こちらは子機で接続開始時に表示される画面。このようにマウスカーソルが大小の2重表示になり、マウスカーソルを目的に位置に素早く移動しておき、親機側の追従を確認してからクリック操作ができる。これ、何らかのリモートデスクトップを利用したことのある中級者以上であれば分かってもらえそうな、かなり便利な機能だ子機では、マウス操作に対してリニアに移動するマウスカーソルと、親機側の実際のマウスカーソルの位置がそれぞれリアルタイム表示されるようになっており、インターネット接続が低速でリモートスクリーンの表示に遅れが出る場合でもマウス操作を表示に合わせなくてよい工夫もされている。実際はコンマ数秒の遅れる程度表示で済むことがほとんどだが、マウス操作に気兼ねしなくていいのが快適である。
状況に応じて利用中に設定変更できるのも、Luiのいいところだ。描画設定は、用途別の「PC」「Movie」に加え、「画質優先」「標準」「動き優先」の3つの描画バランスより選択でき、これらは即座に反映される。Windows標準のリモートデスクトップやVNCなどでも表示色数の変更などにて通信速度に応じた画質の選択はできるが、基本的には事前に設定しておかなければならず、切り替えながらの利用は想定されていない。外出先で利用する場合、通信速度があまり高速でない場合はまず「動き優先」で操作し、写真を見る時だけ「画質優先」に切り替える──といったことがLuiであれば簡単にできる。
操作している親機側のアプリケーションをリモートスクリーンのウインドウにぴったり合わせる「ウインドウフィット」機能も便利に使える特徴機能の1つ。これで、リモートスクリーン内でのスクロールなしにアプリのメニュー操作が容易にできるようになるし、リモートスクリーンのウインドウサイズを変更したらアプリケーションのウインドウサイズも調整する──といった2度手間も不要にしてくれるなお、リモートスクリーンを使った親機での動画編集もなかなか実用的に行えた。出先の(やや非力な)ノートPCでの操作で、自宅のより高速なデスクトップPCで動画編集してしまおう、というわけだ。
画面描画は親機側で実行されるので、フィルムロールを使った素早い早戻し/早送りといった操作もスムーズにであり、描画バランスの切り替えも有効に機能する。
というのも、いまどきのHDムービーカメラはMPEG-4 AVC/H.264記録のため、ファイルサイズはコンパクトであってもその代償として編集やエンコード作業は非常に重くなる。動画編集は、やはりそれなりに高速なPCでないと困難だ。しかしLuiなら、その重い作業だけを自宅のPCに任せてしまうこともできる。HDムービーカメラから取り込んだ動画データをオンラインストレージなどを使って親機に転送し、親機で編集・エンコード→再度吸い出すとといった感じだ。デジタル一眼レフカメラでRAW撮影した写真の現像のバッチ処理を親機に任せてしまうなんてのもありだろう。
もちろん、同様のことはVPN+リモートデスクトップなどでも可能ではある。ただ、同じ検証機器、かつネットワーク環境で試してみたが、明らかにLuiのリモートスクリーンの方がスムーズだった。リモートデスクトップは描画をすべて子機側で行う仕組みなので基本的には効率がよいのだが、動画を扱うととなるとその全情報を送受信するので途端に描画速度が鈍くなる。Luiは接続設定が簡単なことはもちろん、親機で実行するアプリケーションをそれらより選ばないというメリットがある。ここは、慣れてきて“さらに使いこなしたい”と思った時に大きな差が付きそうなポイントだろう。
さて、上記のような使い方が手軽にできるなら、持ち運ぶ子機のPCパワーは必要最低限で十分だし(ワイヤレス通信機能を備えつつ、軽くてバッテリーが長く持てばよい──など)、親機でエンコードやバッチ処理中はそもそも子機を使わずに済む。モバイル利用的なメリットは大きいと思う。
Luiのソフトウェアは、NECの2010年秋冬モデル以降のWindows 7搭載PCを購入すれば標準で付属されている。今回は自宅のデスクトップPC、外出時のミニノートPCという組み合わせで検証したが、複数台のPCがある自宅内に限っても便利に使えることだろう。
PCが各部屋に1台・1人1台と普及しつつある中、今まではやや難易度が高かったリモートデスクトップを簡単に実現できるソフトウェア版Luiにより、一般PCユーザーにとっても容易に一歩進んだ/今までとは違うPCの使い方が開けてきそうな気がするのである。

Lui機能は携帯電話「N-08B」でも利用できる。ただ、2010年11月現在はサーバソフトが今回のPC向けソフトウェア版Luiとは別なので、サーバ側PCには個別にサーバソフトをインストールする必要があるのは少し残念。追って統合されることも期待したい
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