だったことを改善できますし、逆に、何々店の誰々さんに親切にしてもらったという声も届き、それを積み重ねることで自信にもつながります。

―― リアルなタッチポイントという点でいえば、触ったこともない端末を、オンラインでポチっと買ってしまうのは、ちょっと怖いところはありますね。僕らは仕事柄、発表時に触れるのでいいのですが、ネットだけだとどう動くのかもちゃんと分かりません。

黒住氏 言い方は難しいのですが、例えば、AppleさんやSamsungさんの商品であれば、広く触れる機会はあると思います。ただ、Huaweiさん、ASUSさん、ZTEさんにしてもそうですが、どの会社がどんな商品を出しているというところまでは、分からない人の方が多いと思います。

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