飽和するスマホ市場の中で、ドコモはパラダイムを変えたい――加藤社長に聞く新春インタビュー(1/2 ページ)

» 2014年01月01日 09時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2013年を振り返って、大きな注目と多くの話題を集めたのはNTTドコモだった。

 春商戦にソニーの「Xperia Z」を一押しとしてスマートフォンの“選択と集中”を行ったことを手始めに、夏商戦にはツートップ戦略を実施。さらに9月には、ドコモにとって懸案だったAppleのiPhone導入に踏み切った。こうした端末ラインアップの再編を行う一方で、1年を通して「dマーケット」のサービスを拡充。今後のスマートフォン市場拡大を見据えて、積極的なサービス拡大と、異業種他社への大規模な出資や提携を行っていった。

 そして2014年。2013年のドラスティックな変化を受けて、ドコモはどのような姿勢で新たな年に臨むのか。NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏に新春特別インタビューを行った。

iPhone導入効果は日増しに高くなっている

photo NTTドコモ代表取締役社長 加藤薫氏

―― (聞き手 : 神尾寿) 2013年のドコモにとって大きな戦略転換となったのがAppleの「iPhone」を導入したことでした。その手応えや成果について、どのように評価されていますか。

加藤氏 iPhoneは世界的にとても人気が高いスマートフォンであり、特に日本では多くのユーザーに望まれています。それを導入することで、ドコモの端末ラインアップは充実しました。一方で、iPhoneはグローバルで(基本仕様やデザインが)まったく同じものであり、これを国内の大手3キャリアが同時に取り扱うというのは初めてのことでした。

 そのような中で販売の成果はどうかと言いますと、MNPの状況はとても改善しています。(2013年)9月のiPhone発売以降、10月、11月、12月と時間がたつほどにMNPの結果がよくなってきている。またドコモ全体での純増数も伸びている。

―― iPhone導入効果が日増しに高まっている、と。

加藤氏 もちろん、もっと早く効果を出したかったのですけどね(苦笑)。しかし現実問題として、当初はiPhoneを取り扱いできる販売チャネルが限られていましたし、とにかくiPhoneは世界的な人気機種ですから(Appleからの)供給量も限られていた。これらの要因から、立ち上がりに時間を要したのは事実です。

―― 実際、他社の状況を見ると、9〜10月時点では旧機種になった「iPhone 5」に高額なキャッシュバックをつけて拡販し、MNPの数字を稼いでいました。特にauの初戦での“数字上の好調”は、800MHz帯LTEによるつながりやすさが評価されたというよりも、(800MHz帯LTE非対応ながら)高額キャッシュバックを積んだiPhone 5が売れたからという理由が大きかった。

 一方でドコモの場合は、在庫処分として安く売れる旧機種がなかった。ですからiPhone 5sの供給が安定し、販売チャネルの体制が整ってきたから、本来の実力値が見えてきたとも言えますね。

加藤氏 ええ、我々の在庫が潤沢になってきたのは11月下旬ぐらいからです。ここから本調子になりました。iPhone導入の狙いのひとつだった「MNPでの顧客流出を止める」という止血剤としての効果は、どんどん出てきていますね。

―― iPhone導入に合わせて投入した「ドコモへおかえり割」の効果はいかがでしたでしょうか。

加藤氏 現在、ドコモにポートイン(流入)するお客様で、iPhoneを選ぶ方が過半を占めています。具体的な数字は申し上げられませんが、ここでの「ドコモへおかえり割」の効果には手応えを感じています。我々としては、元ドコモユーザーの皆様には、もっともっとお帰りいただきたいと考えています。このあたりは春商戦にはさらに力を入れていきます。

ネットワーク競争は「ワンフレーズ」では語れない

photo

―― キャリア間競争において、2013年からのトピックスのひとつになっているのが「ネットワーク(インフラ)競争」です。この部分においては、他キャリアが積極的なアピールを繰り返しているわけですが、ドコモとしては今後、どのように対抗していくのでしょうか。

加藤氏 まず、これは自戒を込めてでもあるのですが、(現在のキャリア間の)ネットワーク競争については、お客様に誤解を与えてしまったり、混乱させてしまっている面があると考えています。

 例えばですけれども、「どこかの地点での計測値が速かった」とか「特定の周波数を使っている」から、キャリア全体のネットワークが優れているなどということはないわけです。ネットワークは生き物のように、その状況は常に変化しています。ですから、ネットワークのよしあしを評価する絶対的な指標というものは存在しません。

―― しかし、他キャリアは自らの強みの部分をワンフレーズで強調し、優位性をアピールしています。

加藤氏 それはとても悩ましいところです。ワンフレーズで訴求される強みは、間違いではないのでしょうけれども、それが絶対的に正しいものかというと、そうともいえません。しかし、ワンフレーズは一般のお客様には響きやすいものですから、その部分だけが強調されてイメージができてしまう。これは怖いな、と思います。

―― ドコモのネットワーク戦略は、どちらかというと一部分を強化するというよりも、さまざまな技術的アプローチを積み重ねて総合的な品質を高める、というものですね。特に重視されているのは収容力ですが、なかなかワンフレーズ化するのは難しい。

加藤氏 そうですね。我々は4つの周波数帯を組み合わせて使い、さらに都市部は6セクタ基地局を積極的に導入するなど、収容力は重視しています。ただ、そこだけに力を入れているかというと、そうではありません。特定の技術分野や周波数に注力するのではなく、全体的にネットワーク品質を上げていくという姿勢です。これがなかなか、アピールが難しい(苦笑)。

 あと、基地局をたくさん作る、というのは確かに重要なことなのですけれども、実際によいネットワークというのは基地局が多いだけでよいかというと、そうではない。基地局を作った後に現地調査をしっかりと行い、チルト調整をはじめとしたチューニングを継続的に行っていかなければなりません。こういった調整は、ほぼすべての基地局で遠隔操作で適宜行っています。実利用環境での快適さを重視する、というのがドコモの考え方です。

―― 一方で、LTEのエリアの広さについてはいかがでしょうか。現時点では、auの方が郊外も含めたLTEエリアの広さをアピールしていますが。

加藤氏 ドコモでも今後、郊外エリアでのXi(LTE)展開を行っていきます。ただ、ここでは都市部で導入しているような6セクタ基地局やマイクロセル構成ではなく、800MHz帯を用いた比較的セル半径の広い基地局になります。我々も800MHz帯のプラチナバンドを持っていますからね。これを郊外のエリア拡大に使いつつ、都市部は2GHz帯をベースバンドに高密度で収容力の高いネットワークを作っていきます。なお、地方都市については、大都市と同じく収容力重視でいきます。

―― 1.5GHz帯と1.7GHz帯のエリアはどうなりますか。

加藤氏 そのふたつはトラフィックの多い場所で積極的に使っていきます。2GHz帯と800MHz帯の使い分けに、1.5GHz帯と1.7GHz帯もブレンドして、全国エリアを作りつつ速度も速くしていきます。

―― 4つの周波数を使うクアッド化は、ネットワーク競争におけるドコモの優位性になりそうですが、進捗はいかがでしょうか。

加藤氏 積極的に推進しています。まずXiエリアの75Mbps化は全国に広がっており、112.5Mbps化も全国75都市まで拡大している。2014年はクアッド化を積極的に推進する。これが進むことで「ドコモは速くなった」と日々実感していただけるようになると思います。

―― 2014年は各キャリアがLTEへの投資を進めることで、そのエリアがかなり広がり、充実すると考えられます。となりますと、LTEインフラを使った「VoLTE (Voice over LTE)」の商用化も注目されます。

加藤氏 VoLTEはできるだけ早く商用化したいですね。これは音声通話の需要をどう掘り起こすかという観点だけでなく、ネットワークの効率的な運用という点でも重視しています。VoLTEが本格稼働しますと、現状のCSフォールバックを使うよりも全体的な(ネットワークの利用)効率が上がりますから。

―― 直近では「楽天でんわ」なども始まり、LTEを前提にしたIP電話サービスが続々と登場していますが、この動きをどうご覧になっていますか。

加藤氏 これは個人的な考えですが、音声通話はコミュニケーションの基本だと考えています。日常的な利用から、緊急通報や災害時まで、電話の必要性というものはなくなりません。コミュニケーションをなりわいとするドコモとして、音声通話の今後については、(将来を見据えて)もういちど見直す必要はあると考えています。

―― ここにきて各社のスマホ向けIP電話系サービスが台頭してきた背景には、FOMAからXiにすると音声電話の料金が上がってしまうことが背景にあると思います。FOMAには存在した音声通話のパックプランや割引サービスが、Xiではほとんど用意されていない。この点について、今後改善することは考えていますか。

加藤氏 Xiを導入するとき、我々は複雑化した音声通話の料金プランを少しシンプルにしたいと考えました。しかしそれがお客様が求める音声通話の料金体系に完全に応えられるものだったかというと、ご指摘のとおり、そうではないのかもしれません。ドコモユーザー同士が対象になる自網内定額、さらにはすべての通話が対象になる全体定額も含めて、どのような料金体系が求められているかについてはいつも考えていますし、(新たな料金体系を投入する)タイミングを見計らっています。

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