インタビュー
» 2013年01月21日 13時50分 UPDATE

2013 International CES:新機軸のデザインを採用した“スーパーフォン”――「Xperia Z」開発の意図を聞く (1/2)

CESで発表されたスマートフォンの中でも特に注目を集めているのが「Xperia Z」だろう。「オムニバランスデザイン」というコンセプトに込めた意図とは。そして背面にガラスを採用した理由は――。Xperiaの商品企画を担当する黒住氏に話を聞いた。

[田中聡,ITmedia]

 2013 International CESで発表されて以降、大きな話題を集めているソニーモバイルコミュニケーションズの新型スマートフォン「Xperia Z」。5インチフルHD(1080×1920ピクセル)液晶やクアッドコアCPU、Exmor RS for mobile採用の13Mピクセルカメラなど、最先端のスペックを備えているのはもちろん、裏面のガラスやアイコニックな電源キーなど、従来のXperiaにはない新機軸のデザインも打ち出した。

 CESの会期中に、ソニーモバイルのUX商品企画部バイスプレジデント 黒住氏にインタビューする機会を得た。同氏は2010年に発売した「Xperia X10」のころから、Xperiaの企画やデザインなど、ブランディング全般に深く関わってきた人物だ。2013年は、(Android搭載の)Xperiaが誕生してから4年目になるが、Xperia Zで何が変わったのだろうか。裏面にガラスを採用した理由やスペックを向上させた意図、そして今後の展開などを聞いた。

photo 「Xperia Z」

すべての用途でバランスの良いデザインを

photo ソニーモバイルの黒住氏

――(聞き手:ITmedia) Xperia Zでは「オムニバランスデザイン(Omni Balance Design)」という新しいコンセプトを打ち出しています。2011年は「ヒューマンカーバチャー(人間的曲線)」、2012年は「アイコニックアイデンティティ」を打ち出していましたが、2013年のテーマはオムニバランスデザインになるのでしょうか。

黒住氏 まず、デザインに対する基本的な考え方やアプローチはこれまでと変えていません。デザインのベースにあるコンセプトは「ヒューマンセントリック(人間中心の)デザイン」と呼んでいます。世の中にある電気製品の中で、携帯電話は24時間人のそばにある、一番身近な製品です。そういう前提でデザインを考えたときに、造形物や絵に描いたものではなく、人との関係や、人が使ったことを強くイメージし、人を中心としたものを考えます。そこは毎年変えていません。

 Xperia X10のころはヒューマンカーバチャーをコンセプトに打ち出していました。手のひらに収まりやすいカーブを強調しつつも、ディスプレイ面はフラットにしています。無限に広がるディスプレイの向こうの世界を、できる限り邪魔しないように見せましょうと。2011年に登場した「Xperia arc」も、同じヒューマンセントリックデザインがベースにありますが、“アーク”という新しい造形を取り入れています。Xperia arcでは薄さと持ちやすさを両立させました。

 2012年は「Xperia NX」(海外ではXperia S)を発表しました。ディスプレイの下にある透明素材「Floating Prism」は、海外では「トランスペアレントエレメント」と呼んでいますが、このモデルでは、どこまで(端末のパーツを)削ぎ落とせるかにチャレンジしています。裏面はシンメトリー(左右対称)だけど、X10と同じく手のひらに収まりやすく、裏にはカーブも入っています。

 そして今年発表したXperia Zの最も大きな違いは、ディスプレイサイズが大きくなったこと。我々も毎年のようにユーザー調査をしています。携帯電話はディスプレイを通じて情報を得るものですが、最近は情報を得る際に“邪魔”がいらないと言っている人が多いことが分かったのです。

―― 邪魔、ですか。どういったものが邪魔になるのでしょう。

黒住氏 見た目のノイズ、視覚的な邪魔であったり、装飾的な表現であったり……。ロゴもいらないという方が多いです。今回、SONYロゴも目立たないよう若干トーンを落としています。ディスプレイは1枚の板のように、でもシンメトリーにしたい。スマートフォンは横むきに使うようになったり、文字を打つときは両手で持つこともあったり、いろいろな持ち方や使い方が広がりつつあります。

 そこで思ったのは、表面はディスプレイを使うがゆえに、できる限り雑音のないシンプルな形状がいいということ。さらに、いろいろな持ち方や使い方があるのなら、ディスプレイ以外の部分も雑音をなくした方がいいということ。そこでXperia Zでは側面も、極力凹凸や雑音をなくしたフラットな造形にしています。これまでは、恥ずかしながら(充電端子やイヤフォンジャックの)カバーはペラペラした素材を使っていましたけど、今回は硬質のプラスチックを使って統一感を出しています。裏面もフラットにして、(キャップの)フタを閉めると、1枚の板に見えるようにこだわりました。

 ただ、すべての面がフラットでシンプルな形状になると、どこを触っているのか分からなくなります。そこで、電源キーだけは分かるように大きくして、アルミ素材を採用しています。このキーの表面にはスピン加工を施しています。当然コストは高くなりますが、質感が上がるよう、こういう細部にもこだわりました。他社で言うとiPhoneのホームボタンのようなもので、Xperia Zでは電源キーがアイコンになっています。ディスプレイ面は邪魔な要素を入れたくないけど、何らかのアイコンを持ちたいので、この電源キーを作りました。

photophoto 1枚の板に見えるようフラットなボディを目指した(写真=左)。Xperia Zのアイコンになるよう大きい電源キーを搭載(写真=右)

 いろいろな方向(持ち方)で使う際の導線になるよう、コーナー(4隅)にもこだわっています。通常はシンプルに見せるなら、コーナーを直線状にしてカーブをかけます。iPhone 5などがそうですよね。ただ、Xperia Zでは角が球になっています。大きな球を4隅に入れてカットしたような、3次元の形になっているんです。すべての面と方向で一番きれいに見せることで、デザイン的な動きを与えています。オムニバランスデザインは、すべての方向、すべての使われ方、すべての持ち方でベストなバランスを取っているデザインというわけです。

―― なるほど。一見すると気付きませんが、4隅のカーブは立体的ですね。最初「オムニ」と聞いたときに、ちょっとピンと来ませんでした。

黒住氏 オムニとは「すべての」という意味です。もともとは「オムニディレクションバランスデザイン」だったのですが、分かりにくいだろうということで変えました。すべての方向でバランスの取れているデザイン、という意味は変えていません。

―― Xperiaといえば、側面にシルバー系のフレームがある機種が多かったですが、Xperia Zでは異なるテイストのフレームを採用していますね。

黒住氏 今回は違った形でアクセントにしています。このフレームは、実は全部つながっているんですよ。バッテリー、基板、カメラなどの中味を、表と裏・上下左右の6面にフレームを貼り合わせてフタをしているイメージです。だから今回はネジがないんです。

photophoto 4隅には立体的なカーブをつけており、フレームの色も従来のシルバーから変えている。パープルにはブラウンのフレームを取り入れており、このフレームはすべてつながっている

裏面ガラスの採用で強度と薄さを両立

―― あらためて、裏面にガラスを採用した理由を教えてください。

黒住氏 裏面にガラスを使ったのには2つの理由があります。1つは、持ったときの新鮮さや高級感を高めるため。Floating Prismもガラスに近いアクリルを使って透明感を出していますが、ガラスを使えばもっと透明感を出せると考えました。もう1つは、強度と薄さを両立させるためです。ガラスは硬質で、硬度が高いんです。プラスチックでこの薄さを実現しようとしても硬度が足らず、厚くなってしまいます。この薄さでこの強度を出すにはガラスしかなかったんです。

 厚くなって何が変わるの? という声もあるかもしれませんが、せっかくここまで中味をぎゅうぎゅうに詰めて完成させても、最後に厚くなるのはやっぱり残念じゃないですか。正直言ってガラスの方がコストは高いですが、美しさ、質感、薄さなど、総合的な価値を出すために、妥協せずにやっていきたいという思いがありました。

―― 裏にガラスを使っているということで、耐衝撃性が気になるところですが、そこも問題ないと。

黒住氏 日本では耐衝撃性に対して、非常に厳しい基準があります。ドコモさんやKDDIさんたちと、日本でずっと携帯事業をやってきているので、日本のお客様(キャリア)がどういうレベルのものを想定しているかは、よく理解しています、Xperia Zは、Xperia GXやXperia AXなどと同じ基準の落下や衝撃テストをクリアしているので、同じレベルの強度を持っています。

―― それは安心ですね。ガラスは強化ガラスを使っているのでしょうか。

黒住氏 はい。表と裏には、いわゆる強化ガラスを使っています。

―― スマートフォンを落として画面を割ってしまう事例をよく見かけます。特にiPhoneで多いように思います。

黒住氏 ディスプレイがむき出しの端末は、技術的にはとても危険で、ガラスの割れる原因になります。(製造の過程で)ガラスを裁断するときに、小さなクラック(裂け目)がどうしても入ってしまいます。そこに何らかの衝撃があると割れやすいのです。我々は解決策を見出せていないので、ディスプレイをむき出しにはしていません。

―― なるほど。確かにXperia Zのディスプレイ周りには小さな溝がありますね。これは何ミリくらいありますか?

黒住氏 ほとんど分からないレベルですね。このあたりは最終的には手作りなので、高さをそろえるのは難しいでしょう。

―― Xperia Zの重さは146グラムで、従来機よりも重くなっています。やはりガラスを使ったことで重くなってしまったのでしょうか。

黒住氏 まずディスプレイが大きくなったことが挙げられます。バッテリーも容量が上がると重さも上がります。強いガラスを使っているので、ガラスは実はそれほど厚くないんです。同じ厚さのプラスチックと比べると重いですが、硬度を出そうとすると、プラスチックの方が厚くなりますし、重くなる可能性もあります。

photo きちんとルールに則ってCEマークを配している

―― 裏面のCEマーク(欧州で製品を販売する際に必要な技術適合マーク)がデザイン上のノイズになってしまいましたね。カバーが外せないので仕方ないとは思いますが。

黒住氏 CEマークには厳格なルールがあるんです。「CE」「0682」マークとゴミ箱マークは最小サイズが決まっていて、全部をそろえないといけないんです。ヨーロッパの規定では、これを理由に販売差し止めもできます。この大きさで載せるのが正しいかは分かりませんが、こうしたレギュレーションの中で一緒にやってきたオーソリティが言っているのに、それに違反するのはおかしいのでは? と思います。

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