受注のリアルタイム化で収益拡大 タブレットで変わる農業のIT化神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2012年07月11日 22時14分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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 Androidタブレットの運用についても少し見てみよう。

 現在のいろどりのシステムでは、ツマモノの発注が入るとその情報がリアルタイムで生産者に送信される。生産農家では、その発注量・価格を見て、指定時間内に出荷可能な注文を取るのである。実際に見ていると、発注情報の配信をすると各生産農家が競うように出荷枠を確保していく。特に単価の高い注文は人気で、枠が埋まるのは本当に一瞬だという。その様子は、まるでデイトレーディングのようであり、タブレットで注文確認・出荷枠の獲得をしているのが、高齢者が中心の生産農家だとはにわかに信じられない。

 「(農家は)高齢者が中心なのに、なぜこれほどタブレットを使いこなせるのか、とよく尋ねられるのですが、その理由は簡単なのですよ。タブレットをうまく使って効率よく注文を獲得していけば、『ほかの農家よりも売り上げが大きくなりますよ』と伝えればいいのです。農業というとどこか牧歌的でみんな仲良しなイメージがあるようですが、近隣の農家よりも少しでも多く稼ぎたいという気持ちは(他のビジネスと)同じです。

 我々のシステムでは、各農家の売り上げランキングや評価をまとめてレポートしているのですが、そうやって『タブレットを使うことで儲かる』『ほかの農家と競争する』ことを可視化していけば、おじいちゃんやおばあちゃんでも積極的にタブレットを使ってくれます。(タブレットやITが)稼ぐツールであることをしっかりと伝えることが大事なのです」(横石氏)

PhotoPhoto いろどりでは、タブレット端末に専用UIを用意してカスタマイズしている。高齢者が中心の生産農家の方々が使いやすいものを作っている。一方で、農家のビジネスに必要な情報はリアルタイムに更新され、情報の可視化によって経営効率を高める仕組みになっている

 今後のタブレット展開としていろどりでは、基幹の葉っぱビジネスの活用範囲を広げるとともに、農業ビジネスの支援だけでなく生活全般の支援サービスも広げていきたいという。

 「過疎化が進む地方の農村地帯では、生活難民や買い物難民の問題がかなり深刻なものになっています。しかし、そのため(買い物・生活支援)だけにタブレットを導入・活用してもらうというのは無理がある。そこでまずはビジネスツールとして農業でタブレットを使ってもらい、その先に農家の生活支援ツールとしての展開ができればと考えているのです」(横石氏)

「注文が取れたときが嬉しい」――タブレットは欠かせないものに

 実際にAndroidタブレットで葉っぱビジネスを利用中の生産農家の1人、福田嘉彦氏にも話を聞いてみた。福田氏は2011年7月からドコモのAndroidタブレットを使っており、専用のケースに入れて毎日持ち歩き活用している。

PhotoPhoto 葉っぱビジネスの生産農家の1人、福田嘉彦氏。2011年からAndroidタブレットを利用し始めたが、今では農業を営む上で欠かせないツールになっているという

 「以前からPCは使っていたのですが、タブレットになって常に持ち運べるようになりました。それにより頻繁に注文状況や市況がチェックできるようになったのは便利ですね」(福田氏)

 生産農家におけるAndroidタブレットの利用は、朝8〜9時頃に配信される最初の注文から始まる。その日最初の注文をチェックし、自らの出荷枠を確保。ここで1日の作業量や作業手順がおおよそ決まるという。

 「朝に取れた注文で、その日にまず出荷するものがだいたい決まります。ここで単価が高い注文が取れた時がうれしいですね。高い値段で売れる注文は、多いときで40人くらい(の生産農家)が集中して取りに行きますから。まさにタイミングの勝負です。ここで高い値段の注文が取れれば、出荷価格は一般の競りにまわすより3〜4倍の値段になります」(福田氏)

 とりわけ朝の注文は獲得合戦が激しく、値段の高い注文は瞬く間に出荷希望で埋まっていくという。その後、昼間も注文は随時入ってくるのだが、何はともあれ1日の作業量の目安となる朝の発注をどれだけ取れるかは重要なのだ。

 「昼間に注文が入るときは、ケータイに注文予告メールが届いた後にタブレットの注文画面が赤く光って情報更新されます。昼間は外に出ているわけですから、(日中の注文のたびに)家に戻ってパソコンを広げる必要のないタブレットは便利です。

 昼間の注文は、必要量と出荷締切時間を見ながら、自分が準備できる範囲で受注します。この際も畑での作業の進み具合を見ながら決められますのでムダがありません」(福田氏)

 実際に取材をしながらも、福田氏は時おりタブレットに目をやり、注文状況をチェック。そこには高齢者だから、というIT機器への苦手意識は微塵も見られなかった。この地域においてタブレット端末は、農業を営む上での基本ツールとして定着し始めていることが分かる。


 スマートフォンやタブレットのビジネス活用というと、都会のホワイトカラー層が使うものがイメージされがちだ。しかし、モバイルITの特性は場所に縛られないことであり、これまでのPC中心では難しかった“オフィスの外のIT活用”を実現するところに大きな成長可能性がある。さらに農業は世界的にもモバイルITの急成長領域と見られており、今後が注目な分野だ。

 高齢化が進む地方の農業において、タブレットを用いて収益拡大を実現したいろどりの葉っぱビジネスは、「農業でのモバイルIT活用」にとって貴重な先行事例と言えそうだ。

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