RootMetricsが、日本でNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの通信品質をテストし、その結果を8月24日に発表した。
RootMetricsは、モバイル回線の性能を調査・分析をする企業。北米、英国、スペイン、フランス、スウェーデン、アイルランド、韓国で調査をしており、このたび、日本へ進出した。RootMetricsは2015年に調査会社のIHSマークイットに買収されており、ブランドを残す形としている。
日本でも、第三者調査機関がモバイル回線の実効速度を調査・発表しているが、RootMetricsは単純な通信速度だけでなく、ネットワークの信頼性、通話、SMSなどの性能をテストし、科学的に分析することを特徴としている。分析結果は通信キャリアやインフラベンダーなどに販売するほか、テスト結果をもとにしたコンサルティングも行う。
今回、日本では東京、横浜、札幌の3都市で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのネットワーク性能をテストした。調査した項目は「総合パフォーマンス」「ネットワークの信頼度」「ネットワークスピード」「データ通信」「通話」「SMS」の6項目。
ネットワークの信頼度ではダウンロード/アップロード、メール/Web/アプリのアクセスが成功したかどうかなどを測る。ネットワークスピードではダウンロード/アップロードの接続時間やスピード、メールの接続/完了時間、Web/アプリの接続やダウンロード時間などを測る。SMSではテキストの送信失敗がどれだけ起きたか、通話では通話障害や通話切れがどれだけ起きたかを測る。データ通信はネットワークの信頼度とネットワークスピードを合わせた結果、総合パフォーマンスはほか5項目を合わせたトータルの結果となる。
IHSマークイット RootMetrics 最高売上責任者のスコット・ブレディー氏は「屋内、屋外、車の走行中や交通渋滞の時、ランチタイム、夜ビデオを見ている時間帯など、消費者と同じように行動してテストをする。時間帯も日中から夜までをカバーしている」と、実際の利用シーンに即してテストしたことを強調する。テスト場所も空港、商業施設、交通機関、小売店、キャンパスなど多岐にわたる。
日本では2カ月間にわたって2896回テストし、テストサンプル数は6万9510、走行距離は4164km、テスト地点は158に及ぶ。端末は3キャリアとも「Galaxy S6 edge」2台を使用した。日本で特に利用者の多い「iPhone」については、「APIがロックダウンされていて測定アプリが使えない」(ブレディー氏)ため、現時点ではRootMetricsのテストはできない。
テストによって得られた何百万というデータを、「RootScore」という数値に落とし込み、0〜100のスコアを出す。スコアが高いほど優れていることを示す。
テスト結果は以下の通り。
東京・横浜ではソフトバンクが最多の6項目で1位を獲得し、総合ではドコモとソフトバンクが1位となった。札幌ではKDDIが最多の4項目で1位を獲得し、総合ではドコモとKDDIが1位となった。ダウンロード速度はソフトバンクが安定して30Mbps以上を出しており、上りは3地域ともKDDIが最下位となった。
ご覧の通り、東京、札幌、横浜のいずれも3キャリアの数値は拮抗(きっこう)している。RootMetricsが「誤差の範囲」と判断した場合は点数が異なっても同率で1位とし、多くの項目で複数キャリアが1位になっていることもあり、一概に「ここが一番」とは言いにくい。ブレディー氏は「日本では3都市でしかテストをしておらず、都市以外でテストをすると、同率1位は起こりにくくなって明確な差が生まれる」と話す。
また数字を見ても分かる通り、3キャリアとも全ての項目で90点台をたたき出している。日本のスコアはRootMetricsがテストを行っている他国と比べても優秀だが、ブレディー氏によると、韓国だけは日本よりも高いスコアを記録したという。
今回のRootMetricsのテスト結果からは、都市部においては、3キャリアとも高品質の通信サービスを提供していることが、あらためて分かった。その他の地域でのテストについても「大都市以外の避暑地など、さまざまな場所を検討している」(ブレディー氏)とのことで、今後のテストでどれだけ差が出るのかに注目したい。
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