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» 2014年07月11日 12時00分 UPDATE

石川温のスマホ業界新聞:異様な盛り上がりを見せる「SIMロック解除義務化」報道――遅すぎた総務省判断で、冷めた目で見る業界関係者たち

総務省がSIMロック解除の義務化を検討していることが明らかになった。実現した場合、どんなメリットとデメリットがあるのだろうか。

[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 総務省が示した「SIMロック解除義務化」が異様な盛り上がりを見せている。先日も、日経新聞が社説で「SIMロック解除は当然だ」と力説。産経新聞も続いた。

 しかし、業界関係者からすれば「何をいまさら」という冷めた目で見る人間が多いように感じる。本当に競争環境を高めるためにSIMロック解除を義務化したいのであれば、ソフトバンクがiPhoneを独占販売しているタイミングで義務化すべきであった。

 「料金が高止まりしている」と現状を嘆くのであれば、ソフトバンクにイー・アクセスを買収されないような仕組みを作っておくべきではなかったのか。すべては総務省の失策が招いた結果なのではないだろうか。

 確かにSIM解除が義務化され、消費者の選択肢が広がるという点では歓迎すべきかも知れない。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年7月5日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


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 しかし、日本人は端末代金を一括で払うのを嫌う。また、割賦払いを途中で打ち切り、残債を支払うというのも嫌がる民族だ。仮に2年契約の途中でSIMロックを解除できるからといって、月月割などで割り引かれている端末代金の残債をまとめて精算して他キャリアに移行する、という人がどれだけ居るというのか。

 イオンスマホがヒットした背景にあるのは、端末代金が分割払いとなっているからという点が大きいはずだ。MVNOのSIMカードでどんなに月額基本料金が安くても、「3万円のNexus4を一括で支払って契約する」というのでは、限定8000台は捌けなかっただろう。

 2年間、分割払いでしばられてもいいというユーザーが殺到したということを考えると、必ずしもSIMフリーである必要はないはずだ。

 今回の方針には「多額のキャッシュバックは不公平。SIMロック解除を義務化してそうした商慣習をなくす」という狙いもあるようだが、仮にSIMロック解除が義務化になれば、「MNPをして新規加入してくれるなら、残債はうちが負担する」という「残債キャッシュバック競争」が始まる可能性だってあるだろう。

 総務省が後手後手の施策を展開したところで、3キャリアの営業部隊のほうがよっぽど賢いこともあり、あの手この手で熾烈なユーザー獲得合戦が行われることに変わりはない。

 総務省ではクーリングオフ制度の導入も視野に入れているようだが、キャリアで縛られた製品・サービスでさえ「説明が足りない」と指摘を受けるのであれば、SIMフリー製品とMVNOという組み合わせになると、さらに販売の現場は混乱するのではないか。

 MVNOでSIMカードを売る企業は、どこもリアルの店舗は持たず、電話やネットでのサポートが中心となる。果たして、それで安さだけを求めるユーザーを満足させることが出来るのか。サポート体制を強化すれば、それだけ人件費はかかり、結果、通信料金に上乗せしなくてはいけなくなる。

 一般メディアではSIMロック解除の数少ないメリットばかりが強調されているが、こうしたマイナス面にも目を向ける必要があるだろう。

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