第1回 キヤノン「PIXUS」の売れ筋プリンタ3台をまとめて比較する
第2回 エプソン「カラリオ」の売れ筋プリンタ3台を見極める(本記事)
第3回 日本HPの注目プリンタ「HP Photosmart Premium C309G」に迫る
エプソンは成熟市場となった国内のインクジェットプリンタ市場をさらに成長させるため、従来の「機能やスペックに偏ったPC周辺機器」としての製品から、よりユーザーとの生活密着度を高めた「暮らしの中で、なくてはならない存在」を目指すとしている。家庭用のフォトプリンタは嗜好(しこう)品に近いと思うが、それを脱して、生活必需品を目指すとはなかなかに野心的だ。
それを具現化する「マルチフォトカラリオ」シリーズのA4複合機は、全5モデルを新たに用意した。ボディデザインを大幅に変更した2008年末モデルの成功を受け、2009年末はマイナーチェンジモデルが中心となっているが、確かに進化している。
無線LAN対応モデルを拡充し、光沢仕上げだった天面を傷や指紋が付きにくい表面処理に改め、ミドルレンジ以下のモデルは上位機種に似た新デザインのボディを採用するなど、ラインアップ全体のブラッシュアップを行い、リビングルームに溶け込みやすい洗練されたデザインと使いやすさの両立を図っているのだ。
今回は全5モデルの中から注目機種として、ハイエンドクラスの「EP-902A」、上位2番手の「EP-802A」、上位3番手の「EP-702A」を取り上げる。FAX機能付きの最上位機「EP-901F」は継続販売されているが、2008年末のプリンタ特集で既に紹介したので、今回は割愛する。
モデルチェンジの内容は、以下の記事が詳しいので併せて参照してほしい。
なお、エプソンはこれらの複合機とともに、小型フォトプリンタ「カラリオミー」シリーズの新モデルとして、デジタルフォトフレーム機能を統合した新コンセプトの「E-600」と「E-800」も投入している。2009年末のカラリオで最もインパクトが強い新製品といえるので、こちらもチェックしてみてほしい。
それでは、注目の複合機を上位モデルから順に見ていこう。
EP-902Aは2008年末モデル「EP-901A」の後継機にあたるハイスペックな複合機だ。ADFとタッチパネルの搭載で下位機に差を付けている。もっとも、ハードウェア面に従来からの変更点はほとんど見られず、天面の光沢処理を傷や指紋が付きにくい「ドットパターンテクスチャー」のマットな処理に切り替えたくらいだ。
ADFは薄型ながらA4普通紙を最大30枚まで一度に取り込めるため、家庭用としては十分なスペックだ。EP-901Fとは違ってFAX機能がないので、ADFの利用頻度は下がるだろうが、原稿を交換するたびにスキャナのカバーを開閉する手間が省けることから、まとまった書類を一気にコピーする場合には重宝する。
操作パネルに用いられた7.8型の大きなタッチパネルは健在だ。タッチパネル全体がユーザーインタフェースになっており、まるで店頭の写真プリント注文機のように直感的な操作ができる。中央部には3.5型の液晶モニタを内蔵し、選択したメニュー項目に応じて、メモリカードに保存された画像のサムネイルや、スキャン時のプレビューが表示される仕組みだ。
プリントエンジンは染料6色のインクセットを採用。インク構成はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのレギュラー4色に、淡いライトシアンとライトマゼンタを加えることで、写真印刷の画質にこだわっている。プリントヘッドは計1080ノズル(各色180ノズル)を装備しており、マルチフォトカラリオとしては多ノズルの構成だ。今回取り上げるモデルでは、下位のEP-802Aとともに抜群のプリントスピードを誇る。
ADFを採用する一方、スキャナはCISセンサーを採用したもので、フィルムスキャンはサポートしない。ただし、光学解像度は4800×4800dpiと、反射原稿を取り込むのに不満のないスペックとなっている。
前面の2系統給紙(自動両面印刷ユニットはオプション)、有線/無線LANインタフェース、トレイ内蔵式のCD/DVD/BDレーベル印刷機能といった特徴ももれなく継承された。マルチフォトカラリオのフラッグシップだけあって、ADFや大型タッチパネルなど他機種にない高機能が魅力の1台だ。
次のページではEP-802AとEP-702Aをチェックする。
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