決算直前の時期ということもあって、2009年における同社の事業実績については具体的な数値が紹介されなかったが、ライ氏が“日本語”で「とても、まずい」と述べたように、大変厳しい状況であったという。
ライ氏の説明内容は、MSIが2010年に予定している事業計画の具体的な説明というより、ワールドワイドにおけるPC利用動向とその外的要因の分析に関するものがメインとなった。ライ氏が冒頭に紹介したインターネットにおけるデータ転送量とスピードに関する分析では、アジア諸国はユーザーの絶対数が多い一方で、普及率が高いのは米国であることや、インターネット回線のスピードが最も速いのはオンラインゲームやインターネットカフェのユーザーが多い韓国で、日本は第2位。台湾は27位と下位に甘んじているなど、地域によって異なるインターネット利用者の傾向を述べたうえで、現在、最も急速に進化しているのは東欧諸国で、MSIのビジネスリソースもこの地域に集中を進めていると、ワールドワイドにおけるビジネス戦略の注力地域がシフトしていることを明らかにした。
ライ氏が次に言及したのが、PCベンダーとしては意外なデジタルコンテンツの話題だ。Amazon.comのKindleをはじめとする電子ブックリーダーが多くのユーザーに利用されるだろうと述べるとともに、「重要なのはハードウェアでなく、デジタルコンテンツだ」という考えを示している。「“Kindle”のAmazon.comや、“nook”のBarns & Nobleも、コンテンツの販売側だ。台湾でも電子ブックリーダーを販売しようとしているが、これまでコンテンツがなかった。しかし、台湾の書店がコンテンツの提供を表明したので、将来は普及するだろう」(ライ氏)
2009年の重要なトピックとなったWindows 7についてもライ氏はタッチ操作に関して言及している。MSIの分析によるとタッチスクリーンを利用しているユーザーは10%を下回るものの、ユーザーにWindows 7の新しい機能としてアピールしやすいと述べている。特に、MSIのビジネスで好調だったAIO(All In One、液晶一体型PC)ではAE1900にタッチパネルを採用しているので、タッチ操作を訴求するプロモーションを進めていく考えを示した。
OSに関連した説明では、Netbookなどの性能に制約がある小型デバイス向けの各種OSについての評価も紹介している。その中でライ氏は、「Mobilinは機能が少なく、Windows対応アプリケーションとの互換性の問題もある。Chrome OSは機能がシンプルすぎる。Ubintuは、現在5%のシェアを確保しているので将来性がある」と各種OSの見通しを予測した。
さらにライ氏は、Blu-ray Discに収録されたコンテンツや動画共有サイトで1080pクラスのHD動画がサポートされるなど、高解像度コンテンツが急速に普及する状況の中、「これからのキーフューチャーは、“フルHD”と“4k2k”」と、高解像度で表示されるデジタルコンテンツの利用であると述べ、2010年にワールドワイドで展開するキャッチフレーズである「効能首選 影音極致」を世界ではじめて明らかにした。新しすぎて日本語訳はおろか、英訳もできていないそうだが、その意味するところは「選りすぐった性能で精緻を極めた映像とサウンドを提供する」だと、エムエスアイコンピュータージャパン代表取締役社長の鄭志明氏は説明した。
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