書籍購入者に全文PDFファイルを提供して見えてきたこと:紙とeBookを楽しむために(2/2 ページ)

» 2010年11月24日 11時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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少しでも多くのプラットフォームで読んでもらいたい

App Storeで提供されている「Handbook」で本書のプレビュー版を見ているところ

 本書が発売されてみると、読者からのフィードバックは、とても好意的なものだった。実際に読むのは紙の本だったとしても、電子データも同時に手に入れられることで、読者自身が大切にされているということを感じていただいたようだ。中には「紙を使わず、すべて通勤時にスマートフォンだけで読んだ」という猛者からの連絡もあったが、iPhoneなどを使って紙の本の続きを電車の中で読むといったことをしている方もいた。

 残念ながら有料版の配信はできなかったが、無償版に関してはインフォテリアのHandbookという文書配布・閲覧のシステムでも配信している。具体的には、App Storeで無償配布されているiPad/iPhoneアプリのHandbookをダウンロードし、ログインすることで本書のプレビュー版を読むことができる。これも上記の流れの中にあって、少しでも多くのプラットフォームで自由に見てほしいという気持ちを反映してもらったものだ。

 今後、同じようなチャンスがあれば、紙の本の購入者にPDFだけでなく任意のフォーマットの電子書籍をダウンロードできるようにしたいものだ。DRM付きの配信ならば、出版社への了解も、さらに得やすくなるだろう。

 このアイデアを思いついたとき、「もし判型の大きなハードカバーの長編小説があったら、自宅に本は置いておき、本を開きにくい電車の中では電子ブックリーダーで読めれば文庫版が出るまで待たなくていいのに」と考えていた。日本語に対応した電子ブックリーダーが登場すれば、きっと、そういったサービスをどこかがやってくれるに違いない。

紙とeBookの特徴を把握した上で、新たな枠組みにチャレンジしたい

 もし、あなたが本書と同様のことをやってみたいと思ったならば、ぜひともあきらめずに周囲に相談し、企画を実現してほしい。本というのは、よりよい本に仕上げること以上に、世の中で知ってもらうことの方が難しいからだ。特に昨今は、少しばかり売れて書店で売り切れになったとしても、実績のない著者の本は再注文されないことが少なくない。

 今回のシステム構築に尽力してくれた倉持氏は「山のように多くの書籍が発刊される中、1万〜2万冊が売れる本というのは相当によい本のはず。でも言い換えれば、よい本でも1万〜2万しか売れないのが当たり前。ならば、リスクはあっても、より多くの人に存在を知ってもらう方がいい」と話していた。

 例えばDRMのかかっていない全文のデータを、「この本が面白かったよ」と友人にあげてもらってもいいだろう。そうすることで自著に出会ってもらい、紙で読みたいと思ってもらえれば、著者にとってもプラスだと思うからだ。

 2010年末から来春にかけて、いくつもの電子書籍端末が発売され、電子書籍が多数出回る。とはいえ最初の数年は、書籍流通全体の数%にとどまるだろう。しかし、この機会を逃さず、紙と電子の特徴をとらえた上で、著者、出版社双方がよりよい本の流通について考え直してみてほしい。

 なお、「インサイド・ドキュメント“3D世界規格を作れ”」のXMDF版が、小学館の電子書籍販売ポータル「小学館eBOOKS」のリニューアル(11月30日)に伴って発売されることになった。全文PDFのダウンロードサービス無期限延長という決断を含め、ウィブックスの倉持太一氏に感謝したい。まだ本書のプレビュー版をダウンロードしていない方は、ぜひ、この機会にこちらのページからトライしてみてほしい。

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