営業コストを除いて過去最大の低減に――ドコモ、2010年度適用の接続料改定

» 2011年01月24日 20時22分 公開
[田中聡,ITmedia]

 NTTドコモは、2010年度適用の携帯電話の接続料を改定し、1月24日に総務省に届け出を行った。今回は2010年度から初めて適用される、第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドラインに従って算定し、区域内の音声接続料については、2009年度適用の接続料から最大で35.6%の低減を実現した。2010年度の接続料は、2010年4月1日から2011年3月31日までの見込額が算定されている。

ガイドラインに沿って接続料を算定

 接続料とは、ソフトバンクモバイルからドコモ、KDDIからドコモなど、異なる事業者間で通信をする際に、発信者側の事業者が、接続先の事業者に支払うネットワーク使用料のこと。例えばソフトバンク携帯からドコモ携帯へ電話をかける際、ドコモのネットワークを使用するので、ソフトバンク側にドコモ網の使用料が発生する。なお、接続料はネットワークを利用される側(この場合はドコモ)が算出するものだが、事業者間をまたがる通話料金(ユーザー料金)は発信側の事業者が決定する。

 接続料には同一区域内で通話をする「区域内料金」と、異なる区域で通話をする「区域外料金」の2つがあり、中継ネットワーク利用のコストが加算される後者の方が、接続料はやや高くなる。

 音声通話の接続料のほか、ドコモ網を使ったデータ通信サービスを提供している日本通信などのMVNO事業者向けに、パケット通信の接続料も設定されている。接続形態は「レイヤー2」「レイヤー3」と呼ばれ、パケット交換機をMVNO事業者が利用できるレイヤー2接続の方がレイヤー3よりも安い。ちなみに、日本通信はドコモとレイヤー2接続における相互接続協定を締結している。

photophoto 音声(左)とパケット(右)の接続料について
photo NTTドコモの古川浩司氏

 2009年度までは各事業者が独自に接続料を算定していたが、2010年度から、第二種指定電気通信設備を有する事業者は、総務省が公表したガイドラインに従って接続料金を算定することが義務づけられる。NTTドコモ 企画調整室長の古川浩司氏は「これまでは接続料の会計をしていなかったが、会計制度を導入することで透明性を図る」と説明する。

 接続に関する規制(接続規制)は、移動体通信事業者ではドコモとKDDIにのみ課せられており、接続義務はもちろん、接続約款の作成と公表、適正な接続料設定、公平性の確保、接続会計の確保などが定められている。情報の目的外利用や不当な差別的取り扱いなどの「行為規制」は、移動体事業者ではドコモにのみ課せられている。ガイドラインが定める第二種指定電気通信設備を有する事業者は、移動体通信では端末シェア25%強を持つことが基準となっており、ドコモとKDDIが該当するが、その他の携帯事業者についても同等の取り組みが望ましいとされている。

photophoto 接続規制は基本的にドコモとKDDI、行為規制はドコモに課せられる(写真=左)。ガイドライン策定により、接続料の策定方法が変更された(写真=右)

 ガイドライン設定前後で接続料の算定方法はどのように変わったのだろうか。接続料は、ネットワークコストを総通話時間で割ることで設定されるが、「これまでコストの考え方は事業者が独自に判断していたので、食い違いが生じていた」(古川氏)という。そこでガイドラインでは営業費を原則として導入しないことが定められた。ただし、エリア整備や改善を目的とする情報収集と、周波数再編の周知に関する営業費などは例外的に算入が認められる。また、「通話時間」の算出方法にも事業者間がで相違があったので、自社網と他社網での通話を含む「総通話時間」を分母にすることになった。

 ガイドラインに基づいた算出の結果、2010年度の音声接続料は区域内が35.6%、区域外が32.7%、パケット接続料はレイヤー3が29.3%、レイヤー2が20.6%の低減に成功した。これはドコモとしては、接続料導入後最大の低減となっている。古川氏は「営業コストを除外したのが最大の要因」とみる。パケット接続料の低減率が音声よりも低いのは「パケット通信は当初から営業コストを除外していたため」(古川氏)。

photophoto 今回から接続料は営業費を抜いて算定される(写真=左)。2010年度適用の接続料(写真=右)

接続料が下がると通話料も下がるのか

photo ドコモのユーザー料金も低減している

 接続料は、ユーザーにとってはなじみの薄い数値だろう。事業者間の接続料が下がることによって、他社からドコモへ発信する際、またはドコモから他社へ発信する際の通話料金(ユーザー料金)が下がる可能性はあるのだろうか。この点について古川氏は「接続料金は、設備やネットワークにかかるコストを反映したものだが、ユーザー料金は、(他社との)競争状況とお客様のニーズを踏まえて設定するもの。接続料が下がったからといって必ずしもユーザー料金が下がるわけではない。また、逆に接続料が下がらなくても、競争状態に応じてユーザー料金を下げないといけない場合もある。接続料とユーザー料金は関連して動いているわけではない」と説明する。

 海外事業者の接続料との比較において、ドコモの接続料を100とした場合、イギリスは109、イタリアは144、スペインは109、ドイツは78、フランスは66という調査結果もあり、「諸外国と比べて一概に高いとは言えない」と古川氏は説明する。ユーザー料金についても「中程度の利用者を比較すると、購買力平価は(他国と)おおむね遜色ない水準」とみている。

photophoto 諸外国との接続料比較(写真=左)。こちらはユーザー料金の比較(写真=右)

 接続料の収支については「トータルではトントンだが、事業者によって差がある」(古川氏)とのこと。その結果、特にソフトバンクモバイルへの支払い超過が多く、2009年度は100〜200億円程度の支払い超過になったという。キャリアによって接続料にバラツキがあると、例えばドコモからソフトバンクへの通話料のみを上げる可能性もあるのだろうか。この点について古川氏は「どこのキャリアに発信しているかはユーザーには識別しにくいので、通話料金は統一している。ユーザーの利便性を考えるのなら統一したままの方がいい」とした。

 ウィルコムとの接続料については「守秘義務の範囲」として明言を避けた。「ウィルコムはガイドラインの対象外だが、支払いと収入の構造は携帯電話事業者と基本的には同じなので、納得のいく形で説明を求めていきたい」(古川氏)

photo ソフトバンクモバイル、KDDIとドコモの接続料の格差が広がっている

 今回のガイドラインは、接続料を透明性あるものにしていくことが狙い。その中で接続料を低減することで、「全体の電気通信料金の引き下げにつながる。これは国家の通信政策全体の論点」と古川氏は考える。ドコモとKDDI以外の事業者についても接続ルールの見直しが「望ましい」とされている。すべての事業者に対し、適正な接続料設定と公平性の確保がどこまで成されるかが、カギを握るといえそうだ。

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