総務省「料金値下げタスクフォース」が終盤に突入 ――有識者会議は、いったい何が「有識」なのか石川温のスマホ業界新聞

» 2015年12月04日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 総務省の携帯電話料金値下げに関する、4回目のタスクフォースが11月27日に開催された。

 非公開だった3回目以外はすべて傍聴しているが、やはりこの「有識者会議」というのがクセモノであり厄介な印象が強い。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年11月28日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。


 今回は特に端末に対する大幅値引きやMNPへのキャッシュバックについての議論に時間が割かれたのだが、そのなかでちょいちょい有識者たちの「間違った認識」が垣間見えた。「この人たちに日本の通信環境のことを議論させて、将来、大丈夫なのか」と不安にさせられるほどだった。

 特にインパクトがあったのが、有識者たちの「公衆Wi-Fiスポットへの過信」だ。

 議論のなかで有識者からは「データ通信量は増加傾向にあるが、2020年に向けてWi-Fiスポットが増えてくる。今後は携帯電話網を必ずしも使わなくてもよくなってくる」といった意見や「MVNOのSIMカードをiPad miniで使っているが、地下鉄の霞が関駅に入ると圏外になる。MVNOがMVOの通信品質に対抗できていない。Wi-Fiスポットを推進して、データオフロードできるようにすべし」といった声が聞かれたのだ。

 状況をわかっているように見えて、大きな勘違いのまま偉そうな議論をして、トンデモナイ結論に行きそうな気がして、傍聴している側としても不安になってくるのだ。

 確かにWi-Fiスポットの拡充は必須だが、いまの公衆Wi-Fiスポットの品質は決して良いものとはいえない。

 もちろん、将来的に、街中にWi-Fiスポットがあれば、LTEの通信をしなくてもいいという状況にはなりえない。

 有識者は「Wi-Fiスポットは無料」という認識があるようだが、設備の投資やバックボーンの固定や移動回線、さらにはメンテナンスやセキュリティ対策などのコストが必要となる。そんな知識がないなかで「Wi-Fiスポットがあれば、無料でスマホを使える。もっと通信料金を下げるべき」という理論は間違っていると言わざるをえない。

 また、MVNOの ネットワーク品質においても、少なくともエリアに関してはMNOと同等なはずだ。実際に接続し、反応速度やダウンロード速度には違いがあるが、電波をつかむ、つかまないかに差はないだろう。

 そんな誤解に対し、誰も訂正することなく、議論が進んでいってしまうのだ。

 タスクフォースが厄介なのは、この業界のことを熟知している人もいるにもかかわらず、わかった上で、議論を「端末の大幅割引とキャッシュバックは悪だ」という展開に持って行こうとしている感があることだ。

 総務省としても「わかっている人がいて、議論を進めているから問題ないでしょ」という空気にしようとしている。

この中途半端な議論によって、最終的に迷惑を被るのは消費者であることを忘れてはいけない。

 今回のタスクフォースは、 過去の「モバイルビジネス研究会」に続く、日本の通信業界における「黒歴史」になろうとしている。

© DWANGO Co., Ltd.

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