イー・アクセス、KDDI、ソフトバンクグループ3社ら65事業者・団体が4月2日、総務大臣に対し、2020年代に向けた情報通信政策のあり方に関する検討についての要望書を連名で提出した。
要望書の概要は以下の3点。
「NTTグループにある今のルールを変えて、不公正な競争環境でサービスを提供すべきではない」(ソフトバンクモバイル 常務執行役員 財務副統括担当 兼 渉外本部 本部長 徳永順二氏)との考えから、要望書の提出に至ったという。
イー・アクセス、KDDI、ソフトバンクモバイルは2日に都内で記者会見を開き、要望書提出の意図を説明した。
従来の日本の競争政策についてKDDI 理事 渉外・広報本部長の藤田元氏は「1992年にドコモが分離してNTT持ち株の出資比率を低下させても、現在は67%の出資比率を持っている。電電公社時代からNTTの分離・分割が何度も検討されたが、実現されなかった」と振り返る。NTTグループの規制緩和については「NTT東西の固定網のレバレッジを移動体には及ぼさないという政策を取っているのに、そういうものをないがしろにすることに、非常に危機感を感じている」と話した。
電気通信事業法 第30条では、ISPやMVNOなどの電気通信事業者に対して不当に優先的な取り扱いをすること、コンテンツプロバイダーや端末メーカーなどに対して不当に干渉することを禁止行為としている。
こうした禁止行為のルールが変更されて、NTTグループの規制が緩和された場合、「NTT東西とドコモで排他的な連携サービスができるようになる。我々のようなモバイルキャリア(ソフトバンクモバイルやKDDI)に対して不公正な取引があると、NTTグループの市場支配力が強まって独占回帰につながる。結果として、サービスの多様化や料金の低下につながらなくなる」と徳永氏は危機感を募らせた。
規制緩和による具体的な不利益については「排他的な割引サービスや、それに近いものに入ってしまうと、FTTHも固定電話も携帯電話もバンドルされてしまう。囲い込みが非常に強くなるので、例えばブロードバンドでは、CATVやDSL事業者が良いサービスを出しても競争が起きなくなるのでは」と話した。
また、NTTグループ外との連携なら規制緩和をしてもいい……というわけでもないことを徳永氏は強調した。「例えばコンテンツプロバイダーとドコモのルールがなくなってしまう(=規制を緩和する)場合、コンテンツプロバイダーとドコモを経由してNTT東西から排他的なサービスが生まれるリスクがある。『こういうことならいい・悪い』を申し上げたつもりはない。いろいろなケースで慎重に議論してほしい」
連名の65事業者・団体には、ほかにウィルコム、沖縄セルラー、ケイ・オプティコム、ソネット、日本ケーブルテレビ、フュージョン・コミュニケーションズ、ヤフー、UQコミュニケーションズ、Wireless City Planningなども含まれる。「賛同していただける事業者が多かったのは非常に心強かった」と藤田氏は話す。
今回の要望書は、総務省が2月3日に情報通信審議会に対して諮問した「2020年代に向けた情報通信政策の在り方−世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けて−」というテーマにも関連する。情報通信審議会ではこれにもとづき、2020年代に向けた競争政策のあり方を議論していく。
藤田氏は「禁止行為(の見直し)は1つの大きなアイテムだが、あまりそこだけをクローズアップするのいかがなものか。『禁止行為さえ変えなければいい』と言うつもりは毛頭ない。『2020年はこうあるべき』という議論から入るのが筋であると思っている」と説明した。「4月8日から、各事業者のヒアリングが始まると聞いている。そこで我々がどういうことを考えているかを表明する」(藤田氏)
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