「プレイステーション 4」の成功に必要なもの本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

» 2013年02月28日 17時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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次世代機の普及には、新たなプレイスタイルの確立が重要

conceptのCEOコンセプターを務める稲船敬二氏。元カプコン常務執行役員で「ロックマン」や「鬼武者」など数々のヒットゲームシリーズを生み出した

 一方、PS4というプラットフォームを、ゲームの作り手側はどう評価しているのだろうか。数多くのヒットゲームをプレイステーション上で提供してきたconceptのCEOコンセプターを務める稲船敬二氏は「新しいタイプのゲームを生み出す実力、道具がそろったプラットフォーム。後は自分たちが、いかに熱中できるゲームを生み出せるか」と高く評価した。

 稲船氏はPS4に関して、まだ発表されたばかりのハードウェアということもあり、詳細な評価や感想についてコメントを避けたが、一般論として新しいハードウェアのプラットフォームがヒット商品となるための条件について、「家庭用ゲーム機を普及させる難しさは、生活必需品ではないこと。だから、ハードを買う側が、“もっと、もっと”と思えなければ新しいハードを買おうとはしてくれない。PS1のときは子ども用のおもちゃで、こんな面白いことができるのかと驚いた。でもそこには不満がたくさん生まれてくる。そこにPS2を持ってくると、PS1で解決できなかったいろいろなことが解決できる。だからみんな新しいハードを欲しがった」と話した。

 しかし、ある程度までゲームの満足度が高まってくると、現在使っているゲーム機に不満がなければ、ユーザーは新しいゲーム機に乗り換えようとしない。現行のゲーム機で遊べるタイトルに不満がなければ、新しいプラットフォームに乗り換えるモチベーションは生まれないというわけだ。

 したがって、新しいゲームプラットフォームが生まれるとき、それが成功するためには従来のゲーム機にはない要素、遊び方がなければ成功しないというのが稲船氏の持論だ。「ゲームディスクをドライブに放り込んで、コントローラーを手にして、インターネットにつないで遊ぶのが現行ゲーム機のスタイル。次の世代が成功するには、別の新しいプレイスタイルが必要。現世代のプレイスタイルが古くさいと思われるような提案ができれば、きっと新世代への移行が始まる」と稲船氏は語る。

 そうしたゲームプラットフォームに対する考え方に基づいて、新たなプレイスタイルを作れると確信を持ったことで、冒頭のような結論が導き出された。例えば、それはサスペンド/レジューム機能など、素早くゲームを始めて、やめたいときにやめられる手軽さだ。次の世代では「よっこらせと準備をしてゲームを始める感覚はなくなる」と話した。

 特に初期のオンラインゲームではゲームのスパンが長く、延々と長時間、オンラインで遊ばなければ、なかなか奥の奥まで楽しめなかった。ゲーム体験の奥行きをより深いものに仕上げようとするほど、手軽さが薄れて遊びにくくなり、ゲームファンの離脱を促してしまう。

 携帯型ゲーム機のキラーコンテンツとして知られるカプコンの「モンスターハンター」シリーズは、この問題を解決するため、オンラインで友人が集まると30〜50分ぐらいで1回のプレイが完結するよう設計され、オンラインゲームに革命をもたらした。

 「しかし今の時代は、まだそれでもプレイ時間が長い。そこで最近、ゲームコンセプトをデザインしたタイトルは、1回のプレイを5分。長くとも15分で完遂できるよう設計している。少し遊んですぐやめる。こうした遊び方の変化をもたらす仕掛けが新しい世代のゲーム機には必要不可欠だ」と稲船氏は考える。

 稲船氏の話は、新しいプラットフォームが市場で受け入れられるための一般論だが、実はSCE側の意見も一致している。

 ハウス氏は「現世代のゲーム専用機はネットワーク機能が充実し、オンラインマルチプレイのゲームが大流行した。今も何100万人がプレイし、主流の遊び方になっているが、この世界にゲームを遊ばなくなった“かつてのゲーマー”が戻って来てくれるかというと疑問だ。オンラインプレイとはいえ、ゲームのスタイルはPS2時代の延長線上にある。PS4はこうした状況を打破し、ゲームのプレイスタイルそのものを変えることがコンセプトになっている。では、遊び方そのものを変えるにはどうすればいいのか。だからこそ、ゲーム開発者、クリエイター中心に、彼らの発想力とモチベーションを引き出すものに仕上げている」という。

ゲーム機がもたらすモーメンタムの大きさ

 PS4というプラットフォームが発表されただけで、“商品”構成や機能、価格の分からない現在、この新しいフォーマットをサポートするゲーム機が“売れるか、売れないか”を評価するのは早計だろう。しかし、据え置き型ゲーム機に関するビジネスモデルを振り返れば、(単に高性能なだけでなく、新たな遊びを創出できるならばだが)PS4が持つ可能性は決して低くない。

 据え置き型ゲーム機の元祖としてATARIの製品を思い浮かべる方もいるかもしれないが、世界的大ヒット商品として印象的なのは任天堂の「ファミリーコンピュータ」だろう。いわゆる「ファミコン」の累計出荷台数はおよそ6200万台と言われている。その後継である「スーパーファミコン」は5000万台に到達できなかった。

累計出荷台数が1億5500万台に達した「プレイステーション 2」

 これに対して「プレイステーション」(初代)の累計出荷台数は1億200万台、「プレイステーション 2」の累計出荷台数は1億5500万台と、歴代のファミコンよりも桁が1つ違っている。据え置き型ゲーム機で累計出荷1億台を越えているのは、実はプレイステーションシリーズのみだ。これ以外に1億台を越えたゲーム機は、任天堂の携帯型ゲーム機である「ゲームボーイ」(カラー版含む)と「ニンテンドーDS」しかない。

 PS1、PS2ともに発売当初の希望小売価格は3万9800円と、期待されるユーザー体験(PS1のときは一般消費者が体験する初のインタラクティブ3D、PS2のときは高価なPC用グラフィックスも越える3D品位やDVD再生機能など)に対して安価だったことも、普及を促した面もあるだろうが、基本的には「ゲーム機はゲーム機」。優れたコンテンツがあったからこそ、普及したと見るのが正しいと想う。

 しかし、PS2の圧倒的な成功体験が、ゲーム機というビジネスに対する過剰なまでの期待感を生み出したのかもしれない。順調に膨らんでいくと思われたゲーム機の需要は、PS3とXbox 360が市場を分け合った現世代で頭打ちになる。PS3の累計出荷台数は7700万台、Xbox 360は7600万台程度との報告があるが(Xbox 360のほうが多いとする統計も少なくないが、大きな違いではない)、いずれにしろ両機種とも1億台の達成は厳しい。PS2と比べると約半分の規模だ。

 PC誌であるPC USERの読者なら、全世界で10億台が稼働しているWindows PC(累計出荷ではなく、現時点で動いているもの)のほうが、市場全体に対して大きなモーメンタムを作れるのではないか、と思うかもしれない。

 確かにゲームを実行する処理能力は、最近のPCのほうが高いというケースは多いだろうし、CPUの速度も速い。スマートフォンやタブレットも数に入れ始めると、「なんだゲーム機は、その程度の数しか売れていないのか」と思われるかもしれない。

 しかし、ゲーム機がゲーム機であるゆえんは、ゲーム専用のコンピュータであり、PCのように何でも使える汎用コンピュータではない点にある。ゲームを遊ぶためだけに買うコンピュータなのだから、これを使ってゲームを遊ばなければ、そもそもゲーム機を買った意味がない。

 据え置き型の場合、アタッチレート(ゲーム機1台あたりのソフト販売本数)は地域によって異なるものの、世界平均で6〜7本前後と言われている。1本の平均単価が50ドルくらいと仮定するならば、1台のゲーム機にユーザーが投資するソフトウェア代は300〜350ドル程度だ。1億台なら350億ドル規模のゲームソフト市場が生まれ、ゲームソフトを制作する側とプラットフォームを構築する側が、そこから生まれる利益を共有する。

 つまり、ゲーム機そのものの普及台数とアタッチレート(ゲームソフトの充実度やファンの盛り上がり度と言い換えてもいい)のかけ算で、家庭用ゲーム機の産業が構成されている。PS4プラットフォームの発表でSCEが主張したのは、主にアタッチレートを高める施策だ。

 しかし、ゲーム人口の増加を狙う施策が何もなされていないわけではない。動画共有などを通じた潜在ユーザーの巻き込み、サスペンド/レジュームによる遊びやすさなどが加わり、手軽に遊べるカジュアルゲームを育成することでゲーム人口を育てようという意図だ。もし、ここにリーズナブルな価格(PS3は発売時に20GバイトHDD搭載の下位モデルで4万9980円だった)が加われば、SCEによる巻き返しが成る可能性も決して低くはないだろう。

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