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» 2012年10月09日 10時15分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:「LINE」で何が起こっているのか(5)

LINEの問題点は公式のアプリやサービスだけにとどまらない。アプリストアには非公式のアプリも多数存在し、初めて使うユーザーには公式/非公式の区別が付かない場合も多い。

[小寺信良,ITmedia]

 LINEに関して調べ始めたら、これまでのSNSとは違う面がいろいろ出てきて、とうとう5回目になってしまった。その間にもiOS 6のリリースやらiPhone 5発売やらがあり、アプリのほうもアップデートされて機能が増えている。

 執筆時点での最新版であるVer3.1.2では、これまで説明してきた機能も変更が加えられている。例えば「ひとこと」の内容は過去の発言が参照できなかったが、これが可能になった。ただしさかのぼれるのは、自分の発言のみだ。多くの人がリクエストしていたのは、友だちの過去の発言ではないか思うのだが、やはりそのような履歴が残るコミュニケーションは、タイムラインへ誘導するということだろう。

 そのほか、友だちリストの管理機能として、「非表示」が追加された。これは友だちリストには表示されないが、発言はタイムラインに載ってくる。LINEの公式アカウントは、個人とはコミュニケーションしないので、友だちリストに載ってきても無駄である。こういうアカウントを非表示にするというのが、一般に想定される使い方になるようだ。

 さて、前回は出会い系の動きに対する防止措置について見てきたが、今回は具体的に出会いをサポートするツールとはどのようなものかを検証してみる。

 今年5月、LINEでは、公式ブログでLINE非公認サービスのリストを公開して、ユーザーに利用規約違反となる可能性を警告している。このリストには載っていないが、ここでは「LINEなう! for LINE」という非公式アプリの例を見てみる。

LINEなう! の仕組み

 LINEなう! は、iPhoneからApp StoreでLINEを検索すると、LINE公式アプリ、LINEカメラに次いで3番目に表示される。アイコンのカラーも似せてあるため、LINE公式アプリだと勘違いするユーザーもあるかもしれない。

photo 公式LINEアプリに似たイメージの「LINEなう!」

 LINEなう! は、自分のニックネームと写真、LINE IDを登録することで、メッセージを残せる掲示板のような仕組みだ。気に入った相手があったら、LINEのボタンをタップするだけで、相手のIDがコピーされる。それをLINEに持っていってIDで検索し、コンタクトするわけだ。同様のアプリとして、この開発元はカカオトーク用、Skype用のアプリをリリースしている。

photophoto LINEなう! のタイムライン(写真=左)。個別のチャットも可能だが、第三者から丸見え(写真=右)

 このアプリを利用するためには、自分のニックネームと性別、LINE IDを入力する必要がある。だがLINE側にIDの照合や確認などをしているわけではないので、他人のIDや写真、ニックネームで登録できるという脆弱性がある。

 また、利用規約はIDやニックネームなどを入力させた後でなければ、見られない作りとなっている。規約の中身を見せずに同意させ、IDをはじめとする個人情報を取得するのは、サービス設計として問題が多い。

photo 利用規約を見せず、先に同意を求める作りになっている

 利用規約は、何も見ずに同意すると、初めて表示される。利用規約の文言で検索してみると、別の開発者の“Game Crew”というアプリの利用規約と、内容がほぼ一致する。

 会社名は違うが開発者が同じなのか、それとも利用規約だけをどちらかがコピペしたのか、あるいはさらに利用規約の元ネタがあるのか、分からない部分が多い。現在は、Game Crewのほうの利用規約がサイトから削除されているようだ。

photo 左がLINEなう!、右がGame Crewの利用規約。緑のライン部分が、文言が違うところ

求められる対策

 LINE側としては、このような出会い支援外部アプリを使ったユーザー間の交流をどのように把握し、排除していくかが、今後の大きな課題となるだろう。ただ運営会社のNHN Japanは、ネットゲームやちゃんとした出会い系サイトの運営経験があり、ユーザー動向を追跡するノウハウはかなり持っているはずだ。ちゃんとした出会い系ってなんだ、と思われるかもしれないが、警察庁に届け出をしている、いわゆる「婚活サイト」である。

 爆発的に拡大を続けるLINEに、キャリアのほうも対応し始めた。KDDIは定額制サービス「auスマートパス」にLINEを加えたが、ここで提供されるアプリは通常のバージョンと違い、18歳未満のユーザーはID検索機能を自動で制限する機能が付いている。このような取り組みは評価できる。

 一方ソフトバンクモバイルは、フィルタリングの 「ウェブ利用制限(弱)プラス」に、独自の判断でLINEを加えると発表した。閲覧が許可されるサイトとして、以下の3つの条件を挙げている。

  • ネットスター株式会社のURLリスト分類基準に基づき、「子どもの利用への配慮レベル1〜3」に分類されたコミュニケーションサイト
  • EMA(モバイルコンテンツ審査・運用監視機構)により認定されたサイト
  • Twitter、Facebook、LINEなど、国際的に広く利用されている一部のコミュニケーションサイト

 上記2つは、基本的にURLが発生するサイトを基準にしているため、アプリ上で構築されるLINEのようなサービスは想定されていない。ソフトバンクがどこまで現状のLINEを調査した上で解禁したのかは知るよしもないが、単にTwitterみたいに国際的に広く利用されているから、という理由だけで解禁したのだとするのならば、無責任と言われても仕方がない。

 LINEは上手く使えば、通話代も節約できて、子どもにも親にもメリットがあるサービスである。さらにTwitterやFacebookなど外資系サービスに対抗できる、唯一の国産サービスという位置づけでもある。むやみにLINEの足を引っぱることは、国益に反するという点も考えるべきである。

 かといって、まだまだ青少年の利用環境整備については、諸手を挙げてすべてを容認というわけにはいかない状況だ。保護者の視点で正しく現状を理解し、改善すべき点を求めて行くこと、そして継続的に改善成果を評価していくことが重要であろう。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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