それではパフォーマンスはどうだろうか。Atom搭載Netbookの競合製品とコアコンポーネントはほぼ共通であり、体感上のパフォーマンスは筆者がすでに触れたWind NetBook U100と特に変わらないようだ。この結果はベンチマークの結果にも現れており、HDD搭載のWind NetBook U100にかなり近いスコアになっている(関連レビュー:見た目はフツー、だがそれがいい――MSI「Wind Notebook U100」を検証する)。
OSの起動時間、休止/サスペンドに要する時間なども計測したが、これもおおむねWind NetBook U100に近い。全体に少しずつ遅めなのはマカフィーのアンチウイルスソフトがプリインストールされている影響もあるだろう。
動画再生能力もAtom搭載の競合製品とほぼ同等だ。SD解像度のMPEG2/Divx/WMVの再生はまったく問題なく、CPUの動作クロックを800MHzに固定してもほぼコマ落ちはなかった。HD解像度も筆者がエンコードした1280×720ドットのH.264(High Profile/Level 4.1)の動画ファイルは、CoreAVCコーデックとMP4 Splitterの組み合わせでWindowsMediaPlayerでの再生はほぼ問題なくこなせた。120Gバイトという内蔵HDDの容量とあわせて、持ち運べる動画プレーヤーとしての資質は悪くない。
ではバッテリー動作時間はどうだろう。Wind NetBook U100のレビュー時にほぼ条件をあわせて3つのシチュエーションでバッテリー残量が5%に達するまでの動作時間を計測した。本機は専用のバッテリーマネージメント機能は持たないので、「ポータブル/ラップトップ」「バッテリの最大利用」の2つの電源設定を利用し、前者ではバックライトを中間(5/10)に、後者では暗いほうから2つめ(2/10)に設定している。
ちなみにこの2つの電源設定では、バッテリー動作時に前者ではCPUクロックが負荷に応じて800〜1.6GHzの間で変化し、後者では800MHzに固定される。「バッテリの最大利用」はバックライトも調整してあるので、Wind NetBook U100の「Turbo Battery」有効時とほぼ同等と考えてよいはずだ。
結果はグラフを参考にしてほしいが、同じく3セルのバッテリーとHDD内蔵のWind NetBook U100と良い勝負だ。ディスプレイが小さい分、少しバッテリーの持ちが有利かなと思ったが、あまり影響はないようだ。使い方次第では2時間以上の動作時間が確保できそうで、本格的なモバイル利用には物足りないものの、とにかく日々持ち歩いて休憩時にちょっとモバイル、なんて使い方ならば十分利用に耐えるだろう。
本機は5万4800円という価格はもちろん、優れたデザインにHDD搭載Netbookではコンパクトなボディと、その魅力は多い。使い勝手という点ではマウスボタンの配置が気になるが、約17ミリのキーピッチを確保したキーボードも強力なライバルであろうEee PC 901-Xに対するアドバンテージだ。マウスボタンに関しては細かな作業を行う場合にはUSBマウスを利用する手もあるし、これはモバイル環境でも十分に可能だろう。
気になるのは、メモリ増設が不可能な点や、現時点で大容量バッテリーの提供予定がないことだろうか。前者は気にならない人もいるだろうが、後者はEee PC 901-Xが標準で大容量バッテリーを装備し、Wind NetBook U100も大容量バッテリーの提供が予定されている点を考えると無視はできない。今のところACアダプタや標準バッテリーの単体販売も確認できていないので、こういった点もきちんと対応してほしい。また、個人的にはやはりBluetoothは内蔵してほしかった。例えばメモリが1.5GバイトでBluetooth内蔵、なんてモデルを5万9800円で限定販売しても悪くないのではないだろうか。
本機を競合製品と比較した場合、パフォーマンスはほぼ同等であり、やはり魅力は、HDDを搭載することでEee PC 901-Xのように起動ドライブの容量を気にせずに使えることと、2.5インチHDDを搭載しつつWind NetBook U100よりも一回り小さいサイズ(フットプリントで約90%)に抑えた点だろう。それでいて価格は両競合製品より5000円安く、デザインは秀逸だ。低価格ミニPCの選択肢として強力な存在であることは間違いない。
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