富士通は、11月20日にドコモ向け端末の発表会を開催。クアッドコアCPUに64GバイトのROMを搭載したARROWS Vや、タッチペン対応の特徴はそのままに機能を強化した「ARROWS Kiss F-03E」、国産のLTEチップを搭載した「ARROWS Tab F-05E」、フィーチャーフォンの「F-01E」を紹介した。
これまで、他社に先駆けLTEやクアッドコアCPUに対応し、ハイスペックのイメージが強い富士通端末だが、同社は「ヒューマンセントリックエンジン」の開発も抜かりなく続けてきた。使用中に画面が消灯するのを防ぐ「持ってる間ON」や、本体を握った際にかかった指の反応を無効にする「うっかりタッチサポート」などは、チップ化したヒューマンセントリックエンジンがあるからこそ実現できた機能。「商品の基本が一緒になって、みんなクアッドコアでLTE。メモリやバッテリーも同じ」(富士通 執行役員常務 大谷信雄氏)という状況の中、冬モデルでは“使い勝手”をアピールしていく。
もちろん、従来からの方向性に大きな変化はなく、「薄型、高性能CPU、最新OSがあり、その上に富士通独自のヒューマンセントリックエンジンを載せている」(執行役員 高田克美氏)。ARROWS Vは、NVIDIA製のクアッドコアチップ「Tegra 3」を搭載。ROM容量も64Gバイトで、「Android最強に近い。これだけあれば、かなり充実したエンターテインメントを楽しんでいただける」(同)と自信をのぞかせる。
女性向けのARROWS Kissは、ターゲットに合わせて作りこんだ部分を継承しつつ、「CPU、メモリ、液晶サイズをさらに進化させ、NOTTVやおくだけ充電にも対応した」(同)というのがポイント。ARROWS Tabには、富士通が設立し、ドコモやNEC、富士通セミコンダクターが出資したアクセスネットワークテクノロジ社が開発した、「COSMOS」というLTEチップが搭載されている。富士通はこれらの端末を投入し、年間販売台数800万台を目指す。代表取締役副社長、佐相秀幸氏は「海外メーカーの勢いが増し、お客様の商品対する目が厳しい中、下期を勝ち抜いて年間の目標である800万台を目指して総力を挙げて取り組んでいく」と、その方針を語った。
一方で、過去に不具合が相次いだことで、ユーザーや販売店からは不満の声も挙がっている。こうした点を問われた高田氏も、「日々ご要望を頂戴しており、ご指摘の内容は私どもも認識している」と、品質面で克服すべき課題があることを認める。冬モデルでは、「バッテリーの持ちに関しては、大容量化することが1つ。それ以外にも、液晶のバック
ライト制御をより効率化したり、ソフト上での工夫をしたりと、省電力化を図っている」(同)とバッテリーの持ちを改善。発熱で挙動が不安定になる現象に対しては、「クアッドコア装置については、熱拡散を助ける特殊な素材を採用している。熱を均一化して、局部的に熱いと感じないよう工夫した」(同)という。
他社に先行してハイスペック端末を投入してきた富士通だが、一方で、最先端を追い求めるがゆえにバランスや品質が犠牲になっていたことは否めない。「クアッドコアCPUを夏にやったが、そのときは他社がやっていなかった。エンジンが大きいので、熱がどうしても出る。PCにはファンがあるが、それがないところでどうやって熱を抑えるか。どんどん改良していくしかない」(大谷氏)というが、それならばあえて“コアの数”にこだわらない勝負もできたのではと感じる。
Samsung電子などの大手海外メーカーがヒューマンセントリックエンジンに近い機能を売りにし始めていることからも分かるように、スマートフォンの競争軸は世界レベルでスペックから使い勝手に移り変わりつつある。この点では、フィーチャーフォンを何年にも渡って開発してきた富士通に一日の長があるだけに、同社の強みを生かしたバランスのいい端末をぜひ見てみたい。
なお、Windows Phone 8については「やる気まんまん。国内で一番最初にやりたい」(同)とのこと。富士通(富士通東芝)はWindows Phone 7.5をリリースしていたメーカーで、PCでもMicrosoftと関係が深いだけに、HTCと同様、2013年の投入も期待できる。Windows Phone 8には、メーカーからの熱い視線が注がれている。
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