「官に政策あれば民に対策あり」だった2009年の中国IT山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2009年12月30日 11時30分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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中国発最新規格は2009年も活況。国際標準に向けた動きさえ

 中国が独自に開発する革新的な新技術は2009年も数多く登場した。中国版HD DVDこと「CBHD」のほか、DVDより少しだけ容量を増やした“中華Red-ray”こと「NVD」が市場の「ごくごく一部」に出回った。光ディスク以外でも、HDMIとLANの機能をLANケーブルに集約して性能をアップさせた“らしい”「DiiVA」という規格が登場している。こちらのほうは規格だけで、フォーラムもたびたび開かれてはいるが、搭載製品はまだ登場していない。

 北京オリンピックに合わせて2008年に登場した携帯電話の独自規格「TD-SCDMA」も、登場当初こそ「最初の製品を投入したらそれっきり」という気持ちがありありだった「中国移動」(チャイナテレコム)の投げやりな販売体制とサポートに誰も買おうとしなかった。この状況を見て、2009年には静かに消え去ると多くのユーザーに思われていたのに、2009年の春に中国聯通(チャイナユニコム)がW-CDMAの運用を開始し、中国電信(チャイナテレコム)がCDMA 2000のサービスをスタートさせたところ、中国移動がTD-SCDMAの普及にやる気を見せ始めた。

 中国移動は通話料前払いを条件に、データカードやデータカード内蔵Netbook、携帯電話をユーザーに無料で提供するキャンペーンを開始した。これがユーザーの注目を集め、中国聯通や中国電信も同様のキャンペーンで追随した。結局、中国における3Gの出だしは携帯電話よりデータカードで普及する結果になった。このおかげで、一時的であるが、データ通信で使うためにPCの販売が少なからず増加したともいわれている。

 2009年の秋に、W-CDMA対応のiPhone 3GSが中国で販売され、TD-SCDMA向けには中国独自の「OPhone」が登場した。CDMA向けにも2010年の早い段階でBlackBerryが登場予定だ。一般的な携帯電話とデータカード、スマートフォンのそれぞれで各キャリアは競争することになる。その一方で、多くの山寨機に実装されている半導体を供給している台湾のメーカー「Mediatek」が3G向け半導体の研究開発をしているそうだ。同社がどの方式に対応した半導体を出すかで中国3G市場のキャリア勢力図は変わっていくことだろう。しかし、山寨機がキャスティングボートを握る中国市場の勢力図っていったい……。

中国が誇るCBHD対応プレーヤーなのに、ひっそりと販売されている新科の「CBHD-9100」(写真=左)。“料金前払い”で3G通信の普及が進む中国では、PCを使ったデータ通信に携帯電話のキャリアが積極的に取り組んでいる(写真=右)

家族のPCから1人1人のPCに。

 今までPCに触れようともしなかった中国のおじいさんとおばあさんも学校に通ってPCを使い始めている。今まで手を出さなかった同居のおじいさんおばあさんが使えるようになったおかげで、孫にとって「建前は家族のPC、実質は俺様PC」だったのが、名実ともに「家族のPC」となったケースが増えている。俺様状態だったPCに埋蔵されている「見られては困るファイルを家族に見られた!」という書き込みが続出する中、「1人1台PC」の需要を喚起すべく「寝室向けPC」「HTPC」(Home Thearter PC)の紹介記事がIT系メディアで紹介されるようになったのも2009年の特徴だ。

 この数年にわたって、メーカー製PCの最安値は「前年比1000元」(約1万3000円)のペースで安くなっていたが、2009年はメーカー製PCの値下がりが確認されなかった。価格やコストパフォーマンスを何よりも大事に思う中国の消費者に向けた「最安値メーカーPC登場!」が2009年に登場しなかったわけで、これは異例なことといえる。それに変わる形で、先ほど紹介した“通話料前払い本体無料”のNetbookが登場したが、2010年には、値下げに慣れきった中国人消費者の期待に応えるようなPCは登場するのだろうか。低価格PCが多数を占めるPC雑誌の製品紹介でAlienwareのハイエンドゲーミングPCの紹介記事をちらほらと見るようになったのは、2010年の動向をうかがわせるようで興味深い。

 “安いが一番”の中国でも、2台目PC、または、ステータスの表現グッズとしてノートPCが普及した。ノートPCのユーザーが増加したことを受けて、ノートPC用外付けスピーカーが各社から多数リリースされ、USBメモリ、外付けHDD、フォトフレーム、GPS、mp3プレーヤーなどと並ぶ、周辺機器の主要なカテゴリーに成長した。筆者も、2009年になって中国の空港でノートPCユーザーをよくみかけるようになったが、その使い方は、映画を見たりゲームで遊んだりがほとんどで、仕事をこなしているユーザーはめったにいない。なるほどノートPC向けスピーカーが各社から出るわけだ。

 Windows 7が中国でも日本発売と同じ日に発売された。案の定、RC版登場から間を置かずに海賊版が出現したが、Windows XP時代にPCに初めて触れ、VistaでOSアップグレードに失望した中国人PCユーザーは、Windows 7すら受け入れていない。とはいえ、PCメーカーのラインアップもWindows XPやLinux、はてはDOSプリインストールのモデルも健在だ。幅広い選択肢の中からPCが選べる、という意味ではうらやましいと思えなくもない、2009年の中国向けメーカーPCのラインアップ事情だ。

お国の事情で若いころに勉強が十分出来なかった中国の老人は、21世紀になってようやく落ち着いて勉学に取り組めるようになった。そういうおじいさんおばあさんがPCスキルを取得して、孫が独り占めしていた“家族のPC”を奪回しつつあるという(写真=左)。日本では大いに盛り上がったWindows 7だが、中国ではWindows XPの海賊版「番茄花園版」に苦戦している

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