筆者も中国移動(China Mobile)に通話料を前払いして、TD−SCDMAのUSBデータアダプタを入手することにした。最も安いデータカードは700元ほど、日本円で1万円程度だ。実際申し込みしたところ、1カ月でダウンロードするデータ量の見込みと利用する時間から自分にあったデータ通信プランを店員と相談しながら選ばなければならなかった。筆者もカウンターで契約するのに2時間かかった。これは中国語が話せないと難しい。
なお、USBデータアダプタ用のTD-SCDMAで使うSIMカードも100元(約1400円)で購入しなければならないが、中国で携帯電話やADSL、ネットカフェなど通信サービスを契約する場合は実名が基本だ。筆者もSIMカードを購入するために、パスポートの提示を求められた。
中国語でびっしり2時間交渉して得たUSBデータアダプタのパッケージにはドライバソフトが付属していない。USBデータアダプタにSIMカードを挿入してPCのUSBに差すとUSBデータアダプタに保存されていたインストーラが起動する。ここでインストールされるデータ通信用ソフトでインターネットに接続する。
気になる通信速度だが、確実にTD-SCDMAエリア内あるはずの繁華街から中国のWeページにアクセスして1300Kbps程度。同じ場所から日本のWebページにアクセスするとその半分まで遅くなる。中国のADSLは1Mbpsか2Mbpsのプランが一般的だが、日本のWebページにアクセスしたときの速度はADSLのほうが明らかに速い。TD-SCDMAが圏外の住宅街ではGSM/EDGEによる接続に自動的に切り替わる。このときの速度は百数十kbps程度。実質的に、繁華街でなければTD-SCDMAの速度は生かせない。ちなみに、日系企業の工場は多くの場合郊外にあるので、「そこに短期出張するので3Dデータ通信を試してみよう」という日本人では広告通りの速度はまず利用できない。
しかし、このTD-SCDMAのUSBデータアダプタを所持したところ、ないと困るほどに大活躍することになった。中国に在住するならTD-SCDMAカードはマストアイテムだ。その理由の1つが、PCからショートメール(SMS)が送れること。TD-SCDMAのUSBデータアダプタにはSMSとMMSをPCから送信できるソフトが付属する。中国在住となれば、ほとんどの人が携帯電話を持つことになるが、中国の携帯電話ではスマートフォンを除いて日本語メールを扱えない。携帯電話で入力できる文字がアルファベットか簡体字の漢字だけになるためだが、簡体字の“文字コード”にはひらがなとカタカナも含まれているため、PC上のソフトで入力したメールなら、ひらがなカタカナと簡体字漢字を混ぜた文章が中国製の携帯電話に表示できるわけだ。
もう1つの理由は、ADSLなどインターネット回線が予告なく(ついでに事後報告もなく)つながらなくなる中国では、予備の回線として3Gデータ通信が重宝する。さらに、地域差こそあるものの、中国では依然として停電がしばしば発生するので、そういうときの通信インフラのバックアップとしてノートPCと3Gデータ通信の組み合わせが欠かせないのだ。
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