「エンタメフリー・オプション」からKDDI傘下、iPhone SEまで――ビッグローブに聞くMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2017年02月21日 10時45分 公開
[石野純也ITmedia]

 まだ「格安スマホ」という言葉もない2012年にドコモとのL2(レイヤー2)接続を行い、MVNOに参入したのがビッグローブだ。楽天モバイルやmineoなど、新規参入が相次ぐ一方、2016年9月末時点でのシェアは第5位(MM総研調べ)と、業界の中での存在感は依然として大きい。SIMロックフリー端末がまだ少ない時代に「ほぼスマホ」として、端末販売を手掛けるなど、先駆者ならではの“壁”をさまざまな工夫で乗り越えてきたのも、同社の特徴といえるだろう。

 2016年11月からは、特定サービスの通信量をカウントしない“ゼロレーティング”を活用した「エンタメフリー・オプション」のサービスを開始。プロバイダーとして培ったノウハウを生かし、大手キャリアにはないMVNOならではの価値を提供している。一方で、その間、事業環境は大きく変わった。2014年には親会社のNECから売却され、2017年2月からはKDDIグループの一員となった。今後は、KDDI傘下のMVNOとして「au経済圏」拡大の一翼を担っていく方針だ。

BIGLOBE SIM 月額480円(税別)で、映像や音楽の配信サービスの通信量をカウントしない「エンタメフリー・オプション」。現在はYouTube、AbemaTV、Google Play Music、Apple Music、Spotifyが対象サービスとなっている

 そんなビッグローブでMVNO事業を率いる執行役員常務の中野雅昭氏とモバイル事業部の吉野宗壱氏に、「BIGLOBE SIM」でエンタメフリー・オプションを導入した理由や利用動向に加え、KDDI傘下になった同社の最新戦略を聞いた。

エンタメフリー・オプションは利用者の80%が満足

BIGLOBE SIM ビッグローブの中野雅昭氏

―― まずは、エンタメフリー・オプションのお話から伺います。あのサービスを導入した理由を教えてください。

中野氏 事業全般のお話になりますが、2016年は事業環境もあり、たくさん数を取るというより、少しターゲットを絞ってお客さまを狙っていきました。その中で、動画を見たいという方がたくさんいた。年間で1.6倍ぐらい、利用するデータ量が増えていました。アンケートを取っても、まだまだ見たいというニーズがある。ところが、(それをすると)パケット代が高くなってしまいます。

 方やAbemaTVの方が言うには、あちらとしてもコンテンツをたくさん売りたいが、コントロールできるのはサービスの料金だけで、通信料は触れません。そのちょうど真ん中にいるということで、われわれがエンタメフリーを始めました。

 お客さまには喜んでいただけていて、80%の方々が満足しています。「これで動画が使えるようになった」「スムーズに動画が見られる」などの声もいただいています。

BIGLOBE SIM ビッグローブの吉野宗壱氏

―― 通信の秘密やネットワークの中立性に関する考え方を教えてください。

中野氏 そこ(通信の秘密)は特に注意をしていて、抵触しない形で進めています。1人1人の同意をいただくとともに、秘匿する部分(ユーザーのデータの中身)は一切触れない形で機械的に処理をしています。

吉野氏 データは、自動的かつ機械的に見て判別しています。ネットワークの中立性については2つの観点があり、その1つはコストの分配です。ここには、一般のユーザーからいただいた料金は使わず、オプションの売上で回線を用意しています。ですから、エンタメフリーをたくさん使われたからといって、その他のお客さまに迷惑が掛かることはありません。

中野氏 お金をいただく中で、ご提供するという形になっています。われわれの場合、動画を定額制にしていますが、これは他ではほとんどやっていないことです。海外を見ると、例えばT-Mobileの「Binge On」などがありますが、あれを見てもわれわれの方にアドバンテージがあると思います。手前みそですが、いいサービスだと自負しています。確かに20GB、30GBのプランもあり、そういったところももちろん大事ですが、個人で見たときに、使うものが特定されていれば(データ量が無制限になれば)、使い勝手はよくなると思います。

落ち着いて動画配信を見たい人には向かない

―― 対象となるサービスの選択は、どのようにしているのでしょうか。

中野氏 基本的にはストリーミングサービスが中心です。ただし、(モバイルは)非常に高画質なものを、落ち着いて見るというのには適していません。360pや480pなどの解像度で、音楽を聴きながら気楽に見ていただけるような層をターゲットにしています(※エンタメフリーの動画配信サービスは、最大360pの画質に最適化される)。そういった形で、最適なものを選択しています。逆にWebサイトでも言っていることですが、タブレットやPCなど、落ち着いて見るのにはあまり向きません。そういうサービスも検討はしていますが、こちらとはセグメントが分かれています。

BIGLOBE SIM エンタメフリー・オプション対象動画配信サービスの画質

―― コンテンツプロバイダーから、引き合いも強いのではないでしょうか。

中野氏 引き合いはありますね。5つ目のサービスとして、「Spotify」が加わりました。他にも、いろいろと協議はしています。Spotifyの後も、期待を裏切らないように増やしていきたいと思います。ただし、カウントフリーは、技術的にそう簡単なものではありません。技術的な裏付けも取ってからやっているので、オファーがきても、「はい、やります」というわけにはいきません。

吉野氏 今、専用窓口で、お客さまからリクエストを受け付けています。その中でリクエストが多かったものとして、今回のSpotifyもありました。

―― 技術的に難しいということは、カウントフリーから漏れてしまうこともあるのでしょうか。

中野氏 十分に調整はしていますし、われわれ自身でも、二重、三重のチェックはしています。

―― 技術的には、どういったときに漏れが発生するのでしょう。

吉野氏 例えば、アプリケーション側に新しい機能が追加されたときで、そのタイミングはどこも押さえられません。新機能で新しい通信が発生したようなときは、可能性としてはありえます。

―― 加入者数はいかがでしょう。

中野氏 それは非開示です。ただいえるのは、他社のようにPRがしっかりできているわけではありませんが、その割にはしっかり入っているということです。増加が止まらず、右肩上がりの状況はリニアに進んでいます。

 また、1月までの環境だと、採算性や事業基盤をしっかりしたいという思いがありました。広告を打ったり、安値でお客さまをたくさん集めたりするよりも、ある程度採算がある事業であることを証明しながらやっていきました。その点はこれからも変わりはありませんが、KDDIさんのグループに入ったことで、できることが増えたと考えています。

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