速度は十分だがサービスの拡充が必要 日本通信のソフトバンクSIMを使って感じたこと石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2017年03月25日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 ソフトバンクのネットワークを使った日本通信のMVNOサービスが、3月22日、ついに幕を開けた。サービス名称は「b-mobile S 開幕SIM」。同時に日本通信をMVNEとするMVNOが、料金プランなどを発表。代表的なところでは、U-NEXTのMVNOであるU-mobileが、「U-mobile S」を発表している。

 どちらも基本的な料金は同じで、データプランのみの展開だ。U-NEXTがヤマダ電機と合弁で設立したY.U-mobileのブランドである「ヤマダファミリーモバイル」なども、ソフトバンクのMVNOとしてサービスを提供する予定だ。

※記事内の価格は全て税別。

b-mobile S 開幕SIM 日本通信は「b-mobile S 開幕SIM」として、ソフトバンクのMVNOを開始した

紆余曲折をへて始まったサービス、料金は月額880円から

 日本通信の開幕SIMや、U-NEXTのU-mobile Sの料金は、1GBプランが880円、3GBプランが1580円、7GBプランが2980円、30GBプランが4980円。データプランのみとなり、iPhone向けでも音声通話が可能なプランは提供されていない。SMS機能もない、純粋にデータ通信だけが可能なSIMカードとなる。

b-mobile S 開幕SIM 開幕SIMの料金プラン。1GB、880円からとなる
U-mobile S U-mobile Sも、料金プランは日本通信の開幕SIMと同じだ

 SIMカードはiPhone、iPad向けに分かれており、ソフトバンクのSIMロックがかかったiPhone 5以降のiPhoneでも利用可能となる。iPad向けは全機種で利用でき、古い端末向けにmicroSIMも用意されている。各MVNOのストアに加え、ヨドバシカメラやビックカメラ、コジマなど、量販店の一部でも販売。データプランのため、いわゆる2年縛りはなく、好きなタイミングで解約できる。

 この“SIMロックがかかったiPhoneでも使えること”に、日本通信はこだわってきた。勝算もここにあると見ているようで、日本通信の福田尚久社長は、1年間で100万契約という目標に掲げている。一方で、サービス開始は3月22日にずれ込んでしまった。本来、ソフトバンクのネットワークを使ったMVNOは、2016年中に提供されているはずだったからだ。その経緯を、福田氏は2月の決算説明会で次のように語っている。

 「昨年6月末の時点で、ソフトバンクと当社(日本通信)網の相互接続点での接続試験は終わっている。その時点で、SIMカードも納品されてきたので、6月末から7月頭にはサービスをローンチしようとしていたが、要望と違うものだと明確になった」

U-mobile S 日本通信の決算説明会では、潜在市場が示された。このうちの100万契約を1年で獲得していく方針

 この福田氏が述べていた要望というのが、ソフトバンクのSIMロックがかかった過去のiPhoneで使える仕様になる。いわゆる「MVNO向けSIMロック」がないSIMカードでサービスがしたかったというわけだ。現状、法律上は、大手キャリア(MNO)がMVNOにSIMカードを“貸与”するという立て付けになっている。貸し出すSIMカードに制約はないが、ドコモはMVNOにネットワークを解放した当初から、“ドコモのSIMカード”を貸し出していた。

U-mobile S ソフトバンクとの接続協議は難航し、サービス開始が遅れていた

 そのため、端末側からはドコモのSIMカードなのか、MVNOのSIMカードなのかの判別がつかず、結果としてドコモ向けにSIMロックがかかった端末でもMVNOのネットワークにそのまま接続できていた。これに対し、KDDIはVoLTEをMVNOに提供する際に、専用のSIMカードを発行。auの端末でもSIMロックを解除する必要が生じた。ソフトバンクもこれにならい、当初はMVNO専用のSIMカードを提供しようとしていた可能性がある。ソフトバンクはiPhone、Android、フィーチャーフォンと端末の種別ごとにSIMカードが分かれているため、ドコモのように、貸し出すSIMを1枚に絞れないという事情もありそうだ。

U-mobile S
U-mobile S 日本通信に貸し出されたSIMカード(U-mobile S)。裏面には、SIMロック向けiPhone用であることが記載されている

 こうしたMVNO向けSIMロックは、総務省のガイドラインが改正され、禁止されることになった。同時期の1月27日には、総務省の紛争処理委員会に対し答申が行われ、ほぼ全面的に日本通信の主張が認められた形になった。これを受け、日本通信は3月22日にソフトバンクのMVNOとしてサービスインすることを発表。紆余曲折を経て、冒頭述べたように、複数のMVNOがサービスの提供にこぎつけたのがここまでの流れになる。

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